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第1章 恋は迎え火とともに
あなたは、誰?
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丸くて明るい月が煌々と夜道を照らす夜、健太郎と奈緒は、並んで歩いた。
二人のシルエットが、月明かりに照らされた路面にぼんやりと幻想的に映し出された。
健太郎は、スマートフォンで幸次郎へのメッセージを送った。
その隣で、奈緒はひたすらスマートフォンで文字を打つ健太郎の横顔をまじまじと見つめていた。
丸くて明るい月が煌々と夜道を照らす夜、健太郎と奈緒は、並んで歩いた。
二人のシルエットが、月明かりに照らされた路面にぼんやりと幻想的に映し出された。
健太郎は、スマートフォンで幸次郎へのメッセージを送った。
その隣で、奈緒はひたすらスマートフォンで文字を打つ健太郎の横顔をまじまじと見つめていた
「どうしたの?そんな興味深そうな顔で俺のスマートフォン覗き込んで」
「すごく大きな携帯電話だなあって思って」
「携帯電話?まあ、確かに携帯電話だけど。これ1つにいろんな機能が付いてるんだよね。というか、まさか、スマートフォンを知らないの?」
「何それ?」
奈緒の反応に、健太郎は思わず固まってしまった。
まさかこの子、スマートフォンを、知らないのか?
「君は、携帯電話は持っていないの?」
「持ってるよ。これ」
そういうと、奈緒はポケットから、オレンジ色の折り畳み式の携帯電話を見せてくれた。
「え?これ、ガラケー?まだ、使ってんの?」
「ガラケー?何言ってるの?携帯電話でしょ、これって」
「まあ、携帯電話に違いはないけど」
健太郎は、奈緒から返ってきた言葉を聞き、ますます回答に困ってしまった。
「ま、まあいいや。これ、便利だよ。触ってみる?」
そういうと、健太郎は、奈緒にスマートフォンを渡した。
奈緒は、手にしたスマートフォンを真上から、そして真横からじっと眺めた。
そして、画面に表示されたアプリのアイコンを、片っ端から触り始めた。
「あ、これはダメだよ。なんで触っちゃうの?」
奈緒は、健太郎が仕事や旅行など移動中などに使っている、アダルトゲームのアプリのアイコンを誤って触ってしまったようである。
「嫌だあ、何これ。裸になった女の子がいやらしい顔で見つめてる~」
「や、やめて~!」
健太郎は、恥ずかしさのあまり、奈緒の手からスマートフォンを奪い取った。
「ええ?何か面白そうじゃん。どうしてダメなの?」
「これは大人の人が楽しむゲームだから。若い女の子が見ちゃダメ」
「ふ~ん。というか、健太郎さんって、真面目そうに見えて、結構スケベなのね」
奈緒は、軽蔑したような表情で健太郎の顔を下から見上げた。
「うっ……」
「まあいいや。面白いね。携帯電話なのに、スマートフォンっていうんだ。欧米か!なんてね」
奈緒の発した言葉に、健太郎はビックリした。
「お、欧米か、って言ったよ、ね?」
「うん。お笑いコンビのネタだよ。知らないの?」
「知ってるよ。でも、流行ったのはもう10年以上前だよ」
「ええ?そ、そうなの?」
「そのほか、どんな言葉知ってる?」
「そんなの関係ねえ!とか~、グ~とか、ガッカリだよ!とか。」
「あははは…懐かしいね。全部」
健太郎は、苦笑いしつつも、この子はこんなに若いのに、何でこんな古いネタばかり好きなんだろうと訝しがった。
