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第3章 勢力増強

第66話 即バレ

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 屋敷から出て縄張りを出て行く。
 高位暗殺者の技能を使ってなるべく気配を消して表通りを目指す。
 どこにレーヴァンの監視の目があるか分からないからね。

 そして表通りに出てからは姿を隠さない。
 男爵の職業で得た素振りを出さないように気をつけつつ、新人冒険者らしく少しオドオドしながら通りを歩く。
 今日の為に拷問官を外して役者の職業をセットしておきました。効果が出てる事を祈る。

 向かったのはクトゥルフとは表向き関係のない商会。そこで詐欺男こと、ブリムリーが待ってくれていた。

 「ボス。お久しぶりっす」

 ブリムリーが周りに誰も居ない事を確認してから声をかけてくる。
 報告書を読んでたけど、実際に会うのはかなり久々だ。

 「上手く馴染んでくれたみたいだな」

 「あー。それはどうすかね。仲良くはしてるんすけど、どこか監視されてる雰囲気もあるんすよ」

 「報告書にも書いてたな」

 「っす」

 勘でしかないけど、どこか一線を引かれてる気がする。そんな感じの報告書だった。
 俺もそれを見て早いかなと思ったけど、いざとなれば逃げれるって思ったのと、そろそろアンジーの情報がないと手詰まりになると考えたから、多少の危険を冒してでも決行した訳だ。

 「店から出たら俺はお前の下っ端になるから。お前も良い感じに対応してくれよ」

 「了解っす」



 って事でやって来ました。
 レーヴァンの縄張りは初めて入ったけど、中々に見た目が危ない奴が揃っている。
 鑑定で能力や職業を見ると、そうでもないんだけど、見回りをしてる戦闘員っぽいのはみんなレベルが高い。
 レベル100を超えてる奴も見かけた。
 これは賭場の中には更に実力者がいるのでは。
 なんか縄張りの雰囲気がピリピリしてるし。


 「ブ、ブリムリーさん。ここ、ほんとに大丈夫なんすか?」

 「あははは。俺に任せておけ。これでも結構常連なんだよ?」

 賭場に入ってビビってる演技を開始する。
 実際結構ビビってるし。
 周りをチラリと見渡すと、いくつかのテーブルに別れてサイコロらしきモノを振って一喜一憂してるチンピラが多数いた。
 あ、あの冒険者っぽいの強い。レベルが150もある。

 「姉御!?」

 俺は客に集中し過ぎて近付いてきてる女性に気付かなかった。
 気付いた時には目の前にいて。

 「あなたは一体何者かしらぁ?」

 妙齢の美人さんが俺を見てにっこりと笑ってる。
 目が笑ってないってこういう事を言うんだなとしばし現実逃避。普通に怖い。圧が凄い。

 なんか初手からバレてる気がする。
 俺は内心焦りながら演技を継続。
 そして鑑定をしてみた。

 「お、お、俺っすか!? お、俺はブリムリーさんに良い遊びを教えてやるって言われて…」

 「ふふふ。そうなの。ちょっと裏で話しましょうか?」


 ☆★☆★☆★

 『名 前』 アンジェリカ
 『年 齢』 34
 『種 族』 ヒューマン
 『レベル』 286/456

 『体 力』 B/A
 『魔 力』 B/S
 『攻撃力』 A/S
 『防御力』 C/B
 『素早さ』 B/A
 『知 力』 B/A
 『器 用』 B/S

 『恩 恵』 超直感
 『職 業』 魔侍
 『属 性』 無 火 水 風

 ☆★☆★☆★

 あーだめだめ。
 これはやばいでしょ。
 魔侍ってなんだよ。なんて読むんだ。
 レベルも能力値もやばい。
 俺より100以上も高い。話にならん。
 こんなのしみったれたスラムにいちゃいけないでしょ。もっと中盤で立ちはだかってくるタイプのボスじゃんか。

 「な、な、な、なんでですか!? 僕は訳も分からず連れて来られただけで…」

 「うふふ。可愛いわぁ。食べちゃおうかしら?」

 ひえっ。これはやばい。
 一応転移の準備はしつつブリムリーの手を掴む。
 こいつを見捨てるのはしたくないからな。転移する時に連れて行かないとと思ったけど、これが逆に良い感じにビビってる演技になってるんじゃなかろうか。アンジー以外は少し戸惑ってる雰囲気があるし。

 これ、恩恵の超直感のお陰か?
 ブリムリーが監視されてるっぽいって言ってたのは何かアンジーの勘にに引っ掛かったのかも。
 こんなずっこい恩恵持ってるなんて予想外だよ。
 どれだけバレない様にしても、勘でバレちゃうんだろ? とんだ斥候殺しだぜ。

 アンジーを先頭に、レーヴァンの構成員に囲まれて関係者用の部屋に連れて行かれる。
 うーん…。もうここで逃げるべきか…。
 もう少し引っ張って話を聞くべきか。逃げても勘でうちの縄張りにやって来そうなのが怖いんだが。

 「そこに座りなさい」

 「ひゃ、ひゃい!」

 「うふふ。その演技を見てるのも面白いのだけど。そろそろ本当のあなたを見せてくれないかしら?」

 役者さんが仕事してませんよ。
 いや、こいつの恩恵がずっこいだけか。
 ほんと予定が狂いまくりで困る。
 詐欺男のブリムリーも顔は平静を装ってるけど、さっき手を握った時の手汗はやばかった。
 正直浄化したいぐらいに。

 うむ。うむむ。うむむむ。
 仕方ない。ここは覚悟を決めて普通に話して更なる情報収集をすべきか。
 既に転移はいつでも発動出来る。
 アンジーか構成員が少しでも変な動きをしたら即逃げしよう。
 なんかいつでも逃げれるってなると緊張も薄れてきたな。

 「ちっ。入ってすぐ変に思われると思わなかったな」

 「あらあら? それが素のあなたかしらぁ?」

 俺はビビってる演技の為の極度猫背を正してソファにふんぞりかえる。
 どんな演技してもバレそうだしな。堂々としてた方がいいだろ。

 一気に態度が変わった俺を見てレーヴァンの構成員は剣呑な雰囲気になっちゃったけど。
 こいつらなら襲ってきても対処は出来る。アンジーには手も足も出ないだろうけど。

 さてさて。
 ここからはレイモンド君のコミュ力が試されるな。ギャルゲーで培ったパーフェクトコミュニケーションをみせてやるぜ!!
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