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60.凪ぐ

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「何ッ?!」
三上みかみ・ディン・煌士あきひと”を中心に、敵どもが驚く。
隈本一帆くまもとかずほ鐶倖々徠かなわささら副隊長に意川敏矢いかわとしやも目を丸くしている。
なお、戦闘を繰り広げている最中のメンバーには、沖奈朔任おきなさくと隊長の発言は聞こえていないようだ。
「あの研究施設には、なかりの数が暮らしていましたし…。」
「僕は、あなたとは別のグループだったので、会ったことは殆どなかったでしょう、多分。」
「それに……、僕は、あなたみたいに“強硬派”ではなかったので、あの時、研究所から先に逃がしてもらえました。」
「そこで、能力に目覚めたばかりの“現総監”などに遭遇し、保護してもらったのです。」
「僕が“H.H.S.O”に入隊した頃には割と年月が過ぎていましたし、もともと、僕らは、あそこでは番号・・で呼ばれていましたからね…、気づかなかったのも無理はありませんよ。」
こう説明した沖奈に、
「……、成程な。」
理解を示して、
「ま、なんにせよ。」
「ここで、お前らを殺せばいいだけの話しだ。」
〝ニヤリ〟とした三上が、【重力増大】を使おうとする。
しかし、三上よりも早く、
「発動!」
沖奈が唱えた事で、“右のてのひら”より直径15㎝ぐらいの【白い光線ビーム】が放たれた。
それ・・によって、右鎖骨あたりを貫かれた三上が、
「ぐぅッ??!」
眉間にシワを寄せつつ、仰向けに倒れる。
「!!」
“金髪ショートの女性”と“黒髪サラサラショートの男性”が、三上に釘付けになるなか、
「隈本さん!」
「女性の方を!!」
沖奈が指示を飛ばす。
〝ハッ!〟とした一帆は、
「発動。」
自身の両拳を〝ゴツンッ〟と合わせた。
“金髪ショート”が【爆発】を用いるべく、焦りながら左指で耳たぶに触れる。
だが、かなりのスピードで距離を詰めた一帆によって、顎に掌底を当てられ、尻餅を着き、やはり仰向けとなった。
「こっちも終わったぞ。」
声をかけてきた総監の方を見ると、[二足歩行の虎]が、うつ伏せになっている。
「あなたは、どうします?」
沖奈に訊ねられた“黒髪サラサラショートの研究者らしき男”が、静かに両手を挙げた。
「では…、それぞれを捕らえましょう。」
そう促した沖奈によって、一帆達も、敵らを後ろ手にして、手錠をかけてゆく……。

世界中で妖魔を殲滅できた。
とはいえ、人間側で犠牲になった者も少なくない。

ちなみに、神奈川県の埠頭には、[東京組 第二百一番隊]も趣いていた。
ここの“セミロングのストレートヘアをプラチナブロンド色に染めている女性隊員
”のスキルにて、三上らは能力を永久に封じられたのち、例の病院・・・・に搬送され、一命を取り留めている。
勿論、一帆たちも傷を治してもらっていた…。



数日が経っている。

沖奈が“半妖”である件は、[東京組 第十三番隊]の誰もが知ることになった。
そんな沖奈は〝先代の十三番隊に、お世話になった人がいましたね〟〝その方も半妖だったのですが……、無念を晴らせたのであれば良かったです〟と語っている。

警察署では、三上などが供述を始めたらしい。
これによれば〝各国に拠点があり、研究などを連携しているため、これからも妖魔は出現する〟〝やがては同志らが第四次の大量発生を起こしてくれるだろう〟との事だった。

その主張どおり、いまだに世界中で[時空のひずみ]が日常的となっている…。



青空の[歌舞伎町]を、一帆と沖奈が巡回していた。
どこからともなく吹いてくる穏やかな風が、肌に心地よい。
不意に、
「今まで黙っていましたが、もう大丈夫なので、喋らせていただきます。」
「実は、隈本さんのことを覚えていたのですよ。」
「いえ、正確には、貴女が十三番隊に配属されるのが決まったとき、特徴やスキルを総監に教えられたとき、思い出したのです。」
「ただ……、これまで“スパイ”や“黒幕”が不明でしたし、他にもが潜んでいて、ずっと僕らを騙している可能性がありましたので、隈本さんと親密にならないよう距離を置いていました。」
「そうしないと、僕らが怪しまれ、皆さんとの足並みが揃わなかったかもしれないので。」
こう沖奈が伝える。
〝え??〟と、まぶたを〝パチクリ〟させた一帆が、
「つまり…、私を護ってくださっていたのですか?」
それとなく尋ねてみたところ、
「まぁ、そうなりますね。」
沖奈が優しく微笑んだ。
〝キュン♡ キュン♡〟した一帆の脳内に、ある記憶が甦る。

彼女は、先日、宮瑚留梨花みやこるりかに、
「無事、生き残れたわけだし、いい加減、“さっくんたいちょー”にコクったら??」
「ほんと、うかうかしてたら、くまりん以外の女に奪われちゃうかもよぉ~?」
こう煽られていた。

〝うぅーん〟と悩んで、ふと立ち止まった一帆は、俯きながら、
「…………きです。」
ポツリと呟く。
「はい??」
振り返りつつ首を傾げた沖奈に、赤くした顔を上げた一帆が、
「沖奈隊長のことが好きです。」
真っ直ぐと想いを告げる。
それを受け、
「僕もですよ。」
沖奈が〝ニッコリ〟したところ、〝ズッキュウ~ンッ♡♡〟ときた流れで固まる一帆であった。
この事態に、
「えぇッ?!!」
「ちょっ、隈本さん??」
慌てだす沖奈である。
なにはともあれ。
めでたく二人は交際する運びとなった……。

数週間後には、鐶も筺健かごまさると付き合いだしている。
緋島早梨衣ひしまさりい小津間翔こづましょうは相変わらずフリーのようだ。
そうした状況で、何年後かに、一帆は沖奈と結婚するのだが…、これはまた、別の話しである―。


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ご愛読ありがとうございました。

他の作品も、よろしくお願いします。



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