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― 第二章・それぞれの成長 ―
第23話 謀
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国主専用である広大な屋敷の東西南北には、それぞれ庭園が在る。
“東の間”の大きめな縁側に、〝ドカッ〟と胡坐座りした清虎が、
「神の下僕か…。」
「間違いないのじゃな?」
と、庭で跪いているセルグと“影”に確認した。
これに、影が、
「は。その者に口を割らせましたので。」
と答える。
続いて、セルグが、
「北に隣接している“神之国”が、こちらに攻め込むことを決めたそうでして…。」
「それに先んじてヒーゴン国内の至る街や村で、内部事情を探っていた模様です。」
と、述べた。
「ふ…む。つまり、何人もの工作員を放っておったということか?」
と国主が窺う。
「はい。」
と、二人が頷いたところ、
「ふぅ――ッ。」
と息を吐いた清虎が、
「つい最近、跡目争いが終わったばかりじゃろうて、忙しないのぉ。」
と、眉間にシワを寄せた。
それは、今から三年ぐらい過去のことだった…。
当時の王が崩御する際に、第二王子を跡継ぎに指名してしまったので、これを不服とした第一王子が挙兵し、兄弟で激突を繰り広げていたのである。
結果、第一王子が勝利を収めるも、その期間中、政治が滞っていたので、経済が著しく悪化してしまったようだ。
「内政に力を注いで立て直しを図れば良かろうて、他国を制圧することで威厳を示そうとは…、なかなか愚鈍のようじゃな。」
と国主が呆れ顔になった。
「して?」
「いつ頃じゃ?」
との清虎の問いに、影が、
「現在、戦準備を行っているそうでございまして…、およそ二ヶ月後には国境に現れるようです。」
と、説明する。
「ならば、こちらも急ぐとするかのッ。」
と不敵な笑みを浮かべる国主であった。
翌朝、千代/フーリィ/金時と鍛錬している所にセルグが訪れ、昨日の出来事と、これからの方針を伝えた。
「“神之国”と戦!?」
と、いささか興奮した紫蓮が、想像していたよりも早い段階で復讐の一歩を踏み出せることに、ワナワナしだす。
おそらくは、武者震いであろう。
煙草を吸いながら、
(危ういな…。)
と思ったセルグが、
「お前が神どもに恨みを抱いているのは知っちゃあいるが…、今は未だ勝てる相手じゃねぇからな。無茶すんなよ。」
と、戒めた。
狼の獣人であるフーリィが、
「いつ、発つんだい?」
と尋ねたところ、
「予定は一ヶ月後だ。」
と、返したセルグが、その場を去りながら、
「じゃ、ソイツラが死なねぇ程度には鍛えてやるんだな。」
と後ろ向きで右手を振る。
千代が、
「あの人の言うとおりだ。」
「紫蓮、神を目の当たりにしても、暴走しないように。」
と、念を押したところ、
「あ、ああ…。分かって、る、さ…。」
と口を濁した紫蓮に、狸の獣人である金時が、
「もし、そうなったら、気絶させてでも君を止めるよ。」
と、険しい表情になった。
これに、紫蓮が、
「現時点で倒せないんだったら、命は無駄にしねぇさッ。」
「挑むのは、もっと強くなってからだッ!」
と宣誓する。
南から初夏の風が吹いてくるなか、フーリィが、
「それじゃあ、出陣までの間、みっちり稽古つけてやるから、覚悟すんだよ、アンタたち!」
と、気合を入れ直すのだった―。
“東の間”の大きめな縁側に、〝ドカッ〟と胡坐座りした清虎が、
「神の下僕か…。」
「間違いないのじゃな?」
と、庭で跪いているセルグと“影”に確認した。
これに、影が、
「は。その者に口を割らせましたので。」
と答える。
続いて、セルグが、
「北に隣接している“神之国”が、こちらに攻め込むことを決めたそうでして…。」
「それに先んじてヒーゴン国内の至る街や村で、内部事情を探っていた模様です。」
と、述べた。
「ふ…む。つまり、何人もの工作員を放っておったということか?」
と国主が窺う。
「はい。」
と、二人が頷いたところ、
「ふぅ――ッ。」
と息を吐いた清虎が、
「つい最近、跡目争いが終わったばかりじゃろうて、忙しないのぉ。」
と、眉間にシワを寄せた。
それは、今から三年ぐらい過去のことだった…。
当時の王が崩御する際に、第二王子を跡継ぎに指名してしまったので、これを不服とした第一王子が挙兵し、兄弟で激突を繰り広げていたのである。
結果、第一王子が勝利を収めるも、その期間中、政治が滞っていたので、経済が著しく悪化してしまったようだ。
「内政に力を注いで立て直しを図れば良かろうて、他国を制圧することで威厳を示そうとは…、なかなか愚鈍のようじゃな。」
と国主が呆れ顔になった。
「して?」
「いつ頃じゃ?」
との清虎の問いに、影が、
「現在、戦準備を行っているそうでございまして…、およそ二ヶ月後には国境に現れるようです。」
と、説明する。
「ならば、こちらも急ぐとするかのッ。」
と不敵な笑みを浮かべる国主であった。
翌朝、千代/フーリィ/金時と鍛錬している所にセルグが訪れ、昨日の出来事と、これからの方針を伝えた。
「“神之国”と戦!?」
と、いささか興奮した紫蓮が、想像していたよりも早い段階で復讐の一歩を踏み出せることに、ワナワナしだす。
おそらくは、武者震いであろう。
煙草を吸いながら、
(危ういな…。)
と思ったセルグが、
「お前が神どもに恨みを抱いているのは知っちゃあいるが…、今は未だ勝てる相手じゃねぇからな。無茶すんなよ。」
と、戒めた。
狼の獣人であるフーリィが、
「いつ、発つんだい?」
と尋ねたところ、
「予定は一ヶ月後だ。」
と、返したセルグが、その場を去りながら、
「じゃ、ソイツラが死なねぇ程度には鍛えてやるんだな。」
と後ろ向きで右手を振る。
千代が、
「あの人の言うとおりだ。」
「紫蓮、神を目の当たりにしても、暴走しないように。」
と、念を押したところ、
「あ、ああ…。分かって、る、さ…。」
と口を濁した紫蓮に、狸の獣人である金時が、
「もし、そうなったら、気絶させてでも君を止めるよ。」
と、険しい表情になった。
これに、紫蓮が、
「現時点で倒せないんだったら、命は無駄にしねぇさッ。」
「挑むのは、もっと強くなってからだッ!」
と宣誓する。
南から初夏の風が吹いてくるなか、フーリィが、
「それじゃあ、出陣までの間、みっちり稽古つけてやるから、覚悟すんだよ、アンタたち!」
と、気合を入れ直すのだった―。
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