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― 第一章・旅立ち ―
第17話 達成と慰霊と報酬と。
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空洞にて、ラーザが、パネル画面で、トゥーサーの首都に在るギルドに[討伐成功]の報告をしたところ、
「依頼主に伝えた後に、改めて連絡します。」
との事だった。
弥太郎が、
「彼らを弔ってやろう。」
と言う。
何故なら、この世界には、死者を復活させる魔法もアイテムも、存在していないのだから…。
ラットが、
「何処に?」
と、訊ねる。
するとラーザが、
「この山の頂上にしようよ。」
「見晴らしが良さそうだし。」
と述べたのだった。
遺体を運び、地面に穴を掘る。
こういう時は、アント(蟻)が大いに役に立つ。
そうこうしていたら、ラーザの左腕輪から〝ピピッ!ピピッ!〟との着信音が聞こえてきた。
再び画面を開いたところ、先ほどの受付嬢が、
「代表の方々が、現場検証のため、そちらに向かうそうですが…、〝到着は明後日の昼頃になるだろう〟とのことです。」
「ご都合は、宜しいでしょうか?」
と訊ねてきたので、ラーザが、
「ああ、構わない。」
と、返答した。
埋葬し終えた地に、団長であるラーザが酒を注ぎ、【巫女】の薫が宗教の垣根を超えて、
「我らが友よ、願わくば、その霊魂が、真の神々の元へと辿り着き、永遠なる安らぎを得ますよう、心からの冥福を、ここに祈ります。」
と合掌しながら頭を下げ、他のメンバーが、それに倣った。
気が付けば、既に日が暮れようとしている。
肌を撫でる風が、少し冷たかった…。
下山した[鮮紅の豹一団]は、建物内で寝泊まり出来ないか、軽く見て回ったが、どこも埃まみれだったので止めておいた。
結果、街の広場に、亜空間から取り出したテントを張ることにしたようだ。
その夜は、戦闘に勝利した喜びもそこそこに、粛々たる追悼式を行ったのである。
翌日は、意外と皆が明るかったので、紫蓮は、いささか拍子抜けしてしまった。
それを察した弥太郎が、
「それぞれが、ソロだった頃や、他のパーティーに所属していた時に、何度となく辛い別れを体験してきたし…、俺たちの中にも、以前、亡くなった連中がいるからな。」
「誰もが、いつまでも悲しんでいないで、前向きに送ってあげたいんだろう。じゃなきゃ、あの世に旅立つ者たちが浮かばれないだろうしな…。」
と、いささか寂しそうにしつつ、胸中を吐露する。
それに続いて、【騎士】のバウンが、
「鮮紅の豹一団には、元々、50人以上のメンバーがいたんだ。」
と遠い目をした。
朝食を経て、男性陣が墓地に石を積み、女性陣が摘んだ野花を手向《たむ》けたのである。
そこからは、街を詳しく探索する者や、テント内でゴロゴロする連中に、装備品を手入れする面子と、様々だった。
紫蓮と、スライムの来夢に、ゴブリンの権蔵は、鍛錬に勤しんでていたようだ…。
日付が変わり、初老の3名と、10人の若い護衛が訪れた。
その紳士たちは60代といったところだろう、全員が黒スーツを着用している。
青年らは簡素な武器と防具を装備していた。
[討伐クエスト]では、誰かしらが命を落とす可能性があるので、クライアント側は喪服で足を運ぶのが常識なのだそうだ。
彼らは、現場を見て回りながら、弥太郎などからの説明を受けていく。
そのなかでも、身長が175㎝ぐらいで、髪の毛や眉に、鼻の下と顎の髭が白く、青い瞳をしている、痩せ型の、リーダー各と思しき男性が、
「成程。魔物たちのなかには、更なる進化を求めて、神の血肉を貪る輩がいるものの、拒絶反応が起き、確実に失敗してしまうと…。」
「それを、“成れの果て”と呼ぶ訳ですな。」
と、納得したように頷くも、
「しかし、知性を失ったモンスターに、他の連中が従うものなのですか?」
と疑問を呈したのである。
これに、イザッドが、
「強き者の近くにおれば、生き長らえる可能性が高まりますからのぉ。それで集まってきたのでしょう。」
「おそらく、実際に取り仕切っていたのは、ゴブリーナだったのではないかと、儂は睨んでおりますじゃ。」
