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第3章 勢力増強

第85話 岩山

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 逃げると決まれば急がねばなるまい。
 一日はレーヴァンとの合併懇親会に時間を使ったりしたけど、そこからは怒涛の忙しさだった。
 アンジーやレーヴァンの主要メンバーに俺の能力について説明したり、職業について話し合ったり。

 商業部門や生産部門のみんなに謝りに行ったりもしたな。
 せっかく俺達の縄張りをここまで発展させてくれたのに、捨てる事になるから。
 特にホルトとか。
 滅茶苦茶楽しそうに縄張りを改装してたからね。

 「岩山をくり抜いて要塞にするんですよね? そっちの方が楽しそうです」

 ホルト君は立派でした。
 既に次に向けて目標を立ててらっしゃる。
 俺なんかよりも大人な感じだよね。将来が楽しみだよ。でも、15歳になったら商会経営の方をお願いね? シムな感じを楽しんでるところ悪いんだけどさ。



 「これがそうなの?」

 「うん。外套を作った時に出来るかなと思ってやってみたら出来た。魔石は最低でも深層クラスの物を使ってるから、今はもう少し低コストで作れるように改良中」

 とにかくスピードが命。
 騎士団長が行方不明って帝都のお偉いさんが気付いて、この領地に人を派遣してくる前にここから脱出しないといけない。

 俺の今の魔力量なら十五人ぐらいまとめて運べる。しかし、今すぐ運んだとしても、向こうは住める環境にはなっていない。

 突貫でもある程度は住めるようにしておかないと、大人はともかく子供はきついだろう。
 それに周りは魔物だらけ。子供達が住むんだから、安全は不可欠。

 そこでエリザベスに出来たら良いな程度にお願いしていた、認識阻害の魔道具が役に立つって訳だ。
 深層の魔物の素材をふんだんに使ってるからか、効き目はばっちり。
 一回試してみたけど、魔道具の効果範囲にはマジで入ってこなさそう。
 油断は出来ないから、戦闘部隊でも精鋭に定期的に見回りはしてもらわないといけないが。

 「はい。出発ー」

 先に岩山に向かってある程度形にする為に先行部隊と共に深層へ向かう。
 戦闘部隊のカンスト組と俺、アンジーで生産部門の大工達を護衛しながら岩山を目指す。

 「そりゃ急に強くなるわよねぇ」

 「秘密の特訓場だったんだぜ」

 アンジーはクトゥルフの急成長の秘密を知ってしみじみと呟く。
 既にレベルや職業、能力値の事は説明していて、ここでレベル上げをしていたのだと教えると、ちょっぴり羨ましがられた。

 そして歩く事8時間。
 今回は護衛対象がいるので、なるべく交戦を避けてきたけど、それでも中々時間がかかった。
 途中、アンジーが単独で恐竜を倒したのを見て、やっぱりこいつ強いんだなぁと思いました。
 俺は未だにソロじゃ無理だからね。

 そんなこんなで到着。
 ここをキャンプ地とする!!
 ………失礼しました。
 目の前にあるのはでかい岩山。ここをくり抜いて、中に住もうかなと。森の中を秘密の大要塞にしてやるぜ。

 「俺はとりあえず魔道具を周りに置いてくるよ。でも効果は絶対じゃないから、油断しないようにね。認識を弄ってるだけらしいから、何も考えずに入ってくる事もあるし」

 「私も一緒に行くわぁ。場所は確認しておいた方がいいしねぇ」

 俺はこの後縄張りに戻るが、アンジーはここに残る。ここで戦闘部隊の指揮を執りつつ、万が一の保険として頑張ってもらう予定だ。
 精鋭部隊だけでも深層の魔物は倒そうと思えば倒せるけどね。時間がかかるし、複数来られるとやばい。最初はカタリーナにお願いするつもりだったんだけど、アンジーが立候補してくれたので。
 縄張りの事を分かってるカタリーナが残った方が良いだろうと。出来る女は違いますな。

 「これ、凄い魔道具よねぇ」

 「エリザベスの成長が止まらん」

 初めて認識阻害の魔道具を見た時はびっくりしてたからな。
 裏社会に流せば暗殺したい放題だと。
 本物の強者には通用しないだろうけど。
 アンジーなんて勘で察知するし。

 「よし。こんなもんか。じゃあ俺は戻るね。次からは転移で連れてくるから」

 「ええ。マーヴィンによろしくね」

 マーヴィンは今、魔法鞄を大量に持ってレーヴァンの縄張りを駆け回っている。
 逃げるって事で、縄張りに置いてた物を根こそぎ回収してるところだ。
 これは縄張りの事を良く知ってる人物にお願いしないといけなかったからね。

 アンジーは俺が裏切り者って適当に言った嘘に最初は惑わされたらしいけど、結局重用してるんだよね。長年右腕を務めていただけあって信頼関係が凄いんだろうか。
 それとも勘ですぐに嘘ってバレたのか。聞いてないけど、重用するだけあって優秀なんだよね。
 職業将軍だし。カタリーナとかゴドウィンの副官と一緒。人を差配するのが得意だから助かってる。

 「うぷっ。これさえ無ければ…」

 転移で屋敷に戻ってきた。
 便利なんだけど、この転移酔いだけは勘弁してほしい。すぐ治るんだけどね。酷い二日酔いを凝縮して叩き付けられてる感じ。
 子供達を転移で連れて行く予定だけど、体調不良者が多発するかもしれんな。

 「どう?」

 「物資の回収は順調です。レーヴァン、クトゥルフを合わせても、後二日あれば全回収は終わるかと」

 「その他人員の荷造りも順調ですね。子供達は少し混乱してるようですが、大人がなんとか宥めている感じです」

 ふむふむ。こんな慌ただしいのは初めてだからな。それもこれも俺ちゃんがゴドウィンを殺してしまったから…。申し訳ねぇ。
 
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