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38.隠伏

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先ほど三人の能力者と戦っていた場所にて。
逮捕された反社たちが、パトカーへと連れられていくなか、
「我々は、これから建物を含めた敷地内を徹底的に調査していきますので、皆さんはお帰りいただいて結構です。」
「ご協力ありがとうございました。」
宇山うやま刑事が[H.H.S.O]に挨拶したのである。
「ご苦労様です。」
会釈した沖奈朔任おきなさくと隊長が、
「では、帰りましょうか。」
隈本一帆くまもとかずほ宮瑚留梨花みやこるりか意川敏矢いかわとしやといった隊員らと歩きだした。
「さくときゅ…、コホンッ。」
「さくと君、またね。」
[東京組第十四番隊]の副隊長に声をかけられ、
「あ、はい。」
「どうも、お疲れ様でした。」
沖奈が〝ニッコリ〟する。
その微笑みに〝ズッキューン♡〟ときたらしい原城はらきに、どこか複雑そうな表情になる一帆だった……。
 
 

AM11:00過ぎ。
筺健かごまさる緋島早梨衣ひしまさりいが巡回から戻ってきたところで、沖奈が[漠皁組まくそうぐみ]の件を説明していく――。
 
「マジっすか?!」
「まぁーた、アタシがパトロールしてっ時に限って面白そうなことになって!」
「今回こそは参加したかったス!!」
あからさまに機嫌を損ねた緋島を、
「いや、四人とも大変だったみたいだから…、いささか不謹慎な感じがするぞ。」
筺が軽めに注意した。
「確かに、そうっすね。」
「すみませんした、隊長。」
「アタシが悪かったっす。」
謝罪した緋島に、
「いいえ、お気になさらず。」
沖奈が優しく返す。
「それで?」
「漠皁組の“若頭かしら”は、どのようなスキルで姿をくらましたのでしょうか??」
筺が素朴な疑問を口にしたら、
「そうですねぇ……。」
「〝テレポーテーション〟〝タイムストップ〟〝物質への擬態〟〝自身の存在を認識させない〟などが考えられるでしょうが、実際には分かりません。」
このように沖奈が答えたのである。
「そんなスキルがあるの?」
ディスク席より宮瑚が話しかけてきたところ、
「さぁ、どうでしょう??」
首を傾げた沖奈が、
「あくまで僕の仮説にすぎないので、別の可能性があるかもしれませんね。」
そう締め括ったのであった。
 
 

PM20:00となり、十三番隊が解散していく…。
 
数分後に、本拠地の近くの[専用駐車場]に戻って来たのは、沖奈のようだ。
自身の車から降りた沖奈が、右隣に停まっている別の車の“助手席”に座る。
「人目を避けるためとはいえ、手間をお掛けして申し訳ございません。」
このように述べたのは、総監の“秘書”だった。
「いえいえ、総監の命令とあらば、仕方ありませんよ。」
苦笑いする沖奈に、
「早速ですが、本日の詳細を、お聞かせください。」
秘書が伺う。
「〝漠皁組に関して〟ですね。」
理解を示した沖奈が、
「実は――。」
一連の流れを報告していった。
 
同じ頃。
コンビニの[パーキングエリア]では、エンジンを止めた“原付バイク”に跨ったまま、ヘルメットを脱いだ意川が、上着のポケットの中からスマホを掴んだ。
「…………。」
「あー、もしもし?」
「お休みのとこ、すみませんね、かなわ副隊長。」
「伝えておかないといけない事が、今朝がた発生しましたんで。」
そう語る意川であった。
 
とある駅にて。
「じゃ、くまりん。」
「あーしは“特急”に乗り換えるから、ここで。」
「おっつぅー☆」
手を振って電車からホームへと足を運ぶ宮瑚に、
「あ、はい。」
「おつかれさまでした。」
一帆が頭を下げる。
階段へと進んだ宮瑚は、ショルダーバッグからスマホを取り出した。
誰かに電話を掛けて、
「……。」
「…………。」
「……………………。」
「おっそぉーいッ!」
「なに!? ひょっとして、もう酔っ払ってんのッ??!」
怒りを露わにしたのである。
「まったく…。」
「え?」
「いや、トラブルってほどじゃないんだけど……、一応〝ミッツ―に教えておいたがいいかも〟と思ってさ。」
相手は間違いなく架浦聖徒みつうらせいんとであろう。
こうして、秘かに情報を共有していく“三派閥”だった…。
 
再びの車内では、
「……、その、“若頭”とは何者なのでしょう??」
「“H.H.S.O”に潜んでいるかもしれないと繋がっているとか?」
秘書に尋ねられ、
「んんー。」
「否定はできませんが、証拠が無いので、肯定もし兼ねます。」
沖奈が〝困り顔〟になる。
「そうですよね。」
納得した様子の秘書が、
「それにしても。」
「〝他者に見つからない能力〟とは…、厄介なのではありませんか??」
新たに質問したのであった。
それに対して、
「はい。」
「かなり。」
沖奈が静かに頷く。
しかし、次の瞬間には、
「ですが、まぁ、捜し出す方法はありますので、その人物の特徴も、総監の耳に入れておいてください。」
〝ニコッ〟としたのである……。
 
 

五日が経った。
AM07:55あたりに、ビルの一階でエレベーターを待つ沖奈のスマホが鳴ったみたいだ。
「おはようございます。」
「…………、成程、そうですか。」
「動くとしたら明後日になりますので、総監にお知らせ願えますか?」
「…………、いえ、とりあえずは僕だけで探ってみます。」
「…………、大丈夫ですよ、危険そうであれば逃げますので。」
「…………、ええ、どうも、ありがとうございました。」
「それでは失礼します。」
穏やかに喋った後に電話を切り、いつになく真剣な目つきとなる沖奈だった―。
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