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― 第一章・旅立ち ―
第10話 旧鉱山街
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受注したクエストの内容はこうだった。
“1ヶ月ほど前から、サーヌ国の西方領土に在る旧鉱山街にモンスター達が住み着いた。
今はまだ山中の動植物を食しているようだが、それが尽きれば周囲の街や村を襲うようになりかねないし、付近を通過する旅人たちも狙われるだろう。
どうか、被害が出ないうちに、討伐してほしい。”
と――。
どの街と村にも駐屯兵はいるが、主な職務はその地の守衛である。
当然、他国との戦になった際には、出兵しなければばらない。
つまり、今回のような案件は、兵士たちの仕事の範疇ではないため、冒険者に依頼するのが常なのだ。
成功報酬は金貨100枚だった。
近隣の街と村で出し合ったのだろう。
いずれにせよ、[鮮紅の豹一団]にとっては、大助かりである。
ラーザをトップにした陣形で、そのパーティーは[旧鉱山街]に足を踏み入れた。
最右方には弥太郎を、最左方にラットを配置して。
中央には、身軽さと素早さに定評がある【|盗賊(シーフ)】と【忍者(アサシン)】が見受けられる。
四方八方どこから敵が現れても、即座に仲間をフォローできるようにとの措置であろう。
最後尾は、防御力の高い【騎士】であるバウンが担っているようだ。
山の南側に、半円形の街が時を止めたかのように存在している。
街そのものはと言うと、道を形成している石畳の隙間からは草が少なからず伸びており、建物の外壁には若干ながらも蔦が這っているようだ。
街の中央には、ちょっとした広場がある。
かつては住民たちの“憩いの場”だったのであろう。
そこに、20体のゴブリンと、10体のハーピーが見受けられた。
ラーザたちの位置からは、およそ5Mくらいだろうと思われる。
焚火を囲んで食事しているようだ。
おそらくは動物の肉であろう。
右手のバトルアックスを掲げたラーザが、それを無言で振り下ろし、全員に突撃の合図を送った。
一斉に駆け寄ってきた[鮮紅の豹一団]に驚いたモンスター達が慌てる。
ゴブリンどもは地面に置いていた“青銅の剣”や“石槍”を掴む。
どの武器も質素な感じなので、攻撃力は低そうだ。
身に纏っているのは小豆色や茶色の麻布なので、防御力も大したことないだろう。
ハーピーたちは〝バサバサバサバサッ〟と翼をはためかせ、上空に避難した。
「うりゃッ!」
と戦斧を横に振るったラーザによって、近くに居たゴブリンの首が刎ねられる。
まるで噴水のように〝ブシュウゥゥゥーッ!!〟と血しぶきを上げて、背から崩れ落ちた。
他のゴブリン達が立ち上がり、こちらに武器を向けながら広がっていく。
イザッドが、連中の足元に直径10Mの魔法陣を出現させる。
次の瞬間、地面が幾つにも隆起した。
それぞれの高さは1M~5Mとバラバラではあったが、
ドッ!ドドッ!ズドッ!
と、魔物たちが突き上げられた。
倒れ込んだゴブリン達に、スキルや矢が放たれる。
ラーザは幅1M×長さ4Mの“炎の帯”を、弥太郎が高さ3M×最大幅2Mの“風の渦”を、ラットは最大縦幅50㎝×横幅5Mで弓型の“水の刃”を、それぞれに飛ばす。
焼かれる者に、撥ねられる者や、切り傷を負う物と、目や肩に矢が刺さる者など、様々である。
一方、地上15M程の所から観察していたハーピー達は、[鮮紅の豹一団]の後列から攻略することに決めたようだ。
身長165㎝~170㎝のチームが、それぞれの獲物を目掛けて急降下してくる。
ターゲットにされた面子には、紫蓮もいた。
右斜め上から迫りくる猛禽類特有の両足を、真横にした鉄刀で受け止めた彼が、〝ズザザザザァ~ッ〟と後方に押される。
体勢を整え直すべく再び空に飛び立とうとするハーピーに、紫蓮が左手から幅10㎝×長さ2Mの“雷”を直撃させた。
ズバァアンッ!!
とヒットした敵が、
ビリビリッ!
と、感電して、胸元から〝ドサッ!〟と地面に倒れ、
ピクッ!ピクッ!
