15 / 60
15.小難
しおりを挟む
沖奈朔任隊長の右隣に並んで歩く隈本一帆は、今まさに緊張が加速している。
それを和らげるために〝何か喋らなければ〟と思った一帆が、
「あの…、隊長って、能力を発動する際に、もともと“アクション”していらっしゃいましたっけ?」
「三年前に、お見かけした際には、そうではなかった気がしたのですが……。」
「不躾で、すみません。」
「あの時、私は〝いっぱい いっぱい〟でしたので、思い出せない部分もありまして…。」
このように伺ったら、
「あー、〝指を鳴らす〟といった行為ですね。」
「隈本さんであれば〝拳を合わせる〟みたいな……。」
「まぁ、確かに、人間はもとより、知能が高い妖魔は、そのようなアクションを取らなくてもスキルを扱える者が存在していますが…、僕には無理ですよ。」
「隈本さんのなかで、どなたかと僕が“ごちゃ混ぜ”になっているのかもしれませんね。」
沖奈が微笑んで返したのだった。
どこか本音ではないような感じがして、少なからず腑に落ちなかったものの、沖奈の屈託のない表情に一帆が〝キュン♡〟としたところで、
「待て、おらぁあッ!!」
正面より物騒な声が聞こえてきた。
見れば、1人の素朴そうな男性が、5人のチンピラに追われている。
走って逃げている男は、20代半ばあたりだろう。
その人物が、沖奈と一帆を認識するなり、
「助けて!」
と、頼んだのである。
背丈が160㎝ぐらいの男性が、二人の背後に回って、隠れるように身を低くした。
沖奈や一帆の眼前で止まった集団は、30代~50代といった印象で、スーツや柄シャツと様々な恰好をしている。
なかには、サングラスを掛けている者もいた。
5人組のリーダー格と思しき50代前半の男が、
「……、服装からして、“H.H.S.O”か。」
値踏みするかのような目つきで呟く。
「ええ、そうですが…。」
「貴方がたは??」
質問した沖奈に、40代半ばのチンピラが、
「あん!?」
「テメェには関係ねぇだろッ!!」
「そんなこたぁどーでもいいから、ソイツをこっちに寄こせ!」
このように凄んだのである。
「まぁ、待て。」
「そうムキになるな。」
リーダーが舎弟を止めた流れで、
「よぉ、兄ちゃん。」
「おとなしく、そのガキを渡してくれや。」
「じゃねぇと、どうなっても知らんぞ?」
睨みを利かせてきた。
それに対して、軽く〝はぁ〟と相づちを打った沖奈が、
「こういうのは、本来、警察の方々の仕事なので、あまり首を突っ込まないようにしているのですが……。」
「この人の身に危険が及びそうなので、一旦、こちらで保護させていただきます。」
穏やかな顔つきで毅然とする。
「つまり??」
眉を段違いにしたリーダー格に、
「そちらの要望は“お断り”ということですよ。」
沖奈が〝ニッコリ〟しながら伝えた。
これによって、
「舐めやがって…、上等だ!!」
激昂したリーダーが、
「おい!」
別の弟分に合図を送る。
「押忍。」
そう応じたのは、背丈が170㎝くらいの“黒髪オールバック”だ。
〝白を基調に、金の模様が沢山あしらわれている、セットアップジャージ〟を着用していた。
こういったファッションの男性が、左手で、自分の右手首を握る。
その状態で、右の掌を〝スッ〟と沖奈に向けるなり、
「発動。」
能力を使う。
胸元に〝ドンッ!!〟と何かが当たった沖奈が、
「ぐ、うッ?!」
右膝を地に着いた。
どのような現象なのか理解できなさそうにしている沖奈と一帆に、
「俺のスキルは、“空気砲”だ。」
「見えないぶん厄介だろ?」
「このまま二人ともボッコボコにしてやんよ!」
チンピラがドヤりながら告げる。
しかし、苦しそうにしている沖奈の様子に〝プツン〟とキレて、
「発動!!」
両の拳を〝ガツッ!〟とぶつけた一帆に、かなりの速度で、懐に入られた“黒髪オールバック”が、右ストレートを〝ズバァンッ!!〟と左頬に炸裂させられたところ、
