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23.潔白
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「そうですね…。」
「では、筺さんと宮瑚さんには残っていただいて、四人で赴きましょう。」
「僕たちが一時間以内に戻って来なかった場合は、お二人で巡回してください。」
「急ですみませんが、シフトを変更するという事で、対応のほど、よろしくお願いします。」
沖奈朔任隊長の考えに、
「了解しました。」
筺健と、
「うん、任せて。」
宮瑚留梨花が、同意する。
「それでは……。」
〝スッ〟と起立して、
「行きましょうか。」
刑事らに声をかける沖奈であった。
外には、二台の“覆面パトカー”が停まっており、この側で運転手と思しき2人の刑事が待機していたのである。
「二名ずつで乗車してください。」
40代後半の担当責任者に促され、
「でしたら…、男性が前で、女性は後ろの車両に、乗るとしましょう。」
そう判断する沖奈隊長だった。
覆面パトカーは警察署に向かって走っている。
後部座席で、
「なんか、悪かったな、隊長。」
架浦聖徒が口を開く。
右隣に腰掛けている沖奈が、
「はい?」
首を傾げたところ、
「オレの所為で、十三番隊がギクシャクしちまったり、面倒な状況になってしまって。」
「いろいろと、すまねぇ。」
架浦が申し訳なさそうにした。
これに、〝あー〟と理解を示して、
「まぁ、架浦さんが仰ったように、全員の無実が証明できるのであれば、それに越したことはありませんので、構いませんよ。」
「ただし。」
「皆さんには、あとで、きちんと謝ってくださいね。」
沖奈が優しく微笑んだ……。
▼
署内の廊下では、数人の警察が、沖奈たちの到着を待ち受けていた。
「これより、それぞれ、“取調室”に入ってもらいます。」
責任者が伝えるなか、50代前半くらいであろう短髪で小太りの男性刑事が〝じぃ――ッ〟と沖奈を見ていたのである。
視線を感じて、
「何か??」
そう尋ねた沖奈に、
「あ、いや、どこかでお会いしたかと思ったのですが、どうやら、こちらの勘違いだったようで…、失礼。」
男が軽く会釈した。
このタイミングで、
「では、事情聴取を始めますので、各自、分かれてください。」
担当責任者が告げたのである。
〝通話履歴を確認させてもらいたい〟とのことで、四人は、スマホを警察に提供していた。
一室で、架浦の説明を聞いているのは、先ほど沖奈を観察していた男性である。
別の部屋では、緋島早梨衣が質問されていた。
他の室内で、鐶倖々徠副隊長も取り調べに応じている。
それらとは異なる部屋で、沖奈隊長と喋っているのは、責任者であった……。
▼
[H.H.S.O 東京組第十三番隊]の本拠地であるビルの前で、
「改めて、ご協力ありがとうございました。」
「また何かありましたら、お願いします。」
担当責任者が、お辞儀する。
これに対して、
「ええ、勿論です。」
沖奈が穏やかに答えた。
時刻はPM15:55あたりである。
4人が[事務室]に入るなり、
「お帰り!」
「どーだったぁ?!」
宮瑚が駆け寄ってきた。
「全員、疑いが晴れましたよ。」
沖奈が〝ニッコリ〟したところ、
「良かったぁー。」
宮瑚が〝ほっ〟としたのである。
その流れで、
「皆、すまなかったな。」
「この通りだ!!」
架浦が90度に頭を下げた。
「あーしは、いいけど…。」
「許されるかどうかは、サリーちゃん次第じゃない?」
冷たい目で述べた宮瑚に、
「ん??」
「なんで、アタシなんだ?」
緋島が訊ねる。
「だって、サリーちゃん、相手が泣くまで〝ボッコボコ〟にしそうじゃん??」
こう返した宮瑚に続き、
「いや、緋島は、泣いても止めないだろう。」
筺が意見した。
「なッ!?」
「筺さんまでもが……、人をなんだと?」
「そんなに非道じゃないっスよ、アタシは。」
〝はぁ――ッ〟と息を吐きつつ、右手で後頭部を掻いた緋島が、
「しゃーねぇから、手打ちにしてやんよ。」
「ただ…、もう二度と仲間を売るようなマネすんじゃねぇぞ!」
架浦に睨みを利かす。
それに、
「ああ、約束する。」
と、架浦が頷いた。
「にしても……、結局、誰が、“きせんぐみ”とやらにチクったんだろうね??」
腕を組んで〝ん~?〟と首を捻る宮瑚に、
「考えても仕方ないんじゃないかしら??」
「私達には、もう、今のところ出来る事は何もないわよ。」
「それよりも。」
「切り替えて、いつもの職務に集中しましょう。」
鐶副隊長が述べる。
これによって、
「正論ですね。」
「それでは、もともとの予定どおり、十六時になりましたら、鐶さんと筺さんでパトロールを行なってください。」
そう締め括る沖奈隊長だった…。
▼
[歌舞伎町]を廻りながら、
「とんだ災難でしたね。」
筺が苦笑いする。
不意に話しかけられた鐶は、
「え?!」
「あ、はい。」
「いえ、そんなこと、ありません。」
アタフタしていた。
「何かありましたか?」
筺に覗き込まれ、〝ドキンッ!!〟とした鐶が、
「いえいえいえいえ、大丈夫でふ!」
おもいっきり噛んでしまい、顔を赤くする。
数日前に、[2Fの喫茶店]で宮瑚が開催した女子会による“恋バナ”からこのかた、鐶は、より一層に筺を意識するようになっていたのだ。
鐶の気持ちなど知る由もない筺は、ただただ不思議がっている。
これを誤魔化そうとして、
「筺さんは、どのような女性が、お好みですか??」
咄嗟に質問した鐶ではあったが、
(内容を間違えたぁあーッ!!)
