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― 第一章・旅立ち ―
第3話 憎しみと決意
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何時間ぐらい経ったのだろうか?
日が沈みかける頃に、戦場から一番近い[要塞都市]に到着した。
紫蓮は、人口10万とも言われているこの街に入る前に、パネル画面を扱って、装備品を“私服”に変更している。
白いワイシャツと、水色の宝石が特徴的なループタイに、ブラウンのパンツや、黒のロングブーツといった格好だ。
それ以外には、左腰に帯刀している。
夜になると閉門されてしまうが、ギリギリ間に合った彼は、都市内を暫く探索し、[魔鉱石の取引所]を見付けた。
紫蓮が出現させた魔鉱石に、痩せ型で無精髭の中年店主が、小窓から、
「ふむ。なかなか、だな。」
と、頷く。
その黒い魔鉱石は、30㎝程の長さで、赤色(炎)と白色(風)が入り混じっている。
「んー。これだと、金貨4枚…、いや、5枚で、どうだ?」
との提案に、良心的な方だと判断した紫蓮は承諾した。
(今日はこれで、飯を食って、どこかに泊まろう。)
と彼は再び歩き出す…。
時に野宿しつつ、たまには宿屋を利用し、船に乗って、手に入れた通貨が底を突く頃に、ようやく、故郷に辿り着いたのだが…、その変わり果てた街並みに紫蓮は愕然とした。
どこもかしこも、無残に破壊されているのだ。
〝ハッ〟とした彼は、自分の家へと駆けだす。
そして…。
瓦礫となっている実家を目の当たりして力が抜け、膝から崩れ落ちた。
(何だこれは? 一体なにがあったんだ??)
と、意味を理解できずにいたところ、背後から、
「もしや、紫蓮か?」
と誰かが声を掛けてきた。
振り返ると、齢70過ぎの長老を筆頭に、50名ほどの人々の姿があった。
長い白髭と、髪の毛一本生え残っていない頭が、特徴的な長老は、前“町主”である。
10年くらい昔に、自身の息子に町主の座を譲って、隠居生活を送ってきたそうだ。
「長老…、これは?」
と、紫蓮はフラつきながら立ち上がった。
「数日前のことじゃ…。この国の“神の一族”の中から5柱が飛来してきての…。」
「〝東の大陸における敗戦を、我らが国の王陛下は甚だしく遺憾に思われ、見せしめとして幾つかの街を滅することになされた。この地も候補になった故、有難く罰せられよ〟と、何千本もの“光の槍”を降り注がせたのじゃ…。」
「その際に、建物は壊れ、多くの者が命を落とし、かろうじて生き残ったのは儂らだけじゃった。」
「て事は…、俺の家族も?」
と聞いてみたら、ガタイが良い30代の男性が首を横に振り、
「残念ながら、そこに埋まっているようだ…。」
と、眉間にシワを寄せる。
「そんな…。」
と頭が真っ白になる彼に、40代で長身の男性が、
「ところで、紫蓮。他の人たちは? 帰ってきたのはお前だけか?」
と、尋ねてきた。
その男の近くには、陽香の母親が見受けられる。
父親は、どうやら亡くなったらしい。
紫蓮が申し訳なさそうに俯くと、それで察した幼馴染の母が、
「いいのよ、紫蓮ちゃん。あなただけでも無事だったんですから…。」
と寂しそうに微笑む。
いろんな感情が湧き上がった末に、憎しみに捉われた彼が、両手を握りしめて〝ワナワナ〟と震えると共に、下唇を強く噛み締める。
その唇から血が流れ出したので、長老たちが〝ギョッ〟とした。
しかし、そんな事には構わず、復讐の炎を宿した瞳で天を睨み付ける紫蓮は、
「殺してやる。あいつらを…、神を、皆殺しにしてやるッ!」
と、固く決意するのだった―。
日が沈みかける頃に、戦場から一番近い[要塞都市]に到着した。
紫蓮は、人口10万とも言われているこの街に入る前に、パネル画面を扱って、装備品を“私服”に変更している。
白いワイシャツと、水色の宝石が特徴的なループタイに、ブラウンのパンツや、黒のロングブーツといった格好だ。
それ以外には、左腰に帯刀している。
夜になると閉門されてしまうが、ギリギリ間に合った彼は、都市内を暫く探索し、[魔鉱石の取引所]を見付けた。
紫蓮が出現させた魔鉱石に、痩せ型で無精髭の中年店主が、小窓から、
「ふむ。なかなか、だな。」
と、頷く。
その黒い魔鉱石は、30㎝程の長さで、赤色(炎)と白色(風)が入り混じっている。
「んー。これだと、金貨4枚…、いや、5枚で、どうだ?」
との提案に、良心的な方だと判断した紫蓮は承諾した。
(今日はこれで、飯を食って、どこかに泊まろう。)
と彼は再び歩き出す…。
時に野宿しつつ、たまには宿屋を利用し、船に乗って、手に入れた通貨が底を突く頃に、ようやく、故郷に辿り着いたのだが…、その変わり果てた街並みに紫蓮は愕然とした。
どこもかしこも、無残に破壊されているのだ。
〝ハッ〟とした彼は、自分の家へと駆けだす。
そして…。
瓦礫となっている実家を目の当たりして力が抜け、膝から崩れ落ちた。
(何だこれは? 一体なにがあったんだ??)
と、意味を理解できずにいたところ、背後から、
「もしや、紫蓮か?」
と誰かが声を掛けてきた。
振り返ると、齢70過ぎの長老を筆頭に、50名ほどの人々の姿があった。
長い白髭と、髪の毛一本生え残っていない頭が、特徴的な長老は、前“町主”である。
10年くらい昔に、自身の息子に町主の座を譲って、隠居生活を送ってきたそうだ。
「長老…、これは?」
と、紫蓮はフラつきながら立ち上がった。
「数日前のことじゃ…。この国の“神の一族”の中から5柱が飛来してきての…。」
「〝東の大陸における敗戦を、我らが国の王陛下は甚だしく遺憾に思われ、見せしめとして幾つかの街を滅することになされた。この地も候補になった故、有難く罰せられよ〟と、何千本もの“光の槍”を降り注がせたのじゃ…。」
「その際に、建物は壊れ、多くの者が命を落とし、かろうじて生き残ったのは儂らだけじゃった。」
「て事は…、俺の家族も?」
と聞いてみたら、ガタイが良い30代の男性が首を横に振り、
「残念ながら、そこに埋まっているようだ…。」
と、眉間にシワを寄せる。
「そんな…。」
と頭が真っ白になる彼に、40代で長身の男性が、
「ところで、紫蓮。他の人たちは? 帰ってきたのはお前だけか?」
と、尋ねてきた。
その男の近くには、陽香の母親が見受けられる。
父親は、どうやら亡くなったらしい。
紫蓮が申し訳なさそうに俯くと、それで察した幼馴染の母が、
「いいのよ、紫蓮ちゃん。あなただけでも無事だったんですから…。」
と寂しそうに微笑む。
いろんな感情が湧き上がった末に、憎しみに捉われた彼が、両手を握りしめて〝ワナワナ〟と震えると共に、下唇を強く噛み締める。
その唇から血が流れ出したので、長老たちが〝ギョッ〟とした。
しかし、そんな事には構わず、復讐の炎を宿した瞳で天を睨み付ける紫蓮は、
「殺してやる。あいつらを…、神を、皆殺しにしてやるッ!」
と、固く決意するのだった―。
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