「ぶッ!?」
口から“数本の歯“と“血”を吹き出しつつ、全身が〝ギュルン!〟と回転するのと共に4M程ふっ飛ばされ、道端で仰向けになった。
電光石火の一撃に、他の連中が、
「は??!」
揃ってフリーズする。
この集団に、一帆がパンチやキックを次々にヒットさせていく。
それによって、肋骨や脚などが折れたらしいチンピラどもが、うずくまったり、倒れていった。
こういった事態が起きた15Mぐらい先に、ブラックのハイエースが路駐してある。
その側で喫煙していた“金髪の男性”が、焦って車に乗り込もうとしていた。
おそらく、一味の“運転手”なのだろう。
既に息を整え立ち上がっている沖奈が、それを視界に捉え、
「発動。」
右の指を〝パチン〟と鳴らす。
次の瞬間、沖奈の至近距離に[テレポート]させられた金髪が、
「へ?!」
目を丸くしたのである。
その右肩に、一帆の左手刀をくらった男が、
「ぃぎッ!!?」
痛がりつつ、両膝を屈した。
ちなみに、一帆が能力を扱ってから、ここまで、およそ9秒である。
「隊長!!」
「お怪我はありませんか?!」
不安そうな一帆に、
「ええ、大丈夫ですよ。」
「心配してくださって、ありがとうございます。」
沖奈が〝ニコニコ〟しながら答えた。
これに、一帆が〝ほっ〟とする。
「さて……。」
「警察を呼びますが、いいですね?」
沖奈に確認され、
「は、はい。」
助けを求めた男性が、素直に従うのであった―。
それを和らげるために〝何か喋らなければ〟と思った一帆が、
「あの…、隊長って、能力を発動する際に、もともと“アクション”していらっしゃいましたっけ?」
「三年前に、お見かけした際には、そうではなかった気がしたのですが……。」
「不躾で、すみません。」
「あの時、私は〝いっぱい いっぱい〟でしたので、思い出せない部分もありまして…。」
このように伺ったら、
「あー、〝指を鳴らす〟といった行為ですね。」
「隈本さんであれば〝拳を合わせる〟みたいな……。」
「まぁ、確かに、人間はもとより、知能が高い妖魔は、そのようなアクションを取らなくてもスキルを扱える者が存在していますが…、僕には無理ですよ。」
「隈本さんのなかで、どなたかと僕が“ごちゃ混ぜ”になっているのかもしれませんね。」
沖奈が微笑んで返したのだった。
どこか本音ではないような感じがして、少なからず腑に落ちなかったものの、沖奈の屈託のない表情に一帆が〝キュン♡〟としたところで、
「待て、おらぁあッ!!」
正面より物騒な声が聞こえてきた。
見れば、1人の素朴そうな男性が、5人のチンピラに追われている。
走って逃げている男は、20代半ばあたりだろう。
その人物が、沖奈と一帆を認識するなり、
「助けて!」
と、頼んだのである。
背丈が160㎝ぐらいの男性が、二人の背後に回って、隠れるように身を低くした。
沖奈や一帆の眼前で止まった集団は、30代~50代といった印象で、スーツや柄シャツと様々な恰好をしている。
なかには、サングラスを掛けている者もいた。
5人組のリーダー格と思しき50代前半の男が、
「……、服装からして、“H.H.S.O”か。」
値踏みするかのような目つきで呟く。
「ええ、そうですが…。」
「貴方がたは??」
質問した沖奈に、40代半ばのチンピラが、
「あん!?」
「テメェには関係ねぇだろッ!!」
「そんなこたぁどーでもいいから、ソイツをこっちに寄こせ!」
このように凄んだのである。
「まぁ、待て。」
「そうムキになるな。」
リーダーが舎弟を止めた流れで、
「よぉ、兄ちゃん。」
「おとなしく、そのガキを渡してくれや。」
「じゃねぇと、どうなっても知らんぞ?」
睨みを利かせてきた。
それに対して、軽く〝はぁ〟と相づちを打った沖奈が、