すぐに後悔したようだ。
何故ならば、筺の返答次第では、マジヘコミし兼ねないからである。
逆に、筺は、一瞬〝キョトン〟としたものの、
「んー、そうですねぇ……。」
「割と、小柄な方がタイプです。」
「鐶副隊長みたいな。」
「ま、俺のようなガラが悪いヤツに言われても、迷惑でしかないでしょうが。」
〝ニコニコ〟しながら伝えたのであった。
筺にしてみれば、単なる社交辞令にすぎないのかもしれない。
いや、きっと、その可能性が高そうだ。
おそらく、なんだか悩んでいる様子の鐶を、本人なりに励ましたつもりなのだろう。
鈍感かつ不器用であり、基本的には優しい、筺らしさである。
これらを頭では分かっていながらも、速くなる胸の鼓動を静められそうにない鐶は、俯き加減で、
「迷惑なんかじゃありませんよ。」
「寧ろ、嬉しい限りです。」
そっと呟く。
しかし、あまりにも小声だったので、筺の耳には届いていなかった―。
「では、筺さんと宮瑚さんには残っていただいて、四人で赴きましょう。」
「僕たちが一時間以内に戻って来なかった場合は、お二人で巡回してください。」
「急ですみませんが、シフトを変更するという事で、対応のほど、よろしくお願いします。」
沖奈朔任隊長の考えに、
「了解しました。」
筺健と、
「うん、任せて。」
宮瑚留梨花が、同意する。
「それでは……。」
〝スッ〟と起立して、
「行きましょうか。」
刑事らに声をかける沖奈であった。
外には、二台の“覆面パトカー”が停まっており、この側で運転手と思しき2人の刑事が待機していたのである。
「二名ずつで乗車してください。」
40代後半の担当責任者に促され、
「でしたら…、男性が前で、女性は後ろの車両に、乗るとしましょう。」
そう判断する沖奈隊長だった。
覆面パトカーは警察署に向かって走っている。
後部座席で、
「なんか、悪かったな、隊長。」
架浦聖徒が口を開く。
右隣に腰掛けている沖奈が、
「はい?」
首を傾げたところ、
「オレの所為で、十三番隊がギクシャクしちまったり、面倒な状況になってしまって。」
「いろいろと、すまねぇ。」
架浦が申し訳なさそうにした。
これに、〝あー〟と理解を示して、
「まぁ、架浦さんが仰ったように、全員の無実が証明できるのであれば、それに越したことはありませんので、構いませんよ。」
「ただし。」
「皆さんには、あとで、きちんと謝ってくださいね。」
沖奈が優しく微笑んだ……。
▼
署内の廊下では、数人の警察が、沖奈たちの到着を待ち受けていた。
「これより、それぞれ、“取調室”に入ってもらいます。」
責任者が伝えるなか、50代前半くらいであろう短髪で小太りの男性刑事が〝じぃ――ッ〟と沖奈を見ていたのである。
視線を感じて、
「何か??」
そう尋ねた沖奈に、
「あ、いや、どこかでお会いしたかと思ったのですが、どうやら、こちらの勘違いだったようで…、失礼。」
男が軽く会釈した。
このタイミングで、
「では、事情聴取を始めますので、各自、分かれてください。」
担当責任者が告げたのである。
〝通話履歴を確認させてもらいたい〟とのことで、四人は、スマホを警察に提供していた。
一室で、架浦の説明を聞いているのは、先ほど沖奈を観察していた男性である。
別の部屋では、緋島早梨衣が質問されていた。
他の室内で、鐶倖々徠副隊長も取り調べに応じている。
それらとは異なる部屋で、沖奈隊長と喋っているのは、責任者であった……。
▼
[H.H.S.O 東京組第十三番隊]の本拠地であるビルの前で、
「改めて、ご協力ありがとうございました。」
「また何かありましたら、お願いします。」
担当責任者が、お辞儀する。
