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第4章 雌伏の時

閑話 ローザ日記2

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 勉強疲れからなんとか持ち直したローザは、昼食として用意されたサンドイッチをもしゃもしゃと食べつつ、そのまま農場に向かった。
 ここは色んなモノを試験的に栽培したり、売り物になるのを作ったりしている。
 ローザは疲れたら良くここに来る。何故なら。

 「おっ! ローザちゃん! 採れたての果物があるよ!」

 美味しい果物がもらえるからだ。みんなに可愛がられてるローザはここを管理してる農家の職業持ちのおじさんも無自覚にたぶらかしてるのだ。

 「わーい! むふふー! 美味しー!」

 ローザは貰ったイチゴもどきにかぶりつく、
 耳をピンと立てて尻尾をブンブン振ってそれはもう美味しそうに食べる。これにはおじさんもにっこりである。
 丹精込めて作った果物を褒められて喜ばない農家のおじさんは居ないのだ。

 「今日はねー、エリーちゃんに捕まっちゃってねー」

 「あっはっは。勉強から逃れなかったんだ」

 果物を食べながらおじさんとお話し。
 エリザベスに捕まって勉強会に参加させられたと愚痴る。そんな事をしてると、農場にホルトがやってきた。

 「あ、ホルトだ!」

 「ローザ姉さん。またつまみ食いですか?」

 何やらレポートを書きつつ、呆れたような目でローザを見るホルト。
 ローザはそのレポートをチラッと見て、難しい言葉ばかり書かれていたのを見て見なかった事にする。難しい事はローザには分からぬ。

 「ホルトは何しにきたのー?」

 「ボスが街に着いた時に売り出すモノのチェックです。ここの果物や野菜は魔力が豊富なせいか美味しいですからね」

 「ねー! 美味しいよねー! でも売っちゃうのかー」

 「むぐっ。まぁ、自分達で消費する分以外を売る予定ですから。ローザ姉さんが心配する必要はないかと」

 ローザは手に持っていた果物をホルトの口の中に捩じ込みつつ、売ったら自分が食べる分が少なくなるとしょんぼりする。耳へにゃんである。
 なんとも感情が分かりやすい耳だ。

 「そうなんだー! ホルトは良い子ね!! もう一つあげちゃう!」

 ローザはお姉さんぶってホルトの頭をわしゃわしゃと撫でる。これはいつもレイモンドが褒めてくれる時にやってくれる行為で、ローザはされてとても嬉しいのである。だから、ホルトも嬉しいでしょとわしゃわしゃ撫でる。ホルトは少し迷惑そうな顔をしながらも抵抗しない。

 「また来るねー!!」

 ホルトがつまみ食いし過ぎないようにと、軽く注意してから去った後、ローザも次の目的地に向けて農場を後にした。

 「ブリーはどこかなぁ」

 秘密基地内を適当に歩き回り、お目当ての詐欺男ことブリムリーを探す。
 フラフラとあっちに行ったりこっちに行ったりとしてると、ようやく発見。

 「ブリー! リベンジしに来たよ!」

 「へっへっへ。まだローザちゃんに負ける程耄碌してねぇですぜ?」

 「今日は勝つんだから!」

 二人はそう言いながら手早く準備する。
 手元に用意されたのはリバーシ。ルールが複雑ではなく、ちょっぴり頭が悪いローザでも簡単に遊べる、レイモンドが開発した娯楽だ。
 レイモンドは前世知識の丸パクリな訳だが。

 「んむむむむ」

 「ローザちゃん。最初から多く取っちゃいけねぇっていつも言ってるでしょうに」

 「だっていっぱいひっくり返った方が気持ち良いんだもん!」

 「それは後半に取っておくんですぜ。前半は場所取り合戦でさぁ」

 アドバイスを貰い、手加減されても勝てないローザ。結局この日は五戦付き合ってもらったものの全敗。リベンジならずである。

 「うぅ…」

 「少しずつ強くなっていってますぜ」

 ここでも戦闘学習が発揮されてるのか、ローザは少しずつ強くなっている。本当に少しずつだが。
 この調子では勝利はまだまだ遠いだろう。

 「次こそ勝つからね!!」

 捨て台詞を吐いてローザは次の目的地へ。
 ちょっとリバーシで頭を使い過ぎて眠くなっちゃったのだ。
 という事で、岩山内の自分の部屋に入りベッドにダイブ。因みにエリザベスと相部屋である。
 エリザベスは工房で寝ることも多いが。レイモンドが居る時は毎日連れ帰られていたが、昨日からレイモンドが居ないせいか、昨晩は帰ってこなかった。少しはっちゃけてるらしい。

 「おやすみー」

 ベッドに入ったローザはすぐに寝息をたてる。
 朝から活発に動き続けたので少し休憩だ。



 「起床! 訓練!」

 昼寝から目覚めたローザはシュバっと飛び起きて、顔を洗う。そして昼寝前の眠そうな顔をとは打って変わってシャキッとした表情で、秘密基地へ飛び出していく。

 そして向かったのは訓練場。
 クトゥルフの訓練は二部制である。
 朝に職業系統に分けた訓練。
 夕方になり、本日の業務が終わってから魔法の訓練である。朝から夕方に魔力を使い切ってしまうと色々支障をきたすので。
 見張りの人員以外はそういう流れになっている。

 「うーん。中々上手くいかないなー」

 ローザが真似しようとしてるのは、師匠であるアンジェリカがやっている剣に魔法を纏わせる技法である。一応出来てはいるのだが、アンジェリカに比べると練度が全然違う。発動時間も、纏わせた時の効果も。

 「師匠が居ないから聞けないし…。カタ姉は怖いしなぁ」

 うんうんと悩みながらも決心する。
 師匠が帰ってくるまでにはこれをマスターして驚かせたいのだ。その為にはカタリーナに突撃するのも厭わないと。

 因みにカタリーナはローザを可愛がってるつもりである。しかし、勉強を逃げ出してた時にいつも怒られていたので、少し苦手意識があるのだ。

 微妙なすれ違いがあるものの、ローザは意を決してカタリーナの居る場所に向かった。
 
 
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