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第3章 勢力増強

第83話 終幕

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 「迷うなぁ」

 「絶妙ですね」

 恐竜の残りは3体にまで減っている。
 ゴドウィンは既にヘトヘトだが、多分気合いで残りも始末するだろう。
 やっぱりあいつは化け物だ。深層の魔物15体を相手にして勝ち切れるってやばすぎっしょ。

 そして俺が迷ってるのは、ここから更に手を出すかどうかだ。
 当初は出す予定だったんだが、ゴドウィンは既にそれなりに負傷している。
 ただ、このまま素直に帝都に戻る傷かというと微妙だった。ポーションで回復して多少傷を治してからスラムに再侵攻してくる可能性がある。
 出来たらもう少し深手を負ってくれると嬉しかったんだが。

 「ううん? これはどういう事かしらねぇ? 手を出した方が良いようなダメなような?」

 「それはいつもの勘? それとも個人的な感情?」

 俺とカタリーナがうんうんと悩んでると、アンジーが妖艶な笑みで話しかけてきた。
 うーん。大人の魅力がみっちり詰まってますなぁ。俺ちゃん、全然守備範囲よ? 童貞もらってくれます?

 「あらあら? 私の変な勘の事を言った事があったかしら? まぁ、それはさておいて、答えは前者ね。やっぱり両方かしら? 追撃はしておいた方が良いって思うし、個人的にあの脳筋がボロボロになってるサマをもっと見たいってのもあるもの。ちょっとなんかあやふやな感じね。どっちもどっちって感じなのよ」

 何故か胸を寄せて上げて俺に話しかけてくるアンジー。もしかして俺の視線に気が付いたのかね。
 さっきから少し汗が滴ってる谷間に夢中ですからね。とてもこれからゴドウィンに特攻を仕掛けるかどうかの話をしてるようには思えない雰囲気だ。
 しかし美乳教会教皇を拝命してる俺は巨乳に靡く訳にはいかんのだ。

 なんとか視線をグググっとカタリーナの方に向ける。うん。胸がない。落ち着きます。

 「ボス。張り倒しますよ」

 「ごめんなさい」

 無い乳教会の敬虔な信徒であるカタリーナさんに怒られた。それはもう凍てつくような目で俺を見てくる。仕方ない。俺だって男の子だもの。
 年齢も本当なら猿みたいに盛っててもおかしくない年頃だ。そこに妖艶なおば…お姉さんが現れたりしたらねぇ? そりゃ発情するってもんよ。

 「じゃあ軽く手を出そうか。あくまで殺さないように。俺達にまだ国を敵に回す程の力はないんだから」

 「ですね。質はそれなりになってきましたが、やはり数が全く足りません」

 「レーヴァンもだいぶ数が減ったからねぇ。どこかの誰かさんが好き勝手にやってくれたお陰で」

 「お、俺にはなんの事か全くこれっぽっちも分からないけど、好き勝手やられる方が悪いと思うな! レーヴァンにだって勝ち筋は普通にあったんだしさ!」

 「それを言われると耳が痛いねぇ」

 現に、俺がラブジーを落としたタイミングとかでアンジーが単騎でうちの縄張りを荒らしに来てたりしただけで俺達は終わっていた。
 今のゴドウィンを見たら分かるように、アンジーも俺達が成長する前なら、無双出来ただろう。
 ほんと、何故か様子見をしてくれて助かりましたよ。いくつか時間稼ぎのネタは用意しておいたとはいえ、絶対じゃなかったしね。

 「あ、倒し切った。マジですげぇな」

 馬鹿話をしてるとゴドウィンが恐竜を全て倒し切った。
 戦闘が終わったゴドウィンは流石に体力の限界なのか、その場で大の字になって寝転んでいる。

 「初撃は俺が。後は流れで」

 「かしこまりました」

 「分かったわぁ」

 今のゴドウィンはかなり無防備だ。
 攻撃するチャンスでしかない。
 俺は空間の中に用意しておいた、大量の光魔法のキャノンをゴドウィンにお見舞いする為に座標をしっかり把握する。
 レベルが上がった時に取った測量士が良い仕事してやがるぜ。これのお陰で空間魔法が格段に使いやすくなったんだよなぁ。

 「インフィニティ・キャノン」

 全然無限じゃないし、数に限りがあるけど。
 カッコいい名前を付けたくて。果たしてこの名前がカッコいいのかは疑問だが。

 寝転んでいたゴドウィンの周りの空間が裂ける。
 異常事態を察知したゴドウィンは慌てて起きあがろうとするが、明らかに動きが鈍い。
 平常時から跳ね起きて回避するのは余裕だっただろう。しかし、今は長い戦闘が終わって、一旦気を抜いたところであり、体力もかなり消費している。

 幸運に幸運が重なり、俺の光魔法をゴドウィンは避ける事が出来なかった。全て直撃である。
 まぁ、ここまで追い込んだのは俺の適当な策のお陰って事で。
 ほんと、適当に策を考えても上手くいくなぁ。

 「グガァァァァ!」

 ゴドウィンは悲鳴なのか雄叫びなのか分からない声を上げている。
 ここが勝負所とばかりにカタリーナとアンジーに声を掛けて一気に攻める。

 「行くぞ!」

 「うふふふ。いい気味だわぁ」

 「土の精霊よ」

 俺とアンジーは一気に接近。
 カタリーナは土魔法で行動を阻害。
 平時ならあっさり抜け出されるだろうが、今のゴドウィンは弱っている。
 俺の魔法の土煙のせいで姿が確認し辛いが、拘束は出来ているみたいだ。

 俺は接近しながら体内で気を練り上げる。
 チャンスだしせっかくだから特大の一発をお見舞いしてやろうの思ったのだ。
 内臓のどこかに深刻なダメージを与えればそう簡単に復活は出来まい。
 そう思ってアンジーを先行させて、気を練り上げる事に集中する。

 「ハァァァァアッ!!」

 アンジーが渾身の一撃を背中から喰らわせる。
 ゴドウィンは小さく呻き声を上げていた。土の拘束から抜け出せなかったのだろう。
 そして俺は鳩尾目掛けて…。

 「発勁・極浸透掌! ってぇぇえええ!?」

 俺は鳩尾目掛けて放ったつもりだった。
 しかし、アンジーが後ろから斬り掛かったせいで、前のめりに倒れ込んできて…。

 俺の体術の必殺技は正確に心臓を捉えた。
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