夜空を見上げると、綺麗に澄み渡った空にはたくさんの星が瞬いていた。
都会で見る夜空は、ぼんやりとして星がほとんど見えないので、自分の生まれ育った町の夜空の美しさに、今更ながら驚嘆した。
「きれいだよなあ夜空。俺、今は東京に住んでるから、こんな空、なかなか見ることができないんだよな」
「そうなんだ?今、東京に住んでるの?」
「うん。大学入学の時からずっとあっちに住んでる」
「私は、ずっと、ここにいるよ」
「そうなんだ。この中川町でずっと暮らしてるの?」
「一応、ね」
「い、一応?」
驚いた健太郎をよそに、奈緒は、クスっと笑うと、フンフンと鼻歌を歌い始めた。
「あれ?今、奈緒さんが鼻歌で歌ってた曲って、どっかで聞いたことあるなあ。何だっけ?」
「知らない?『拝啓・15の君へ』」
「うわあ~な、懐かしい!」
「この曲、すごく好きなの。歌詞もすごくいいし」
奈緒は、鼻歌を歌い終わると、再びクスっと笑って、挑発するかのように、健太郎の顔をじっと覗き込んだ。
「な、なんで急に俺の顔をじっと?」
「どっかで、見たことがあるなあって思って」
「え?俺のこと?」
「うん。どこかで、ね。はっきりとは、思い出せないんだけど」
「まあ、こんな小さい町だから、どっかでは会ってるかな。でもさ、今は年2回、盆と正月くらいしか帰ってないんだけど」
健太郎は、奈緒が発する言葉に平常を装い答えながらも、いつ、どこで自分のことを見かけたのだろうか、不思議な気分になった。
「私の家、そこなんだ。ここまで一緒に歩いてくれて、ありがとう」
そういうと奈緒は、チャーミングな笑みを浮かべて、手を振り、石垣に囲まれた細い路地へ走っていった。
「あれ?奈緒さん?」
気が付くと健太郎は、自分の家の近くまで来ていた。
奈緒との会話にしばしあっけにとられていた健太郎であったが、現実に引き戻され、街灯もなく真っ暗の路地を、自宅に向かってポケットに手を突っ込みながらとぼとぼと歩いていった。
「奈緒さん…俺、どっかで見たような気がするんだけどな」
健太郎は、奈緒の顔を思い出す中で、ふと、彼女の顔をどこかで見た記憶がよみがえってきた。
大きな特徴は無いが、長い髪、細長い顔、筋の通った鼻、白い肌、どこか人懐っこい表情。そして、この田舎では物珍しいスラリとした長身。
ただ、その子の名前が、「奈緒」だったかどうかは、記憶が定かではない。
二人のシルエットが、月明かりに照らされた路面にぼんやりと幻想的に映し出された。
健太郎は、スマートフォンで幸次郎へのメッセージを送った。
その隣で、奈緒はひたすらスマートフォンで文字を打つ健太郎の横顔をまじまじと見つめていた。
丸くて明るい月が煌々と夜道を照らす夜、健太郎と奈緒は、並んで歩いた。
二人のシルエットが、月明かりに照らされた路面にぼんやりと幻想的に映し出された。
健太郎は、スマートフォンで幸次郎へのメッセージを送った。
その隣で、奈緒はひたすらスマートフォンで文字を打つ健太郎の横顔をまじまじと見つめていた
「どうしたの?そんな興味深そうな顔で俺のスマートフォン覗き込んで」
「すごく大きな携帯電話だなあって思って」
「携帯電話?まあ、確かに携帯電話だけど。これ1つにいろんな機能が付いてるんだよね。というか、まさか、スマートフォンを知らないの?」
「何それ?」
奈緒の反応に、健太郎は思わず固まってしまった。
まさかこの子、スマートフォンを、知らないのか?
