めっぽう強い彼女の、めっぽう弱い部分。

ネコのうた

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28.忍びやかに。

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沖奈朔任おきなさくと隊長&隈本一帆くまもとかずほが、パトロールから戻ってきた。
ディスク席に座った一帆に、正面の宮瑚留梨花みやこるりかが、
「どぉうだったぁ~? くまりん。」
「“さっくんたいちょー”との、再びの、デ、エ、ト♡」
小声で尋ねる。
これに、
「はぁ。」
と、一帆が生返事をした。
「ん??」
「どうしたの?」
「“さっくんたいちょー”と、なんかあった??」
「もしかして、ケンカしたとか?」
宮瑚が心配したところ、
「いえ、そのようなことは……。」
「すみません。」
「大丈夫です。」
会釈した一帆は、話しを早々に切り上げて、事務作業に集中していったのである。
そんな様子に、宮瑚が〝はて??〟と不思議がった。
[H.H.S.O 東京組第十三番隊]の内情などを知った一帆は、同僚との接し方に悩んでしまっているようだ…。
 
 

終業となり、ビルの外で、
「くまりん。」
「あーし、今日、これから用事があって、一緒に帰れないから、ごめんね。」
こう伝えた宮瑚に、
「あ、はい。」
「お疲れさまです。」
一帆が、お辞儀する。
「じゃあ、みんな、また明日ねぇー。」
左手を〝ブンブン〟振った宮瑚が、足早に去っていくなか、
「オレも、人と飲みに行く約束があるから、これで。」
「おつかれっしたぁ。」
架浦聖徒みつうらせいんとが、軽く右手を挙げて、その場を後にした。
「それでは、我々も解散するとしましょう。」
「本日も、お疲れ様でした。」
こう述べた沖奈隊長と共に、
「カズホ、おつかれぇいッ。」
緋島早梨衣ひしまさりいと、
「お疲れさま、隈本隊員。」
筺健かごまさるが、駐車場へと向かう。
そんな三人へ、
「おつかれ様でした。」
頭を下げる一帆であった…。
 
数分後――。
かなりシャレた“飲み屋”の個室には、ある二人の姿が見受けられる。
「誰にもバレてないでしょうね?」
“ピンク髪のギャル”が質問したら、
「敢えて、お前とは逆方向の道を選んだからな。」
「気づかれちゃいないだろ。」
“金髪ハーフ”が答えたのだった。
ここへ、扉を開けた“スーツ姿の男性”が入ってくるなり、二人が立ち上がって、
「お疲れさまです、関東司令官。」
男性と、
「しれぇーかん、おひさぁー。」
女性が、挨拶したのである。
そう。
一人は架浦で、もう一人は宮瑚であった。
〝うむ〟と頷いた相手が、
「二人とも、掛けたまえ。」
このように勧めたのである。
[関東司令官]の背丈は173㎝ぐらいだ。
スレンダーな体型で、金色の髪をオールバックにしており、瞳は青い。
年齢は30歳といったところだろう。
以前、架浦がBARバーで密会していた男に違いない。
 
三人は、飲食しつつ、雑談を交わしていく。
主に、架浦と宮瑚が、ここ最近の第十三番隊に関して、報告しているみたいだ……。
 
俟團組きせんぐみ、か。」
「何処に消えたかは謎だが…、取り調べ、ご苦労だったな、架浦。」
関東司令官にねぎらわれて、
「ええ、まぁ。」
架浦が、いささか恐縮した。
「ミッツ―、……、あんた、反省してないっしょ??」
「つーか、あーしは、まだ、あんたのこと、けーべつ・・・・してんだけど?」
冷たい目となった宮瑚に、
「また、それかよ。」
「結局、十三番隊に犯人はいなかったんだから、もう、いいだろ。」
架浦が少なからず不貞腐ふてくされる。
〝くっくっくっくっ〟と苦笑いした関東司令官が、
「いい加減、勘弁してやったらどうだ? 宮瑚。」
そう促したら、
「じゃあ、ここらへんで、やめといてあげるよ…。」
口を尖らせつつ、引き下がる宮瑚だった。
「で??」
「他に、何か変わった事は?」
関東司令官が改めて訊ねたところ、
「あー、そういや、沖奈隊長は〝もともとアクション無しでスキルを扱えた〟って、隈本が言ってたんだよな??」
架浦が、右隣の宮瑚に、視線を送ったのである。
この情報に関東司令官が〝ほぉう〟と興味を示す。
「でも、それは、〝くまりん”の勘違いだった〟つったじゃん。」
宮瑚に指摘され、
「おぉ、そうだったな。」
思い出したらしい架浦が、
「なぁ?」
「隊長と巡回したあとの隈本って、よそよそしくなってなかったか??」
新たに疑問を投げかけた。
「んー、……。」
「いちおー、本人に確かめてみたんだけど、なんにも教えてくれなかったんだよねぇ。」
「何があったんだろ?」
宮瑚が首を傾げたら、〝ふむ??〟と反応を示した関東司令官が、
「連中は、足並みが揃っていないのか…。」
そう呟いた流れで、
「総監派であれ、副総監派であれ、潜んでいるであろうが尻尾を出した場合は、まず、二人が頼りになるのだから、仲たがいせずに、日頃から協力し合っておいてくれよ。」
このように架浦&宮瑚を諭したのである。
それを受けて、
「了解っす。」
架浦と、
「はーい。」
宮瑚が、やや不服そうにしながらも応じたのであった……。
 
 

路肩に停めてある高級車の後部座席で、左側の窓を関東司令官が四割ほど開ける。
「いつ何時なんどき、いろんなことが巻き起こっても動じないように、各自、心がけておいてくれたまえ。」
こう伝えた関東司令官が、運転手に車を発進させた。
歩道で見送りつつ、
「ねぇ。」
「“しれぇーかん”と、ミッツ―て、どこか似てるよね。」
宮瑚が述べる。
「んん~?」
「ま、オレも、関東司令官と一緒で、ジェントルメン・・・・・・・だからな。」
「こう、全体的に漂う“大人の色気”つーの??」
「そういうとこも、お互いに共通した」と、機嫌よく喋る架浦に、
「いや、そーじゃなく。」
「ルックスが。」
宮瑚がツッコんだ。
「そうかぁ?」
ちょっとだけ眉をダンチ・・・にした架浦が、
「関東司令官も“ハーフ”らしいからな…。」
「どことなく印象が似ているんじゃないか??」
「もしかしたら、両方の先祖を辿っていくと、同じ人物に辿り着いたりして。」
お茶目に意見したのである。
それに対して、
「あぁー、なるほどねぇ。」
納得した感じの宮瑚だった―。
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