上 下
28 / 60

28.忍びやかに。

しおりを挟む
沖奈朔任おきなさくと隊長&隈本一帆くまもとかずほが、パトロールから戻ってきた。
ディスク席に座った一帆に、正面の宮瑚留梨花みやこるりかが、
「どぉうだったぁ~? くまりん。」
「“さっくんたいちょー”との、再びの、デ、エ、ト♡」
小声で尋ねる。
これに、
「はぁ。」
と、一帆が生返事をした。
「ん??」
「どうしたの?」
「“さっくんたいちょー”と、なんかあった??」
「もしかして、ケンカしたとか?」
宮瑚が心配したところ、
「いえ、そのようなことは……。」
「すみません。」
「大丈夫です。」
会釈した一帆は、話しを早々に切り上げて、事務作業に集中していったのである。
そんな様子に、宮瑚が〝はて??〟と不思議がった。
[H.H.S.O 東京組第十三番隊]の内情などを知った一帆は、同僚との接し方に悩んでしまっているようだ…。
 
 

終業となり、ビルの外で、
「くまりん。」
「あーし、今日、これから用事があって、一緒に帰れないから、ごめんね。」
こう伝えた宮瑚に、
「あ、はい。」
「お疲れさまです。」
一帆が、お辞儀する。
「じゃあ、みんな、また明日ねぇー。」
左手を〝ブンブン〟振った宮瑚が、足早に去っていくなか、
「オレも、人と飲みに行く約束があるから、これで。」
「おつかれっしたぁ。」
架浦聖徒みつうらせいんとが、軽く右手を挙げて、その場を後にした。
「それでは、我々も解散するとしましょう。」
「本日も、お疲れ様でした。」
こう述べた沖奈隊長と共に、
「カズホ、おつかれぇいッ。」
緋島早梨衣ひしまさりいと、
「お疲れさま、隈本隊員。」
筺健かごまさるが、駐車場へと向かう。
そんな三人へ、
「おつかれ様でした。」
頭を下げる一帆であった…。
 
数分後――。
かなりシャレた“飲み屋”の個室には、ある二人の姿が見受けられる。
「誰にもバレてないでしょうね?」
“ピンク髪のギャル”が質問したら、
「敢えて、お前とは逆方向の道を選んだからな。」
「気づかれちゃいないだろ。」
“金髪ハーフ”が答えたのだった。
ここへ、扉を開けた“スーツ姿の男性”が入ってくるなり、二人が立ち上がって、
「お疲れさまです、関東司令官。」
男性と、
「しれぇーかん、おひさぁー。」
女性が、挨拶したのである。
そう。
一人は架浦で、もう一人は宮瑚であった。
〝うむ〟と頷いた相手が、
「二人とも、掛けたまえ。」
このように勧めたのである。
[関東司令官]の背丈は173㎝ぐらいだ。
スレンダーな体型で、金色の髪をオールバックにしており、瞳は青い。
年齢は30歳といったところだろう。
以前、架浦がBARバーで密会していた男に違いない。
 
三人は、飲食しつつ、雑談を交わしていく。
主に、架浦と宮瑚が、ここ最近の第十三番隊に関して、報告しているみたいだ……。
 
俟團組きせんぐみ、か。」
「何処に消えたかは謎だが…、取り調べ、ご苦労だったな、架浦。」
関東司令官にねぎらわれて、
「ええ、まぁ。」
架浦が、いささか恐縮した。
「ミッツ―、……、あんた、反省してないっしょ??」
「つーか、あーしは、まだ、あんたのこと、けーべつ・・・・してんだけど?」
冷たい目となった宮瑚に、
「また、それかよ。」
「結局、十三番隊に犯人はいなかったんだから、もう、いいだろ。」
架浦が少なからず不貞腐ふてくされる。
〝くっくっくっくっ〟と苦笑いした関東司令官が、
「いい加減、勘弁してやったらどうだ? 宮瑚。」
そう促したら、
「じゃあ、ここらへんで、やめといてあげるよ…。」
口を尖らせつつ、引き下がる宮瑚だった。
「で??」
「他に、何か変わった事は?」
関東司令官が改めて訊ねたところ、
「あー、そういや、沖奈隊長は〝もともとアクション無しでスキルを扱えた〟って、隈本が言ってたんだよな??」
架浦が、右隣の宮瑚に、視線を送ったのである。
この情報に関東司令官が〝ほぉう〟と興味を示す。
「でも、それは、〝くまりん”の勘違いだった〟つったじゃん。」
宮瑚に指摘され、
「おぉ、そうだったな。」
思い出したらしい架浦が、
「なぁ?」
「隊長と巡回したあとの隈本って、よそよそしくなってなかったか??」
新たに疑問を投げかけた。
「んー、……。」
「いちおー、本人に確かめてみたんだけど、なんにも教えてくれなかったんだよねぇ。」
「何があったんだろ?」
宮瑚が首を傾げたら、〝ふむ??〟と反応を示した関東司令官が、
「連中は、足並みが揃っていないのか…。」
そう呟いた流れで、
「総監派であれ、副総監派であれ、潜んでいるであろうが尻尾を出した場合は、まず、二人が頼りになるのだから、仲たがいせずに、日頃から協力し合っておいてくれよ。」
このように架浦&宮瑚を諭したのである。
それを受けて、
「了解っす。」
架浦と、
「はーい。」
宮瑚が、やや不服そうにしながらも応じたのであった……。
 
 

路肩に停めてある高級車の後部座席で、左側の窓を関東司令官が四割ほど開ける。
「いつ何時なんどき、いろんなことが巻き起こっても動じないように、各自、心がけておいてくれたまえ。」
こう伝えた関東司令官が、運転手に車を発進させた。
歩道で見送りつつ、
「ねぇ。」
「“しれぇーかん”と、ミッツ―て、どこか似てるよね。」
宮瑚が述べる。
「んん~?」
「ま、オレも、関東司令官と一緒で、ジェントルメン・・・・・・・だからな。」
「こう、全体的に漂う“大人の色気”つーの??」
「そういうとこも、お互いに共通した」と、機嫌よく喋る架浦に、
「いや、そーじゃなく。」
「ルックスが。」
宮瑚がツッコんだ。
「そうかぁ?」
ちょっとだけ眉をダンチ・・・にした架浦が、
「関東司令官も“ハーフ”らしいからな…。」
「どことなく印象が似ているんじゃないか??」
「もしかしたら、両方の先祖を辿っていくと、同じ人物に辿り着いたりして。」
お茶目に意見したのである。
それに対して、
「あぁー、なるほどねぇ。」
納得した感じの宮瑚だった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

処理中です...