「君は、携帯電話は持っていないの?」
「持ってるよ。これ」
そういうと、奈緒はポケットから、オレンジ色の折り畳み式の携帯電話を見せてくれた。
「え?これ、ガラケー?まだ、使ってんの?」
「ガラケー?何言ってるの?携帯電話でしょ、これって」
「まあ、携帯電話に違いはないけど」
健太郎は、奈緒から返ってきた言葉を聞き、ますます回答に困ってしまった。
「ま、まあいいや。これ、便利だよ。触ってみる?」
そういうと、健太郎は、奈緒にスマートフォンを渡した。
奈緒は、手にしたスマートフォンを真上から、そして真横からじっと眺めた。
そして、画面に表示されたアプリのアイコンを、片っ端から触り始めた。
「あ、これはダメだよ。なんで触っちゃうの?」
奈緒は、健太郎が仕事や旅行など移動中などに使っている、アダルトゲームのアプリのアイコンを誤って触ってしまったようである。
「嫌だあ、何これ。裸になった女の子がいやらしい顔で見つめてる~」
「や、やめて~!」
健太郎は、恥ずかしさのあまり、奈緒の手からスマートフォンを奪い取った。
「ええ?何か面白そうじゃん。どうしてダメなの?」
「これは大人の人が楽しむゲームだから。若い女の子が見ちゃダメ」
「ふ~ん。というか、健太郎さんって、真面目そうに見えて、結構スケベなのね」
奈緒は、軽蔑したような表情で健太郎の顔を下から見上げた。
「うっ……」
「まあいいや。面白いね。携帯電話なのに、スマートフォンっていうんだ。欧米か!なんてね」
奈緒の発した言葉に、健太郎はビックリした。
「お、欧米か、って言ったよ、ね?」
「うん。お笑いコンビのネタだよ。知らないの?」
「知ってるよ。でも、流行ったのはもう10年以上前だよ」
「ええ?そ、そうなの?」
「そのほか、どんな言葉知ってる?」
「そんなの関係ねえ!とか~、グ~とか、ガッカリだよ!とか。」
「あははは…懐かしいね。全部」
健太郎は、苦笑いしつつも、この子はこんなに若いのに、何でこんな古いネタばかり好きなんだろうと訝しがった。
夜空を見上げると、綺麗に澄み渡った空にはたくさんの星が瞬いていた。
都会で見る夜空は、ぼんやりとして星がほとんど見えないので、自分の生まれ育った町の夜空の美しさに、今更ながら驚嘆した。
「きれいだよなあ夜空。俺、今は東京に住んでるから、こんな空、なかなか見ることができないんだよな」
「そうなんだ?今、東京に住んでるの?」
「うん。大学入学の時からずっとあっちに住んでる」
「私は、ずっと、ここにいるよ」
「そうなんだ。この中川町でずっと暮らしてるの?」
「一応、ね」
「い、一応?」
驚いた健太郎をよそに、奈緒は、クスっと笑うと、フンフンと鼻歌を歌い始めた。
「あれ?今、奈緒さんが鼻歌で歌ってた曲って、どっかで聞いたことあるなあ。何だっけ?」
「知らない?『拝啓・15の君へ』」
「うわあ~な、懐かしい!」
「この曲、すごく好きなの。歌詞もすごくいいし」
奈緒は、鼻歌を歌い終わると、再びクスっと笑って、挑発するかのように、健太郎の顔をじっと覗き込んだ。
「な、なんで急に俺の顔をじっと?」
「どっかで、見たことがあるなあって思って」
「え?俺のこと?」
「うん。どこかで、ね。はっきりとは、思い出せないんだけど」
「まあ、こんな小さい町だから、どっかでは会ってるかな。でもさ、今は年2回、盆と正月くらいしか帰ってないんだけど」
健太郎は、奈緒が発する言葉に平常を装い答えながらも、いつ、どこで自分のことを見かけたのだろうか、不思議な気分になった。
「私の家、そこなんだ。ここまで一緒に歩いてくれて、ありがとう」
そういうと奈緒は、チャーミングな笑みを浮かべて、手を振り、石垣に囲まれた細い路地へ走っていった。
「あれ?奈緒さん?」
気が付くと健太郎は、自分の家の近くまで来ていた。
奈緒との会話にしばしあっけにとられていた健太郎であったが、現実に引き戻され、街灯もなく真っ暗の路地を、自宅に向かってポケットに手を突っ込みながらとぼとぼと歩いていった。
「奈緒さん…俺、どっかで見たような気がするんだけどな」
健太郎は、奈緒の顔を思い出す中で、ふと、彼女の顔をどこかで見た記憶がよみがえってきた。
大きな特徴は無いが、長い髪、細長い顔、筋の通った鼻、白い肌、どこか人懐っこい表情。そして、この田舎では物珍しいスラリとした長身。
ただ、その子の名前が、「奈緒」だったかどうかは、記憶が定かではない。
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