上 下
9 / 60

9.バレバレ

しおりを挟む
翌日――。
緋島早梨衣ひしまさりい意川敏矢ひかわとしやは、シフト上、休みであった。
AM09:00に、鐶倖々徠たまきささら副隊長&架浦聖徒みつうらせいんとがパトロールに出掛けたのである。
 
約10分後に筺健かごまさるが、
「すみません、隊長。」
「今日、寝坊してしまって、朝から何も食べていないため、腹が減りすぎて仕事に集中できないので、下にパンでも買いに行っていいでしょうか?」
このように伺い、
「ええ、構いませんよ。」
沖奈朔任おきなさくとが〝ニッコリ〟しながら許可した。
 
また少しだけ時が経ち、〝スッ〟と立ち上がった沖奈が、一枚の用紙を片手に、扉へと歩きつつ、
「筺さんに用事があるので、ちょっとだけ外します。」
「おそらく、今頃は“休憩室”に居らっしゃるでしょうから。」
「お二人も適当に休んでくださいね。」
笑顔で伝え、
「はぁ~い。」
宮瑚留梨花みやこるりかと、
「はい、了解しました。」
隈本一帆くまもとかずほが、それぞれにディスク席から答えたのである。
ドアから出ていく朔任を、一帆が目で追う。
〝ピン!!〟ときた宮瑚に、
「くまりぃ~ん。」
呼ばれた一帆が、正面を向き直したところ、
「もしかして…、“さっくんたいちょー”にしちゃってるぅ~?」
こう尋ねられたのだった。
その指摘に〝ボッ!〟と顔を真っ赤にした一帆が、自身の机に〝ズドンッ!!〟と頭突きをかます。
予想していなかった一帆のリアクションに、
「いっ?!」
留梨花は引いてしまったようだ。
顔を上げた一帆が、
「失礼しました。」
「虫がいたものでして。」
何事もなかったかのように述べる。
「いや、くまりん、おでこに紙が貼り付いちゃってるよ。」
宮瑚に教えられ、これ・・を剥がした一帆が、
「コピーしますので。」
起立して、機材が置かれている場所へと足を運ぶ。
その最中に、
「そっかぁ~。」
「くまりんは、“さっくんたいちょーLOVEラブ”なのかぁ。」
留梨花に再び言われた一帆が、仰向けで〝バタン!〟と倒れた。
「ちょっ、くまりん!?」
「大丈夫?!」
ビックリして席から立った宮瑚に対して、平然と起きた一帆が、
「バナナの皮に滑ってしまったようで、お騒がせしました。」
ポーカーフェイスで告げる。
「ん??」
「そんなもの、落ちてなかったみたいだけど?」
留梨花が首を傾げ、
「何処かに飛んでいったようですね。」
一帆が視線を逸らす。
「いやいやぁ~、最初っから無かったっしょー。」
〝ニヤニヤ〟する宮瑚の方を見た一帆が、
「ありましたよ。」
眉ひとつ動かさず返した。
宮瑚が改めて「いや」と否定しようとしたら、
「あったんです。」
くい気味の一帆に打ち消されてしまったのである。
更に、一帆による無言の圧を受けた留梨花は、
「あー、うん。」
「だよねぇ~。」
耐えきれず屈してしまうのであった。
 
 
[休憩室]にて。
沖奈隊長より渡された報告書をチェックしていた健が、
「確かに、書き間違えていましたね。」
「あとで修正しておきます。」
こう述べる。
「ええ、よろしくお願いします。」
朔任が微笑んだタイミングで、〝ビィ――ッ!! ビィ――ッ!! ビィ――ッ!!ビィ――ッ!!〟という警報音が鳴り響き、
『およそ5分後に“時空のひずみ”が発生し、妖魔が出現します。』
『中規模となりますので、近隣の方は避難してください。』
『予測される場所は――。』
“機械的な女性の声”での放送がなされていく。
「すぐそこみたいですね。」
筺が険しい表情となり、
「ええ、鐶さんと架浦さんは離れた位置にいるでしょうから、僕たちが戦いましょう。」
沖奈が冷静に起立した……。
 
 

ビルから東へ徒歩3分ぐらいの所に、四人が訪れている。
道路では、人間やアンドロイドの警察が、交通整理していた。
自身の腕時計を確認しつつ、
「そろそろですね。」
朔任が知らせる。
その数秒後に、10個の【時空の歪】が路上に現れた。
これら・・・から〝ゾロゾロ〟と出てきたのは、“一本角の猿”である。
どの妖魔も、背丈が90㎝前後で、僧侶の袈裟けさみたいな服装に、薙刀なぎなたを所持しているようだ。
計200体が登場したところで、【時空の歪】が消えた。
30Mほど西に離れた地点で、
「“猿鬼さるおに”ですか…。」
「なかなか厄介ですね。」
朔任が目を細めている。
次の瞬間、敵どもが獲物・・へと走りだした。
連中は、猿なだけあって、割と速い。
「宮瑚さん!」
沖奈に名を呼ばれて、
「りょ!!」
簡略的に応じたギャルが、左手で自分の顎に触れながら、
「はつどぉー!」
そう唱えるなり、猿鬼らが霧に包まれたのである。
すると、敵たちが、途端に同士討ちを始めたのだった。
「え?」
不思議がる一帆を余所よそに、自身の耳たぶを右手でつまみ、
「発動。」
呟いた健が、〝すぅ――ッ〟と息を吸った流れで、口から〝ゴォォォォ!!〟と[火炎]を吐いたのである。
ほむらによって焼かれた妖魔の5匹が黒焦げになり、灰と化す。
このタイミングで、我に返った鬼猿たちが、再び駆け始めた。
しかし、
「はつどぉうッ!」
宮瑚による二度目の霧にて、敵の集団が何かに怯えたかの如く〝キィッ!! キィッ!! キィッ!! キィッ!!〟と慌てふためきだしたのである。
「くまりん!」
「あーしのは〝いろんな幻覚を5秒だけ見せる〟てスキルだよ!!」
「内容までは、あーしには分からないけど!」
留梨花が急ぎ説明するなか、またしても妖魔らが正気に戻ったみたいだ。
「成程です。」
理解を示し、
「発動。」
両拳を〝コツン〟と合わせた一帆が、かなりのスピードでダッシュして、敵の群れを蹴散らしていく。
「おおー!!」
「すっご……。」
話しに聞いていたとはいえ、一帆の戦闘力の高さに、宮瑚が驚く。
その近くでは、腰からピストルを抜いた朔任が射撃を行い、筺が炎を放っていた―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...