GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第二章・それぞれの成長 ―

第21話 鍛

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千代ちよが、柄と鞘をロープで縛ったレイピアにて、

ガシィンッ!ガキンッ!

紫蓮しれんの、鉄刀での攻撃を受け止めていた。

その近くでは、スライムの来夢らいむが、武闘家である狼の獣人と組み手を行っている。

ゴブリンの権蔵ごんぞうは、狸の獣人と、槍と薙刀とを打ち合っていた。

「ふむ。冒険者たちと一緒に旅していただけあって、なかなか筋が良い。」
「だが…。」

と、呟いた千代が、紫蓮の振り下ろす一撃を、左から右に〝ガッキイィンッ!〟と払い、鞘の先を彼の喉元に〝ピトッ〟と突きつけたのである。

「勝負あったな。」

と告げる彼女に、紫蓮が、

「…参った。」

と、両手を挙げた。

千代が〝スッ〟とレイピアを下ろして、

「フーリィ、金時きんとき、そっちは?」

と窺ったところ、狼の[フーリィ]が、

「割と見所あるよ、この子。」

と、来夢の頭を撫でる。

「こっちも、ま、悪くはないね。」

と述べる狸の[金時]は、権蔵の槍の柄を左脇で挟み、右手に持っている薙刀の刃を相手の左首に添えていた。


一旦、休憩となり、それぞれが、革袋や竹筒に入った水を喉に流し込む。

スライムには飲食が必要ないのだが、来夢は皆の真似をしている。

「そう言えば、あの茶髪で顎髭の人は?」

と、紫蓮が尋ねたら、フーリィが、

「ああ、“セルグ”かい?」
「あいつは、こういうのに向いてないからねぇ…。」
「今は、別件を担当しているよ。」

と答えた。

「どんな?」

と、首をかしげる紫蓮に、金時が、

「最近、都に怪しい連中が出没しているらしくてね…。」
「なんでも、清虎様一族のことや、この城の情報を、いろいろと聞きまわっているみたいなんだ。」
「それで、〝何が目的なのか〟を聴取する為に、ソイツらを探している最中なのさ。」

と教えてくれたのである。

更に、

「一人で大丈夫なのか?」

と、紫蓮が質問したところ、千代が、

「普段は、やる気なさそうにしているが、正直、私たちの中では一番強いから、何も心配ない。」

と返したのだった。

午前11:00頃に修練を終えた紫蓮とサーヴァントらは、食堂での昼飯を済ませた午後01:00に、馬小屋の面子と合流したのである。

そこからは、城の敷地内を隅々まで巡回していく。

日が暮れるまで、二度に亘って。

彼らとは別の、幾つかの班も、パトロールしていた。

定休日の者たち以外は。

なかには夜勤組もいるそうだが、紫蓮が所属するチームは朝早くから馬の世話をしているので、関わりないようだ。

ちなみに、彼のところの班長は、[保次やすじ]という名前らしい…。


一方、セルグは、素性の知れない30代後半の男性を路地裏に追い込んでいた。

行き止まりで逃げ場のない、その男との距離を、ゆっくりと縮めつつ、

「テメェらは、何をコソコソと嗅ぎまわってやがる?」
「狙いは何だ?!」

と、問い詰める。

「さぁな。俺は末端だから、よくは分からねぇよッ。」

と吐き捨てた相手に、セルグが左手で抜いた中剣を、その右肩に、

ズブリィッ!

と、刺した。

「うぎゃぁあああッ!!」

と喚くソイツの鼻を、右の拳で、

ガツンッ!

と、殴ったセルグが、

「まだ、ギャーギャー騒ぐようなら、腕を切り落とすぞ!」
「おとなしく、知っていることを全て白状しろッ!!」

と脅す。

観念した男は、

「本当に、ただの雇われだから、詳しい事は聞かされちゃいねぇんだ!」
「“元締め”をあたってくれよッ!」
「南門の近くに在るデッケェ宿屋に滞在してるみたいだからさ!」

と、口を割ったのだ。

「南の大きな…。」
「!」
「あの宿か。」

と理解したセルグに、

「なぁ、あんた、俺をどこかにかくまってくれよ。」
「このままじゃ、消されかねないからさ!」

と、相手が懇願する。

しかし。

「なぁに、これから俺が、その親玉を捕まえりゃあ、何も問題ねぇ。」

と不敵な笑みを浮かべるセルグだった―。
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