これに対して、
「ええ、勿論です。」
沖奈が穏やかに答えた。
時刻はPM15:55あたりである。
4人が[事務室]に入るなり、
「お帰り!」
「どーだったぁ?!」
宮瑚が駆け寄ってきた。
「全員、疑いが晴れましたよ。」
沖奈が〝ニッコリ〟したところ、
「良かったぁー。」
宮瑚が〝ほっ〟としたのである。
その流れで、
「皆、すまなかったな。」
「この通りだ!!」
架浦が90度に頭を下げた。
「あーしは、いいけど…。」
「許されるかどうかは、サリーちゃん次第じゃない?」
冷たい目で述べた宮瑚に、
「ん??」
「なんで、アタシなんだ?」
緋島が訊ねる。
「だって、サリーちゃん、相手が泣くまで〝ボッコボコ〟にしそうじゃん??」
こう返した宮瑚に続き、
「いや、緋島は、泣いても止めないだろう。」
筺が意見した。
「なッ!?」
「筺さんまでもが……、人をなんだと?」
「そんなに非道じゃないっスよ、アタシは。」
〝はぁ――ッ〟と息を吐きつつ、右手で後頭部を掻いた緋島が、
「しゃーねぇから、手打ちにしてやんよ。」
「ただ…、もう二度と仲間を売るようなマネすんじゃねぇぞ!」
架浦に睨みを利かす。
それに、
「ああ、約束する。」
と、架浦が頷いた。
「にしても……、結局、誰が、“きせんぐみ”とやらにチクったんだろうね??」
腕を組んで〝ん~?〟と首を捻る宮瑚に、
「考えても仕方ないんじゃないかしら??」
「私達には、もう、今のところ出来る事は何もないわよ。」
「それよりも。」
「切り替えて、いつもの職務に集中しましょう。」
鐶副隊長が述べる。
これによって、
「正論ですね。」
「それでは、もともとの予定どおり、十六時になりましたら、鐶さんと筺さんでパトロールを行なってください。」
そう締め括る沖奈隊長だった…。
▼
[歌舞伎町]を廻りながら、
「とんだ災難でしたね。」
筺が苦笑いする。
不意に話しかけられた鐶は、
「え?!」
「あ、はい。」
「いえ、そんなこと、ありません。」
アタフタしていた。
「何かありましたか?」
筺に覗き込まれ、〝ドキンッ!!〟とした鐶が、
「いえいえいえいえ、大丈夫でふ!」
おもいっきり噛んでしまい、顔を赤くする。
数日前に、[2Fの喫茶店]で宮瑚が開催した女子会による“恋バナ”からこのかた、鐶は、より一層に筺を意識するようになっていたのだ。
鐶の気持ちなど知る由もない筺は、ただただ不思議がっている。
これを誤魔化そうとして、
「筺さんは、どのような女性が、お好みですか??」
咄嗟に質問した鐶ではあったが、
(内容を間違えたぁあーッ!!)
すぐに後悔したようだ。
何故ならば、筺の返答次第では、マジヘコミし兼ねないからである。
逆に、筺は、一瞬〝キョトン〟としたものの、
「んー、そうですねぇ……。」
「割と、小柄な方がタイプです。」
「鐶副隊長みたいな。」
「ま、俺のようなガラが悪いヤツに言われても、迷惑でしかないでしょうが。」
〝ニコニコ〟しながら伝えたのであった。
筺にしてみれば、単なる社交辞令にすぎないのかもしれない。
いや、きっと、その可能性が高そうだ。
おそらく、なんだか悩んでいる様子の鐶を、本人なりに励ましたつもりなのだろう。
鈍感かつ不器用であり、基本的には優しい、筺らしさである。
これらを頭では分かっていながらも、速くなる胸の鼓動を静められそうにない鐶は、俯き加減で、
「迷惑なんかじゃありませんよ。」
「寧ろ、嬉しい限りです。」
そっと呟く。
しかし、あまりにも小声だったので、筺の耳には届いていなかった―。
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