との見解を示した。
洞窟を出た一行は、山の麓にて、謝礼の受け渡しを済ませたのであった―。
「依頼主に伝えた後に、改めて連絡します。」
との事だった。
弥太郎が、
「彼らを弔ってやろう。」
と言う。
何故なら、この世界には、死者を復活させる魔法もアイテムも、存在していないのだから…。
ラットが、
「何処に?」
と、訊ねる。
するとラーザが、
「この山の頂上にしようよ。」
「見晴らしが良さそうだし。」
と述べたのだった。
遺体を運び、地面に穴を掘る。
こういう時は、アント(蟻)が大いに役に立つ。
そうこうしていたら、ラーザの左腕輪から〝ピピッ!ピピッ!〟との着信音が聞こえてきた。
再び画面を開いたところ、先ほどの受付嬢が、
「代表の方々が、現場検証のため、そちらに向かうそうですが…、〝到着は明後日の昼頃になるだろう〟とのことです。」
「ご都合は、宜しいでしょうか?」
と訊ねてきたので、ラーザが、
「ああ、構わない。」
と、返答した。
埋葬し終えた地に、団長であるラーザが酒を注ぎ、【巫女】の薫が宗教の垣根を超えて、
「我らが友よ、願わくば、その霊魂が、真の神々の元へと辿り着き、永遠なる安らぎを得ますよう、心からの冥福を、ここに祈ります。」
と合掌しながら頭を下げ、他のメンバーが、それに倣った。
気が付けば、既に日が暮れようとしている。
肌を撫でる風が、少し冷たかった…。
下山した[鮮紅の豹一団]は、建物内で寝泊まり出来ないか、軽く見て回ったが、どこも埃まみれだったので止めておいた。
結果、街の広場に、亜空間から取り出したテントを張ることにしたようだ。
その夜は、戦闘に勝利した喜びもそこそこに、粛々たる追悼式を行ったのである。
翌日は、意外と皆が明るかったので、紫蓮は、いささか拍子抜けしてしまった。
それを察した弥太郎が、
「それぞれが、ソロだった頃や、他のパーティーに所属していた時に、何度となく辛い別れを体験してきたし…、俺たちの中にも、以前、亡くなった連中がいるからな。」
「誰もが、いつまでも悲しんでいないで、前向きに送ってあげたいんだろう。じゃなきゃ、あの世に旅立つ者たちが浮かばれないだろうしな…。」
と、いささか寂しそうにしつつ、胸中を吐露する。
それに続いて、【騎士】のバウンが、
「鮮紅の豹一団には、元々、50人以上のメンバーがいたんだ。」
と遠い目をした。
朝食を経て、男性陣が墓地に石を積み、女性陣が摘んだ野花を手向《たむ》けたのである。
そこからは、街を詳しく探索する者や、テント内でゴロゴロする連中に、装備品を手入れする面子と、様々だった。
紫蓮と、スライムの来夢に、ゴブリンの権蔵は、鍛錬に勤しんでていたようだ…。
日付が変わり、初老の3名と、10人の若い護衛が訪れた。
その紳士たちは60代といったところだろう、全員が黒スーツを着用している。
青年らは簡素な武器と防具を装備していた。
[討伐クエスト]では、誰かしらが命を落とす可能性があるので、クライアント側は喪服で足を運ぶのが常識なのだそうだ。
彼らは、現場を見て回りながら、弥太郎などからの説明を受けていく。
そのなかでも、身長が175㎝ぐらいで、髪の毛や眉に、鼻の下と顎の髭が白く、青い瞳をしている、痩せ型の、リーダー各と思しき男性が、
「成程。魔物たちのなかには、更なる進化を求めて、神の血肉を貪る輩がいるものの、拒絶反応が起き、確実に失敗してしまうと…。」
「それを、“成れの果て”と呼ぶ訳ですな。」
と、納得したように頷くも、
「しかし、知性を失ったモンスターに、他の連中が従うものなのですか?」
と疑問を呈したのである。
これに、イザッドが、
「強き者の近くにおれば、生き長らえる可能性が高まりますからのぉ。それで集まってきたのでしょう。」
「おそらく、実際に取り仕切っていたのは、ゴブリーナだったのではないかと、儂は睨んでおりますじゃ。」
との見解を示した。
洞窟を出た一行は、山の麓にて、謝礼の受け渡しを済ませたのであった―。
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