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37.顛末

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“黒髪オールバック”による50発の[石礫いしつぶて]が、膝を屈している警察たちの頭上を過ぎていく。
それらが、いまだ両耳を手で塞いでいる隈本一帆くまもとかずほなど[H.H.S.O]の胸元や腹部に直撃した。
「ぐッ!!」
一帆たちが痛がるなか、全身をに変化させている“茶髪ウルフカット”が、前線の警察らを蹴散らしていく。
このタイミングで、“黒色ロン毛”による【超音波】の効果が切れたらしく、多くの者が〝ほッ〟と一息ひといきついたのである。
しかし、黒色ロン毛で紫スーツの男性が〝ニヤリ〟と口元を緩め、
「発動。」
またしてもスキルを扱ったのであった。
“銅の男”も、能力がタイムリミットを迎えたものの、改めて用いたようだ。
その男性が、改めて警察たちに暴力を振るう。
更に、新たなる[石礫]が放たれたところ、この一つが沖奈朔任おきなさくと隊長の額に当たってしまったのである。
帽子を被っていたとはいえ、なかなかのダメージだったらしく、沖奈が崩れゆくなか、一帆と原城ハラキが〝なッ!?〟と目を丸くした。
〝ドサッ〟と、うつ伏せになった沖奈の光景に、二人が揃って〝ブチン!〟とキレる。
まずは、
「許さないわよ!!」
怒りを露わにした原城が、右のてのひらを突き出し、
「発動!」
【吹雪】を起こす。
ただし、超音波に苦しみながらだったので、通常よりも規模が小さかったみたいだ。
それでも、“黒色ロン毛”を凍らせるには充分じゅうぶんだった。
これによって、超音波の影響が無くなり、
「発動!!」
自身の拳を〝ゴツン!〟とぶつけ、全細胞を活性化させた一帆が、かなりの速度で“黒髪オールバック”の間合いに入る。
あまりのスピードに〝ぎょッ!!〟とする男へと、一帆が〝右のストレートパンチ〟を見舞う。
それ・・が胸の中心あたりにヒットした“黒髪オールバック”は、
「がッ?!」
骨折するのと共に、後方に大きく弾かれたのであった。
こういった状況に気付いた“銅になっている男性”が、
「このッ!」
一帆へとダッシュするも、
「発動。」
意川敏矢いかわとしやによって、5Mほど宙に浮かされた流れで、地面に〝ドゴォンッ!!〟と落下したのである。
立ち上がって、
「ちったぁ焦ったが、こちとら無傷だぜ。」
「残念だったな。」
不敵な笑みを浮かべた男の姿が元に戻った。
そんな“茶髪ウルフカットの黒スーツ”が、またも全身を銅に変化させようと、右手で首の後ろを触ろうとする。
だが、これよりも先に、距離を詰めた一帆の“左回し蹴り”が、顔に〝ズバンッ!〟と炸裂し、
「ぶべッ!?」
〝ぐるん!!〟と一回転して横倒れになる男性だった。
「少しは手加減してあげたので、首は折れていないでしょう。」
あごに関しては保障できませんが…。」
一帆が告げたところで、
「さっくんたいちょー、大丈夫??」
との宮瑚留梨花みやこるりかの声が聞こえてきたのである。
〝ハッ!〟とした一帆が視線を送ったら、ふらつきながら立って、
「ええ、なんとか。」
〝ニッコリ〟した沖奈が、
「警察の方々は、今のうちに、あの人達を逮捕してください。」
そのように促したのであった。
 
何名かの刑事が“黒髪オールバック”と“茶髪ウルフカット”を拘束するなか、
「確か、原城さんのスキルは、あのままにしておくと氷漬けになっている対象者が亡くなってしまうんでしたよね?」
沖奈が尋ねる。
「まぁ、そうだけど……。」
「さくときゅ…、いえ、さくと君に危害を加えたヤツなんて万死に値するから、放っておいてもいいんじゃないかしら?」
こう述べる十四番隊の“副隊長”だった。
「いや、それは、さすがにダメですよ。」
沖奈が苦笑いしたところ、
「さくと君が、そう言うんであれば、能力を解くとするわ。」
「だから、すぐに取り押さえなさいよ。」
警察に原城が伝えたのである……。
 
凍っている男を、刑事の10名ぐらいが囲んだ。
ちなみに、他の下っ端どもは、三人が敗れたことで戦意喪失したらしく、もはや抵抗する気配すらない。
「スキル、解除。」
原城が唱えたら、氷が〝スッ〟と消えた。
「確保!!」
宇山うやまの号令にて、警察たちが一斉に“黒色ロン毛”へと飛び掛かる。
その最中さなかに、
「あれ??」
「そういえば…、“お若頭かしら”って呼ばれてたヤツが居なくなってる。」
意川が呟いた。
「ホントだぁ。」
「どっかに隠れたってことぉ?」
宮瑚が首を傾げたところで、
「我々が知らないうちに、屋内へと逃げたのかもしれませんね。」
こう分析した沖奈である。
「おい!」
漠皁組まくそうぐみの“組長”は何処だ?!」
森川もりかわの問いに、
「……、会議室だろうよ、きっと。」
下っ端の一人が、そっぽを向きながら答えた。
そういった情報を得て、
「では、踏み込むとしましょう。」
宇山刑事が[H.H.S.O]に話しかける。
これによって、建物へと足を運ぶ一同であった。
 
 

“板張りで幅広の廊下”を〝ズカズカ〟と進むメンバーに、「待てやコラぁあッ!!」「これ以上は行かせねぇぞ!」など、反社の数十人が迫って来る。
それを、「邪魔だ!!」「どいてろ!」と、警察たちが押しのけていく…。
 
“木製のドア”を〝バンッ!!〟と開けたのは、宇山だった。
「警察だ!」「動くな!!」「おとなしくしてろよ!」といった具合に何人かの刑事が[会議室]に突入する。
「上等じゃねぇか!!」
怒鳴りながら起立した“スキンヘッドでブラウンストライプスーツの男性”を、
「待て。」
「抵抗するな。」
“パンチパーマ”が諭す。
いわゆる[大親分]の判断に、幹部らが黙って従う。
周りを確認した稲村いなむらが、
「お前たちの若頭は??」
こう訊ねたら、
「あん!?」
「テメェらと戦ってたんだろッ?!」
スキンヘッドが返したのである。
「……、匿ってるわけではなさそうだな。」
いささか不審がる宇山に、
「アイツは“能力者”らしい。」
「どんなものかまでは儂も知らんが、いつだったか本人が〝探し出すのは不可能に近い〟と主張していたな…。」
そのように説明する[大親分]であった―。
 
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