「こういうのは、本来、警察の方々の仕事なので、あまり首を突っ込まないようにしているのですが……。」
「この人の身に危険が及びそうなので、一旦、こちらで保護させていただきます。」
穏やかな顔つきで毅然とする。
「つまり??」
眉を段違いにしたリーダー格に、
「そちらの要望は“お断り”ということですよ。」
沖奈が〝ニッコリ〟しながら伝えた。
これによって、
「舐めやがって…、上等だ!!」
激昂したリーダーが、
「おい!」
別の弟分に合図を送る。
「押忍。」
そう応じたのは、背丈が170㎝くらいの“黒髪オールバック”だ。
〝白を基調に、金の模様が沢山あしらわれている、セットアップジャージ〟を着用していた。
こういったファッションの男性が、左手で、自分の右手首を握る。
その状態で、右の掌を〝スッ〟と沖奈に向けるなり、
「発動。」
能力を使う。
胸元に〝ドンッ!!〟と何かが当たった沖奈が、
「ぐ、うッ?!」
右膝を地に着いた。
どのような現象なのか理解できなさそうにしている沖奈と一帆に、
「俺のスキルは、“空気砲”だ。」
「見えないぶん厄介だろ?」
「このまま二人ともボッコボコにしてやんよ!」
チンピラがドヤりながら告げる。
しかし、苦しそうにしている沖奈の様子に〝プツン〟とキレて、
「発動!!」
両の拳を〝ガツッ!〟とぶつけた一帆に、かなりの速度で、懐に入られた“黒髪オールバック”が、右ストレートを〝ズバァンッ!!〟と左頬に炸裂させられたところ、
「ぶッ!?」
口から“数本の歯“と“血”を吹き出しつつ、全身が〝ギュルン!〟と回転するのと共に4M程ふっ飛ばされ、道端で仰向けになった。
電光石火の一撃に、他の連中が、
「は??!」
揃ってフリーズする。
この集団に、一帆がパンチやキックを次々にヒットさせていく。
それによって、肋骨や脚などが折れたらしいチンピラどもが、うずくまったり、倒れていった。
こういった事態が起きた15Mぐらい先に、ブラックのハイエースが路駐してある。
その側で喫煙していた“金髪の男性”が、焦って車に乗り込もうとしていた。
おそらく、一味の“運転手”なのだろう。
既に息を整え立ち上がっている沖奈が、それを視界に捉え、
「発動。」
右の指を〝パチン〟と鳴らす。
次の瞬間、沖奈の至近距離に[テレポート]させられた金髪が、
「へ?!」
目を丸くしたのである。
その右肩に、一帆の左手刀をくらった男が、
「ぃぎッ!!?」
痛がりつつ、両膝を屈した。
ちなみに、一帆が能力を扱ってから、ここまで、およそ9秒である。
「隊長!!」
「お怪我はありませんか?!」
不安そうな一帆に、
「ええ、大丈夫ですよ。」
「心配してくださって、ありがとうございます。」
沖奈が〝ニコニコ〟しながら答えた。
これに、一帆が〝ほっ〟とする。
「さて……。」
「警察を呼びますが、いいですね?」
沖奈に確認され、
「は、はい。」
助けを求めた男性が、素直に従うのであった―。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説


W職業持ちの異世界スローライフ
Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。
目が覚めるとそこは魂の世界だった。
橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。
転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。

異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。


チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる