めっぽう強い彼女の、めっぽう弱い部分。

ネコのうた

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46.悲喜こもごも

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この場所に宮瑚留梨花みやこるりかを送ってくれた警察たちによれば、
「噓発見器も使用しましたが、彼女は完全に“シロ・・”でした。」
とのことである…。
 
取り敢えず泣きんで〝ヒック ヒック〟と痙攣気味になった宮瑚が、
「結局のとこ、〝すてごま〟ってやつだったんだよ、あーしは。」
「関東司令官も、ミッツ―も、なんにも教えてくれてなかったし。」
そのように口を開いた。
宮瑚にしてみれば、〝架浦聖徒みつうらせいんとのカモフラージュとして選ばれたに過ぎず、関東司令官に重宝されていた訳ではなかった〟という悔しさと、〝仲間として受け入れ直してくれた東京組第十三番隊の温かさ〟に安堵して、涙が自然にあふれてしまったようだ。
「初めに事実を伝えられていた場合、貴女は素直に従いましたか?」
優しく問いかけた沖奈朔任おきなさくと隊長に、
「それは、ない。」
宮瑚がハッキリと答える。
「まぁ、そうだろうな。」
「お前は、お馬鹿なほうではあるけど、根は悪いヤツじゃねぇし。」
「本当のことを知らされていたら、きっと断ってただろ。」
緋島早梨衣ひしまさりいが述べたところ、
「うぅっ、サリーちゃあ~ん。」
「信じてくれて、ありがとぉー。」
再び泣き出した宮瑚に抱き付かれてしまった。
「バ、ちょ、おま、やめろって!」
「涙と鼻水で、アタシの服が汚れんだろうがよ!!」
困惑しながら両手で押しのけようとする緋島に、鐶倖々徠かなわささら副隊長と隈本一帆くまもとかずほが〝くすくす〟笑う。
男性三人は、優しく見守っていた…。
 
「落ち着いたようなので、そろそろ行きましょうか。」
「架浦さんに会いに。」
「もし、本人が居なかったとしても、“漠皁組まくそうぐみ若頭わかがしら”は間違いなく潜んでいるでしょうから、必ず捕まえたいですね。」「いろいろと暴露させるためにも……。」
こう告げた沖奈が、
「お待たせしました。」
「よろしくお願いします。」
[東京組第二百一番隊]の隊長たる“八幸やさき”に向けて、軽く会釈したのである。
「了解です。」
頷いた八幸は、反転するなり、
「これより作戦を開始する。」
「が…。」
「仮に、“関東司令官の回し者”が、この隊に紛れていたときは、迷わず殺せ!」
「さもなければ、自分が死ぬぞ。」
そう配下に命令したのだった。
 
 

自動ドアから1.5Mほど離れた位置で、七三にした黒髪をポマードで固めているらしい“インテリ眼鏡の男性”が、両のてのひらを突き出し、
「発動。」
静かに唱える。
ここから、30代前半であろう男が、両手を左右に広げていった。
それによって、ドアが開いていく。
「テレキネシス……、いわゆる“念力”みたいですね。」
沖奈の呟きが耳に入ったらしい筺健かごまさるが、
「お前の能力と同じ系統か??」
意川敏矢いかわとしやに尋ねる。
「さぁ?」
「どうでしょう??」
「似たようなスキルは幾つかあるみたいですけど、ボクには詳しい事は分かりません。」
意川が肩をすくめたところ、
「異能力については、研究者たちも、まだまだ解明しきれていないようですからね。」
「〝全人類がスキルを使える訳ではない〟というのも含めて、いまだ謎が多いそうですよ。」
こう語ったのは、鐶であった…。
 
[H.H.S.O]が建物内へと足を運ぶ。
ちなみに、“第二百一番隊”のうちの5名は、駐車場で待機していた。
いつ現れるとも知れない妖魔に備えて。
 
自動ドアを通過した所で、八幸が、
「そっちは任せたぞ。」
隊員の10人に指示する。
〝はッ!!〟と応じたメンバーは、右側へと進んでいった。
以前、沖奈が架浦と共に各部屋をチェックした時は誰も居なかったが、〝あれから状況が変わったのでも増援されているかもしれない〟と警戒してのことである。
「いつでも、どうぞ。」
八幸に促され、
「それでは、残りの方々は僕に付いて来てください。」
穏やかに伝える沖奈だった。
 
 

沖奈隊長を先頭にした12人は、屋内の左エリアを歩いている。
二列目が鐶副隊長&筺で、三列目は緋島&一帆、四列目に意川&宮瑚が、続いていた。
その後ろは[第二百一番隊]の5名である。
こうした最中さなかに、小声で、
「ねぇ? トッシー。」
「あーしが警察に連れて行かれたって聞いたとき、どう思ったぁ??」
「〝やっぱりスパイか〟て、けーべつした?」
宮瑚が質問した。
「いや、そんな事ないけど??」
「だって、お前、ゲームで対戦すると、いっつも正直すぎて、すぐボクに負けてたじゃん。」
「そういうタイプは、他人ひとを騙せないでしょう。」
「簡単にバレるだろうから。」
「ま、架浦さんがだったのには納得させられたけどさ。」
意川が述べたら、
「つまりは、あーしのこと、信用してくれてたんだ?」
「……、えへへへ。」
嬉しそうにした宮瑚である。
「なんだよ??」
「変なやつだなぁ。」
眉をひそめた意川に、
「なーんでもなぁ~い♪」
上機嫌になる宮瑚であった…。
 
 

一同は、例の“デッドスペース”に到着している。
「さて。」
「やはり、これ・・が怪しいですね。」
沖奈は左側へと視線を送った。
そこには、壁と一体化している[赤色の火災報知器]が見受けられる。
このボタンを、沖奈が“右の人差し指”で押してみた。
本来であれば〝ジリリリリリィーッ〟と鳴り響く筈のところ、“正面の壁・・・・”が左に〝ガガガガガガァ〟とスライドしていく。
そうして登場したのは、“地下への階段”である。
後ろを振り向いて、
「では、進むとしましょう。」
皆を安心させるために微笑む沖奈だった―。
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