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第3章 勢力増強

第68話 事後

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 「そんなに強かったんですか」

 「レベルは200後半だし、せこい恩恵を持ってるしシャレにならんかった。これはもっと戦力を増強しないとやばいでやんす」

 「ズルい恩恵はボスも一緒だと思いますが…。しかしそこまで強いとなると、もう少し外へ行く回数を増やすべきかもしれませんね」

 「うん。予定を調整しといてよ」

 「かしこまりました。幸いジェイクが中々優秀なので、書類仕事はなんとかなると思います」

 転移で戻ってきた俺は早速カタリーナに会って情報共有。アンジーが怖かったよとこれでもかというぐらい強調する。マジで。役者や男爵の職がなかったらキョドりまくってたかもしれん。
 無意識に男爵の所作を出してしまってたぐらいだが、それが良い味を出してたんじゃなかろうか。
 抜けきらない貴族の所作的な。そんな風に勘違いしてくれてたら嬉しいなぁ。

 でも危険を冒して情報収集に向かったお陰でレベルと強さが分かったから、これからの方針を決める事が出来るな。
 大体レベル300まで上げたら問題ないだろう。俺とカタリーナでアンジーを相手にしたら勝てると思う。

 ジェイクの更なる激務が確定してしまったが、是非是非頑張ってもらいたい。
 マリクと一緒の部屋で書類仕事でもさせれば、かなり頑張ってくれるんじゃなかろうか。

 「恩恵持ちのレベル上限は456なのかな? 今まで見た恩恵持ちはみんなそうだし。逆に恩恵を持ってない奴は上限が200。これで確定っぽいね」

 「ボスが上限999なのは恩恵が二つあるからという事でしょうか?」

 「多分。そうじゃないかなと思ってます」

 能力値が同じAの奴でも、レベルが上の方が強い気がするんだよね。
 俺には残念ながらEXの能力値はないけど、レベルが999ならそれなりに対抗出来るんじゃないかなあと睨んでおります。

 「さーて。これから一年。どうやって時間を稼ぐか。何かの拍子でレーヴァンがクトゥルフを攻めてこなきゃいいけど」

 超直感が厄介だなぁ。
 勘で今のうちに潰しとけってなったら困る。
 もう少し大人しくしておいて下さい。

 
 ☆★☆★☆★

 「姉御。結局あの二人はなんだったんです?」

 「………」

 話し合いが終わり、二人組の男が帰った後。
 傭兵時代からの長年の右腕、マーヴィンが心配そうに尋ねる。
 二人組が帰った後、部屋に戻って来てずっと黙って何かを考えている。いつもなら何かあればすぐに指示を出すし、何もなければ部屋でだらっとくつろぐはずだ。

 しかしアンジーは部屋に戻り、ソファに座ってからずっと天井を見て何かを考えてるように見える。
 黙って見守ってた他の人員達も気にしてる様子である。

 (はぁ。マーヴィンが裏切り者ねぇ。とても信じられないのだけれど)

 マーヴィンが声を掛けてきてるのを無視して一人考える。アンジー自身は裏切ってると思ってはいないのだが、いつもの勘が働かない事に少し不安を覚えていた。

 (特大の嫌な予感は消えている。だからあの対応は間違って無かった筈なんだけど)

 ずっと警笛を鳴らし続けていた嫌な予感は二人組が帰ってから消えている。
 下手したらかなりの被害が出てたと考えると、あの若い方の実力は結構なものだろう。
 そして最後に告げられた情報。本来ならありがたく享受すべきなのだが。

 (どうしたものかしらね。万が一マーヴィンが情報を流してるとなると迂闊に喋る事も出来ないじゃない。あの子、可愛らしい顔して厄介な事をしてくれたわぁ)

 アンジーはなまじ勘が鋭すぎたせいで、それに頼り切りになってしまっていた。
 今まで、重要な選択は全部自分の勘で対処してきたのだ。
 しかし、何故か今はそれが働かない。今までも偶にあった事だが、重要な選択をする時はいつも働いていたので、ここからどうすべきなのか行動に移せないでいた。

 (大人しくしてるのが正解なのかしら? それとも無理矢理行動を起こして、そこから勘が働くのに期待する?)

 大人しくしてればとりあえず問題ない気はするが、このモヤモヤを払拭できない。かといって、行動を起こせばかなりの被害が出るかもしれない。

 (ここに長く居付き過ぎたわねぇ。下の構成員達にも少し愛着が湧いちゃってるわぁ。そんな子達に死にに行けとは言えないわねぇ)

 傭兵稼業に飽きてこの辺境の地に流れついてからしばらく。
 初めは傭兵時代のみんなとわいわいやってるだけだったが、今ではそれ以外の人員も多数いる。
 アンジーはその人員を切り捨てる事が出来ないでいた。

 「すんません。若い男の方は見失いました」

 そんな事を考えてると二人の尾行をしてた奴が戻ってきた。
 商人の坊ちゃんの方は商会に行ったらしいが、貴族の坊ちゃんの方は領主館に向かってる途中で姿を見失ってしまったらしい。

 (だめねぇ。どうしようかしら。私って勘がなかったらこんなに決断力が無かったのね。困ったものだわ)

 「姉御」

 「とりあえず現状維持ねぇ。領主、クトゥルフの情報は深入りしない程度に集めておいて」

 「了解っす」

 結局アンジーが選んだのは現状維持。
 とりあえず情報だけは集めようという、なんとも中途半端な対応になってしまう。
 その選択が正解だったのか否か。
 それはまだ誰にも分からない。
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