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第3章 勢力増強

第80話 時間稼ぎ

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 「小癪な! 貴様らは何者だ!!」

 「ぐっ…! ボス! マジでそろそろやばいっす!!」

 カタリーナの補助ありで耐えていた騎士男が限界らしい。まぁ、時間稼ぎとしては充分だ。
 アンジーを手に入れるっていう最優先の目標は達成したしね。

 「お姉さん。レーヴァンの人達を指揮って騎士達をスラムから追い出すように誘導してくれる?」

 「追い出す? 仕留めなくていいのかしら?」

 「追い詰めすぎると面倒になるからね。それに、あの人達はこの後も仕事があるから」

 「なんだか面白くなりそうね? 分かったわ。--マーヴィン!!」

 アンジーは右腕のマーヴィンを呼び寄せて矢継ぎ早に指示を出して行く。
 傭兵団をやってただけあって、指示も分かりやすいし迅速だなぁ。

 「おっと。俺も動くか。マリク!!」

 俺も近くに控えていたマリクを呼んで、指示を出す。この戦いが始まってから、逃げ道を用意して半包囲してたんだよね。

 「レーヴァンと協力して騎士と衛兵をスラムから追い出せ。無理に追いかける必要はないからな」

 「かしこまりました」

 マリクがすぐさま動き出して、一度物陰に隠れる。すると、少ししてからゾロゾロとうちの人員が姿を見せ始めた。
 今回の為に用意した選りすぐりの戦闘員だぜ。
 ほとんどの人員がカンストしてる自慢の部下達だ。

 「あらあら? ずっと何かが潜んでるとは思ってたけど…。あなたの部下かしらぁ?」

 「そんなとこ。あれと協力して邪魔者は追い出そう。俺達とお姉さんはゴドウィンと戦うけどね」

 いくらモブを排除したからって、大ボスをなんとかしないと意味ないからね。
 しかもこのボスは戦況を一気に跳ね返す力があるときた。

 「ボスー!!」

 「いっけね。チャールズが限界だ。いくよ、お姉さん」

 騎士男が本当にヤバそうなのでとりあえずレーザーを乱射する。
 お姉さんも接近せずに魔法を使う。メインはカトラスなんだろうが、魔力操作も中々。
 流石レベル200後半ですな。

 「ムカつくなぁ、あの恩恵」

 ゴドウィンは完全に頭にキテるのか、俺達の魔法を弾きもしなかった。
 衝撃で軽く後退したけど、それも軽く踏ん張っただけで耐えている。さっきみたいに不意打ちじゃないと吹っ飛ばす事も出来ませんか。

 「チャールズ! マリクの方に合流!」

 「了解っ!」

 俺はチャールズを回復させつつ、戦線から離脱させる。さてさてここからが本番だ。

 「カタリーナ! 魔法で援護よろしく!」

 「かしこまりました」

 「お姉さんは俺と一緒に接近戦ね」

 まぁ、メインはアンジーに任せて、俺は補助なんだが。未だにレベルはアンジーにも届いてないし。
 まぁ、避けタンクぐらいなら出来るんじゃないかと、淡い期待を抱いております。

 「お前らは一体何者だ!!」

 「人材コレクターです」

 ゴドウィンは唾を飛ばしながら叫んでるが、適当に答えておく。
 ここからは集中しないとマジで死ぬからな。
 人材コレクターだって本当だし。本当はなんとかゴドウィンも欲しかった。でも現実は無情である。
 俺の実力では屈服させる事も難しい。アンジーだってゴドウィンが弱らせてなきゃ微妙だったしね。
 このお姉さんは快楽主義に見えて、かなり現実主義だから。都合良くゴドウィンが来てくれて良かったよ。

 「ぐっ!」

 「うふふ。ゴドウィン、形勢逆転ね?」

 いくらレベル300オーバーの化け物でも、アンジーと俺、カタリーナを同時に相手するのはきついらしい。ってか、カタリーナの魔法の使い方が嫌らしい。直接魔法をぶつけても意味がないと分かると、精霊と話せる事をいいことに、かなり微細な魔法の使い方している。

 ゴドウィンの足場をほんのちょっとだけ凹ましたり、ちょっとだけ突起させて躓かせたり。
 時には闇魔法でデバフをぶち撒けてみたり。これはあんまり効果がないみたいだけど。

 微妙に崩れた体勢をアンジーは見逃さない。
 いくら体が硬いとはいえ、モロにクリーンヒットを喰らえばそれなりの傷になる。
 目の前のアンジーは滅茶苦茶イキイキしていた。
 やっぱりなんか因縁でもあるんだろうか。話した時も騎士団長に会った事ある風な感じだったし。

 「外が硬いのは充分分かった。でも内はどうなのかね」

 ちょこまかと蝿の様に周りに集ってた俺だけど、攻撃出来るチャンスがあるならやってみるとも。
 それにこれは気になってたんだ。

 「浸透掌」

 「ぐはっ!!」

 うひょー! クリティカルヒットじゃん!
 なるほどなるほど。体内にまで衝撃を伝える事が出来たらそれなりに戦いになると。
 やっぱ拳よ。武器に頼っちゃいかんね。信じられるのは己の肉体のみ。筋肉だ。筋肉は全てを解決する。明日から筋トレもしようかな。

 「おのれ!! 調子に乗るなよ!」

 ゴドウィンが完全にキレた。
 目が血走っている。これで動きが雑になればと思ったんだけど、逆に洗練され始めてきた。

 「やべぇやべぇ! 逃げ回るしか出来ん!」

 ってか、結構時間稼いだと思うんだけど?
 スラムを攻めてきていた騎士達はレーヴァンクトゥルフ連合に追いやられて完全に撤退してるし、残すはゴドウィンだけ。
 俺達が殺られたら意味がないんだけど。

 「あっぶね!」

 ちょっと考え事をしてたら目の前を大剣が通過。
 集中しないと。そろそろ俺の保険が発動するはずなんだけど。
 アハムの野郎。何か手こずってんのか?

 内心でぶつぶつと文句を垂れながら、必死にゴドウィンの攻撃を避ける。
 俺の浸透掌がそれなりに効いたのか、アンジーよりも俺を排除しようと躍起になっている。
 避けるだけならなんとかなるけど、体力が心配だなぁなんて思ってる時だった。

 スラムに近い方とは別の外門方面から激しい破壊音が聞こえる。
 ここはえげつない魔物達との最前線って事でかなり立派な城壁をしてるんだけど、それが壊される可能性があるぐらいの大きな破壊音。

 来たな。俺ちゃんの万が一の保険が。
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