と痙攣する。
幼馴染の陽香がハーピーに殺された時の光景が、彼の脳裏に蘇っていた。
今、自分の目の前にいる奴は別物だと分かってはいても、湧いてくる怒りを抑えきることが出来ない。
息の根を止めるべく鉄刀を振り上げようとした紫蓮に、20代前半の【巫女】である奏が、
「危ない!!」
と声を掛ける。
視野が狭くなり、周りが見えなくなっていた紫蓮が〝ハッ〟として、後ろを振り返ると、他の1体が下降してきていた。
対応するには、どうやら間に合いそうにない―。
“1ヶ月ほど前から、サーヌ国の西方領土に在る旧鉱山街にモンスター達が住み着いた。
今はまだ山中の動植物を食しているようだが、それが尽きれば周囲の街や村を襲うようになりかねないし、付近を通過する旅人たちも狙われるだろう。
どうか、被害が出ないうちに、討伐してほしい。”
と――。
どの街と村にも駐屯兵はいるが、主な職務はその地の守衛である。
当然、他国との戦になった際には、出兵しなければばらない。
つまり、今回のような案件は、兵士たちの仕事の範疇ではないため、冒険者に依頼するのが常なのだ。
成功報酬は金貨100枚だった。
近隣の街と村で出し合ったのだろう。
いずれにせよ、[鮮紅の豹一団]にとっては、大助かりである。
ラーザをトップにした陣形で、そのパーティーは[旧鉱山街]に足を踏み入れた。
最右方には弥太郎を、最左方にラットを配置して。
中央には、身軽さと素早さに定評がある【|盗賊(シーフ)】と【忍者(アサシン)】が見受けられる。
四方八方どこから敵が現れても、即座に仲間をフォローできるようにとの措置であろう。
最後尾は、防御力の高い【騎士】であるバウンが担っているようだ。
山の南側に、半円形の街が時を止めたかのように存在している。
街そのものはと言うと、道を形成している石畳の隙間からは草が少なからず伸びており、建物の外壁には若干ながらも蔦が這っているようだ。
街の中央には、ちょっとした広場がある。
かつては住民たちの“憩いの場”だったのであろう。
そこに、20体のゴブリンと、10体のハーピーが見受けられた。
ラーザたちの位置からは、およそ5Mくらいだろうと思われる。
焚火を囲んで食事しているようだ。
おそらくは動物の肉であろう。
右手のバトルアックスを掲げたラーザが、それを無言で振り下ろし、全員に突撃の合図を送った。
一斉に駆け寄ってきた[鮮紅の豹一団]に驚いたモンスター達が慌てる。
ゴブリンどもは地面に置いていた“青銅の剣”や“石槍”を掴む。
どの武器も質素な感じなので、攻撃力は低そうだ。
身に纏っているのは小豆色や茶色の麻布なので、防御力も大したことないだろう。
ハーピーたちは〝バサバサバサバサッ〟と翼をはためかせ、上空に避難した。
「うりゃッ!」
と戦斧を横に振るったラーザによって、近くに居たゴブリンの首が刎ねられる。
まるで噴水のように〝ブシュウゥゥゥーッ!!〟と血しぶきを上げて、背から崩れ落ちた。
他のゴブリン達が立ち上がり、こちらに武器を向けながら広がっていく。
イザッドが、連中の足元に直径10Mの魔法陣を出現させる。
次の瞬間、地面が幾つにも隆起した。
それぞれの高さは1M~5Mとバラバラではあったが、
ドッ!ドドッ!ズドッ!
と、魔物たちが突き上げられた。
倒れ込んだゴブリン達に、スキルや矢が放たれる。
ラーザは幅1M×長さ4Mの“炎の帯”を、弥太郎が高さ3M×最大幅2Mの“風の渦”を、ラットは最大縦幅50㎝×横幅5Mで弓型の“水の刃”を、それぞれに飛ばす。
焼かれる者に、撥ねられる者や、切り傷を負う物と、目や肩に矢が刺さる者など、様々である。
一方、地上15M程の所から観察していたハーピー達は、[鮮紅の豹一団]の後列から攻略することに決めたようだ。
身長165㎝~170㎝のチームが、それぞれの獲物を目掛けて急降下してくる。
ターゲットにされた面子には、紫蓮もいた。
右斜め上から迫りくる猛禽類特有の両足を、真横にした鉄刀で受け止めた彼が、〝ズザザザザァ~ッ〟と後方に押される。
体勢を整え直すべく再び空に飛び立とうとするハーピーに、紫蓮が左手から幅10㎝×長さ2Mの“雷”を直撃させた。
ズバァアンッ!!
とヒットした敵が、
ビリビリッ!
と、感電して、胸元から〝ドサッ!〟と地面に倒れ、
ピクッ!ピクッ!
と痙攣する。
幼馴染の陽香がハーピーに殺された時の光景が、彼の脳裏に蘇っていた。
今、自分の目の前にいる奴は別物だと分かってはいても、湧いてくる怒りを抑えきることが出来ない。
息の根を止めるべく鉄刀を振り上げようとした紫蓮に、20代前半の【巫女】である奏が、
「危ない!!」
と声を掛ける。
視野が狭くなり、周りが見えなくなっていた紫蓮が〝ハッ〟として、後ろを振り返ると、他の1体が下降してきていた。
対応するには、どうやら間に合いそうにない―。
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