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― 第一章・旅立ち ―
第5話 半獣やら魔物やら
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「と、ところで、紫蓮。〝神を殺す〟と言っていたが…、当てはあるのか?」
と弥太郎が話題を変えようとしたが、
「お!いきなり真面目だねぇ~。“漆黒の狼”さん♪」
と、ラーザが茶化したので、
「ぐッ。その名で呼ぶのはやめてもらいたいんだがねぇ。“鮮紅の豹”さん。」
と弥太郎がやり返した。
「むッ! 先に仕掛けてきたのはそっちだろッ!?」
「い~や、お前が先だ! “弥太郎左衛門”って言いやがったからなッ!」
「別にいいだろ!? それぐらい!!」
「ダメだ! 大体、お前は“ノリ”で生きてるから、他人の迷惑を考えた事ないだろ。周りの気も知らないで…、この単細胞めッ!!」
「なッ?! なんだよ! そこまで言わなくてもいいだろッ!? 頭きたッ!!」
と、ラーザが立ち上がる。
「お!? なんだ? やんのか?! 上等だ!!」
と弥太郎も続いて立ち上がった。
そんな二人の後ろから、
「やめなよ! 内輪もめは御法度でしょ? ねッ!」
と、場を落ち着かせようとする女性を見て、
「魔物?!」
と驚いた紫蓮に、
「なッ?! 私は…、半獣ですぅ~ッ!!」
と、相手が憤った。
彼女は、身長157~158㎝ぐらいで、腰あたりまでの長さがある灰色と白色の髪を三つ編みにしており、頭から生えている“兎の耳”も髪の毛と同じ色あいである。
瞳が青い美少女で、黒色を基調としたゴスロリ風の衣服を着用しているが、全体的に軽装だ。
「半獣…。初めて見た。」
と目を〝パチクリ〟する紫蓮に、
「そうなの? じゃあ勘違いしても仕方ないから許してあげる。」
「私の名前は、ラット。よろしくね☆」
と、兎の半獣が機嫌を直して微笑んだ。
これで興が醒めたラーザと弥太郎が、どちらからともなく座る。
「半獣も仲間なのか?」
と訊ねる紫蓮に、ラーザが、
「ん、そうだよ。…、ま、実際に魔物もいるけどね。」
と、答えたので、辺りを見回してみたら、別の焚火グループには、確かにモンスター達の姿も見受けられた。
「どういうことだ?」
と少なからず混乱する紫蓮に、右隣の老体が、
「“サーヴァント”じゃよ。」
と、教えてくれた。
更には左隣の太った男性が、
「“契約”のスキルを持っていれば、従属させられるんだよ。」
と補足する。
彼らによると、魔物たちのなかには、強さを認めて平伏する者がいるとの事で、そういうモンスターは[契約の書]を提示してくるのだそうだ。
こちらが承諾すれば相手の額に[サーヴァントの紋章]が現れる。
「それが“契約の証”である」との説明だった。
白髭の老人が、
「どういう理屈でそうなるのか詳細は不明じゃが、各種族のなかで最も弱き人間に〝神が与えたもうた奇跡〟とも、〝二千年前の十英雄が編み出した救済〟とも言われておるし…、それらとは異なる説もあるようじゃ。」
と、語った。
「俺、そのスキル持ってる。」
「けど…、魔物を見たのは“東の大陸”での戦の時が初めてだったから、“契約”の意味が分からなかった。」
「そういう能力だったのか…。」
と納得する紫蓮に、弥太郎が、
「まぁ、“神之国”にはモンスターがあまり生息していないからな。」
「ちなみに、契約できるのは1人につき5体まで。が、基本だ。」
と、述べた。
ラーザによれば、
「“サーヴァントの紋章”があるモンスター達は、多くの国や街への出入りが認められているんだ。」
「なかには立ち入り禁止にしている地域もあるけどね。」
との事だった。
「そう言えば自己紹介が未だだったね。僕は“バウン”だ。」
と太った男が〝ニコッ〟と笑みを浮かべる。
「儂は“イザッド”じゃ。」
と、老体がそれに続いた。
「で? 話しを元に戻すが、結局、これから先どうするんだ?」
弥太郎が問いかける。
「…、まずは、強くなりたい。」
「現時点では、あのクソ神どもを1匹たりともブチのめせないだろうから…。」
いささか意気消沈する紫蓮に、
「じゃあ、ボクたちと一緒に旅して、腕を磨くかい?」
とラーザが勧誘した。
しかし、弥太郎が、
「いや、俺たちは冒険者だから、神に辿り着くのが遠回りになってしまうだろう。」
と、苦言を呈す。
「お前さん、ジョブは何じゃ?」
とのイザッドの質問に、
「“侍”だけど…。」
と紫蓮が返した。
これに、バウンが、
