89 / 116
第3章 勢力増強
第86話 その後
しおりを挟む「おろろろろろ」
「お疲れ様です」
ゴドウィン殺害事件から一週間。
俺は何度も何度も縄張りと岩山を往復した。
もうベロンベロンよ。転移酔いでベロンベロン。
そりゃ嘔吐もするってもんよ。
「あー、当分したくねぇ」
「先程ので最後です。本当にお疲れ様でした」
岩山は現在急ピッチでくり抜いてる真っ最中。
中の構造がしっかりするまでは、みんなにテント生活を強いる事になるけど、少しの間我慢してほしい。土魔法持ちの奴らでみんな一生懸命やってるんです。それでもかなり時間は掛かる。
本当ならもっとじっくりやる予定だったしね。
ペテス領は現在大混乱だ。
騎士団長が行方不明になってるせいで、領主館はてんやわんや。
騎士団長の副官だった男が必死に代わりになって差配してるけど、情報部が最後の仕事とばかりに行方不明の噂を街中に流したので、騒ぎは大きくなるばかり。
俺達はその間にクトゥルフレーヴァンの人員と物資を全て回収。
ベロンベロンになりながらも頑張って岩山まで転移してたって訳よ。
スラムが急に空っぽになって、住民達はかなり驚いている。なんたって建材やらもなるべくバラして持って行ってるからね。
急にポッカリ更地になったようなもんだ。それでもこちらに対応出来ないのは、それだけペテス領が混乱してるから。
「よし。俺達も行くか」
「はい。蓄え直しですね」
ですなぁ。
秘密基地で力を蓄え直して、別の国で再起しよう。そしていつかこの国を滅茶苦茶にしてやる。
俺を逃走させた罪は重いぞ。
まぁ、自業自得なんだけどさ。
☆★☆★☆★
「兄さんが!?」
「そんな…伯父上が…」
その知らせを聞いたのは、レーヴァン討伐に向かった日の夜。
レーヴァンの女ボスを追い詰める事は出来たが、途中で何故か魔物が大挙して押し寄せてきた。
深層の魔物も襲ってきたらしく、領主の騎士や衛兵で対応する事は困難。
騎士団長に出張ってもらうしかなかった。
「魔物は全て倒されていましたが…。騎士団長の姿はどこにもありませんでした。念の為、急いで魔物を解体し、体内も調べましたが騎士団長の痕跡はどこにもありません」
「そんな…参ったわね…」
ジェシカはこれからの事を勘案して、かなり険しい顔をする。
自分の領地で帝国の守護神が行方不明、もしくは死亡。弾劾されるのは間違いないし、良くて爵位没収。最悪は死刑までありえる。
今代の皇帝は歴代の皇帝と比べて比較的温厚だ。
だが比較的であり、これまでの皇族の苛烈な所業は平民でも知っている。
その事を考えると目の前が真っ暗になった。
(どうしてこんな事に…。たかだかスラムで威張ってる猿山の大将の討伐をお願いしただけじゃない。兄さんがやられるなんて…)
スカリーもその優秀な頭でこれから起こるであろう事を理解して、顔が真っ青を通り越して真っ白になっている。
「そして、申し訳ありませんが…。帝都から調査員が派遣されるまでお二方を軟禁させて頂きます」
現在、実質的に兵を差配している帝都からやって来たゴドウィンの副官だった男がそう告げると、部屋に数名の騎士が入ってくる。
ここで逃げられたりすると、責任の所在がこの二人から自分達に降り掛かる。
それを防ぐ為の処置だ。
ジェシカとスカリーは無抵抗で別部屋に連れて行かれた。
それを見送った副官は一人になった部屋でため息を吐く。
「これから忙しくなりますね…。団長が居ないと他国に知れ渡れば戦争もあり得る…。一体何処に行ったのですか、団長…」
それから一週間。
副官は騒動の後始末に追われていた。
なるべく団長が行方不明だった事を隠そうと思っていたのに、次の日には平民までもが騎士団長が行方不明になった事が知れ渡っていて大混乱。
民はかなり不安がっており、領地から逃げ出そうとする富裕層が大量発生していた。
さらに。
「スラムが消滅?」
自分達が攻め入ったレーヴァン。
そして、スラムとは思えんばかりに整地されていた場所の建物がどんどんと無くなって行ってるという報告を受けた副官は目眩がしそうになった。
「意味が分からない…。なんで建物が無くなるんだ…」
「分かりません…」
報告に来た帝都から一緒にやって来た騎士も首を傾げて不思議そうにしていた。
「原因究明は後です。今はそれどころじゃありませんので」
しかし。
後程調べて分かったのは、レーヴァンやその他闇組織の人間もこぞって消えている事だけだった。
どうしてどうやって。その謎は永遠に闇の中である。
☆★☆★☆★
ペテス領から徒歩五日程の村にて。
「どうしたのアーサー?」
「俺が…アーサー…?」
そして物語は歪な形で動きだす。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
はい。という事で今章は終了になります。
お疲れ様でした。
いやぁ。短くまとめる予定だったのに思ったよりも長引いてしまいましたね。
途中で章分けした方が良かったかと、終わってから思いましたね、はい。
そしてまさかのペテス領からの逃走。
これは最初から決めてたんですよね。
ちょっと理由が無理矢理になった感はありますが、次は別国からのレイモンド君の活躍にご期待ください。
次章はとうとう現代知識チートをぶちかましますよ。まぁ、レイモンド君は知ってる知識をふわっと生産部に伝えて、商業部の人達が頑張って捌くんですがw
ではではまた次章で~
あ、作者は他にも作品を更新してますので、良かったらそちらもご覧くださーい。
10
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。
黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。
実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。
父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。
まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。
そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。
しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。
いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。
騙されていたって構わない。
もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。
タニヤは商人の元へ転職することを決意する。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした
せんせい
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる