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第5章 クトゥルフ再始動

第100話 盗賊

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 「もうちょっと先に何か居るな」

 「あら? 魔物かしら?」

 俺の様々な気配察知に反応があった。
 なんか結構な数だな。

 「いや、人だな。街道を挟むように隠れてる感じ。通りすがりの商隊とかを襲う盗賊っぽい」

 「人相手は久しぶりねぇ」

 アンジーがウキウキしながら刀を手に立ち上がる。なんか契約してから吹っ切れた様に戦闘を楽しんでるように見えるんだよね。

 「まぁ、このまま進むか。攻撃されたら反撃で。もしかしたら街道でかくれんぼしてるだけかもしれないしね。で、何人かは逃して。根城にしてる場所とかがあるかもだし」

 「分かったわ」

 俺の指示にアンジーが戦闘部隊にテキパキと指示を出す。やっぱり優秀なお姉さんですわ。すぐに戦闘部の情報部の人間が戦闘態勢に入る。
 いつでも馬車の中から飛び出す準備は出来てるみたいだ。

 「あー弓持ってるっぽいな。馬が怪我しないように気をつけて」

 「初撃は魔法で防ぐのが良さそうねぇ」

 因みに俺は偉そうに指示を出してるけど、戦闘に参加しない。今の俺のロールはか弱い商人だからね。守られる存在なのです。

 「両サイドに15人ずつぐらい。規模が大きめの盗賊団なのかな? 大丈夫?」

 「大した事ないわぁ」

 かっけぇ。じゃあ俺は大人しく馬車の中でプルプル震えておきますね。後はお願いします。

 馬車を進ませる事5分程。
 各々盗賊を察知出来たみたいで、魔法発動の準備も終わっている。

 「今よ」

 そして森に挟まれた街道を通ろうとした瞬間、両サイドの茂みから矢が放たれた。
 馬は貴重なのにね。そんなの関係なく狙ってきちゃってさ。盗賊に売るツテが無ければいらねぇってか。しかし、アンジーの合図で風属性に適性がある人間が魔法を発動。
 矢は明後日の方向に飛んでいく。

 「なっ!?」

 「魔法か!?」

 矢が逸れていった事で盗賊は大混乱。
 てか、そういえば警告すら無かったよね。
 普通は女と金目の物を置いていけーとかあるんじゃないの? 問答無用で殺しにくるじゃん。
 そういうお約束を守ってくれないのは悲しいね。

 「あんたたちはあっちを始末しなさい。私は一人でこっちに行くわ」

 ちょっぴり残念に思ってるとアンジー達が反撃に出た。片方はアンジー一人で、もう片方は残りの全員で。ここの護衛に一人残してくれてるけど。

 「うーん。弱いな。恩恵持ちも特に無し」

 もしかしたら掘り出し物でもあるかなと、馬車の中からチラッと鑑定で確認してみたんけど、レベル30~50のただの人だった。残念。アジトに面白いボスとか居るのに期待しよう。

 あっという間にほとんどを片付けてしまった、クトゥルフの面々。ちゃんと何人か逃してくれたみたいだし、大満足の結果だ。逃げた奴は情報部の人間が尾行してるから、程なく根城が分かるだろう。

 「武器と金目の物だけ剥ぎ取って燃やしちゃおうか」

 流石に人間の死体の有効活用法は知らない。
 もしかしたら生産部に持って行ったら喜ばれるのかな…。いやいやダメだ。エリザベスの教育に悪い。そういうのは成人してからにしよう。

 「せっかくだしこの魔道具を使ってみよう」

 俺はみんなが集めてくれた死体に油をかけて、商会で売り出す予定の着火の魔道具を使って火を付ける。

 「これ、便利よねぇ。魔法が使えたら必要ないけど、使えない人が大半だもの」

 「だろ? こういう便利グッズでまずは冒険者や行商をやってる人間を味方につける。そこから徐々に勢力を広げて、富裕層を相手にしようかと」

 何故かこの異世界は生産者を軽視してるので。
 俺がその辺のシェアを全部頂こうかなと。ほかの奴らが目を付ける前に、どんどん生産者を囲っていこう。

 それと同時に娯楽も展開していく。
 もしかしたらこっちの方が富裕層が食い付くのが早いかもな。まぁ、どっちでも良い。転送箱を売るツテさえ出来れば良いんだ。くくくっ。徐々に徐々に情報を握って、世界の覇権を手にしてやる。
 情報と産業を握れば半分達成したようなもんだけどな。それに合わせて戦闘力の方ももちろん強化していくし。早く隣国に行って人員を増やしたいもんだ。

 「そう考えたら盗賊は殺さずに使った方が良かったかな?」

 「そういえばそうね。よっぽどの馬鹿じゃない限り有効活用すべきだわ」

 失敗しました。
 まぁ、次から気を付けよう。
 異世界なんだし、盗賊くらいぽんぽこ湧いてくるでしょ。盗賊やら野盗なんてゴキブリと一緒なんだから。裏組織の人間の俺が言えた事ではないけど。

 「そういえばここってまだ帝国?」

 「帝国よ。もう少し先に進めば国境が見えてくるわ」

 国境近くで盗賊稼業ねぇ。
 なんかきな臭くないです?
 国境の兵士達お金貰ったりしてない? 結構な人数の集団だったしさぁ。

 「国境も注意すべきか」

 いざとなったら契約かな。流石に殺すと色々面倒事になりそう。
 契約は一々同意させる必要があるから、時間が掛かるんだよなぁ。マリクを連れてこれば良かった。

 「ボス。アジトを見つけました」

 人間のって燃えたらこんな匂いするんだと思いながら、尾行していた情報部を待ってるとアジトを発見したらしい。
 さてさて。何か面白い物、人はあるかね。
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