「それじゃあ…、“侍王”の所はどうかな?」
と、提案してくれたのだった―。
と弥太郎が話題を変えようとしたが、
「お!いきなり真面目だねぇ~。“漆黒の狼”さん♪」
と、ラーザが茶化したので、
「ぐッ。その名で呼ぶのはやめてもらいたいんだがねぇ。“鮮紅の豹”さん。」
と弥太郎がやり返した。
「むッ! 先に仕掛けてきたのはそっちだろッ!?」
「い~や、お前が先だ! “弥太郎左衛門”って言いやがったからなッ!」
「別にいいだろ!? それぐらい!!」
「ダメだ! 大体、お前は“ノリ”で生きてるから、他人の迷惑を考えた事ないだろ。周りの気も知らないで…、この単細胞めッ!!」
「なッ?! なんだよ! そこまで言わなくてもいいだろッ!? 頭きたッ!!」
と、ラーザが立ち上がる。
「お!? なんだ? やんのか?! 上等だ!!」
と弥太郎も続いて立ち上がった。
そんな二人の後ろから、
「やめなよ! 内輪もめは御法度でしょ? ねッ!」
と、場を落ち着かせようとする女性を見て、
「魔物?!」
と驚いた紫蓮に、
「なッ?! 私は…、半獣ですぅ~ッ!!」
と、相手が憤った。
彼女は、身長157~158㎝ぐらいで、腰あたりまでの長さがある灰色と白色の髪を三つ編みにしており、頭から生えている“兎の耳”も髪の毛と同じ色あいである。
瞳が青い美少女で、黒色を基調としたゴスロリ風の衣服を着用しているが、全体的に軽装だ。
「半獣…。初めて見た。」
と目を〝パチクリ〟する紫蓮に、
「そうなの? じゃあ勘違いしても仕方ないから許してあげる。」
「私の名前は、ラット。よろしくね☆」
と、兎の半獣が機嫌を直して微笑んだ。
これで興が醒めたラーザと弥太郎が、どちらからともなく座る。
「半獣も仲間なのか?」
と訊ねる紫蓮に、ラーザが、
「ん、そうだよ。…、ま、実際に魔物もいるけどね。」
と、答えたので、辺りを見回してみたら、別の焚火グループには、確かにモンスター達の姿も見受けられた。
「どういうことだ?」
と少なからず混乱する紫蓮に、右隣の老体が、
「“サーヴァント”じゃよ。」
と、教えてくれた。
更には左隣の太った男性が、
「“契約”のスキルを持っていれば、従属させられるんだよ。」
と補足する。
彼らによると、魔物たちのなかには、強さを認めて平伏する者がいるとの事で、そういうモンスターは[契約の書]を提示してくるのだそうだ。
こちらが承諾すれば相手の額に[サーヴァントの紋章]が現れる。
「それが“契約の証”である」との説明だった。
白髭の老人が、
「どういう理屈でそうなるのか詳細は不明じゃが、各種族のなかで最も弱き人間に〝神が与えたもうた奇跡〟とも、〝二千年前の十英雄が編み出した救済〟とも言われておるし…、それらとは異なる説もあるようじゃ。」
と、語った。
「俺、そのスキル持ってる。」
「けど…、魔物を見たのは“東の大陸”での戦の時が初めてだったから、“契約”の意味が分からなかった。」
「そういう能力だったのか…。」
と納得する紫蓮に、弥太郎が、
「まぁ、“神之国”にはモンスターがあまり生息していないからな。」
「ちなみに、契約できるのは1人につき5体まで。が、基本だ。」
と、述べた。
ラーザによれば、
「“サーヴァントの紋章”があるモンスター達は、多くの国や街への出入りが認められているんだ。」
「なかには立ち入り禁止にしている地域もあるけどね。」
との事だった。
「そう言えば自己紹介が未だだったね。僕は“バウン”だ。」
と太った男が〝ニコッ〟と笑みを浮かべる。
「儂は“イザッド”じゃ。」
と、老体がそれに続いた。
「で? 話しを元に戻すが、結局、これから先どうするんだ?」
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「…、まずは、強くなりたい。」
「現時点では、あのクソ神どもを1匹たりともブチのめせないだろうから…。」
いささか意気消沈する紫蓮に、
「じゃあ、ボクたちと一緒に旅して、腕を磨くかい?」
とラーザが勧誘した。
しかし、弥太郎が、
「いや、俺たちは冒険者だから、神に辿り着くのが遠回りになってしまうだろう。」
と、苦言を呈す。
「お前さん、ジョブは何じゃ?」
とのイザッドの質問に、
「“侍”だけど…。」
と紫蓮が返した。
これに、バウンが、
「それじゃあ…、“侍王”の所はどうかな?」
と、提案してくれたのだった―。
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