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第3章 勢力増強

第52話 潜入任務

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 新たに上位職というのを発見してから三日。
 俺は下っ端達の職業を再確認していた。
 残念ながら人数が多いので全員確認する訳にはいかなかったけど、誰も上位職になっていなかった。

 「これは俺だけなのかな? もっと上位層を確認してからじゃないと断定は出来ないけどさ」

 「もう少し様子見した方がいいでしょう」

 まぁ、これからクトゥルフの人員が強くなっていけば分かる事だし焦らずに見守るとしようか。

 「で、問題はこっちか」

 情報部から上がってきた資料を見る。
 文字を覚えたてだからか、汚くて少し読み辛いけど仕方ない。

 「レーヴァンの連中が縄張り付近をうろちょろしてると」

 「恐らくクトゥルフの情報を集めようとしてるんでしょうが」

 うーん。このまま自分の縄張りで大人しくしておいて欲しかったなぁ。
 今の所ちょっかいをかけてくる雰囲気はないけどさ。うちの人員は契約で行動を縛れてるこど、向こうはそうじゃないからさ。
 手を出してきたらやり返さないといけないし、そのまま抗争なんて流れになったらダルい。
 アンジーの強さがどんなもんか分かるまでは手を出したくないんだよね。

 「詐欺男に賭場に遊びに行ってもらうか」

 「それは良いですけど、結局アンジーとやらの強さは計れませんよ?」

 「いや、詐欺男が賭場に馴染んだ所で俺を連れてってもらう。新米冒険者が大人の遊びを覚えに来た扱いでなんとかならんかなと」

 「危険だと思いますが…。ボスはまだ13歳。最近身長は伸びてきてますが、まだ成人には見えませんよ?」

 ほほう。よくも人が気にしてる事をずけずけと。
 最近まで全然身長伸びないのを気にしてたんだぞ? このままずっとショタなのかと心配してたんだ。徐々に伸びてきて本当に良かった。

 「賭場に馴染むのにも時間は掛かるだろ。その間に俺が成長するのを期待しよう。って事で詐欺男を呼んでくれ」

 「どの詐欺男でしょう?」

 「一番優秀な詐欺男だ」

 クトゥルフには詐欺師の職業持ちが何人か居るけど、割と初期から頑張ってくれてる詐欺男がいる。
 こいつは中々優秀なので、それなりに重宝してるんだ。
 普段の詐欺師連中は縄張りの中心辺りに引きこもらせている。いざという時は敵地に潜入して情報を抜いてきてもらわないとだからな。身バレ防止の為に外に出してないんだ。
 今回はその詐欺師の力を十全に発揮してもらおう。


 「お呼びっすか?」

 「うん。任務だよ」

 これからやってもらう事を説明する。
 万が一尾行とかされる事を考えて、賭場に馴染むまで俺達の縄張りに帰ってこれないからね。

 「情報を送る時はどうしたら良いんで?」

 「クトゥルフ傘下の商会に手紙を届けてくれたらいいよ。無理しない程度にレーヴァンの情報も探ってくれ」

 「って事は、今回の俺の仕事は賭場で遊びながらの情報収集って事ですかい?」

 「後は賭場でそれなりの顔馴染みになる事かな。新米冒険者を連れてきても不審に思われない程度には用心棒や常連と仲良くなってほしい」

 「了解っす」

 「じゃあ情報部にお金を貰ってカバーストーリーを確認したらすぐに向かってくれ。頑張ってね」

 働いてない奴が毎日の様に賭場に来てたら、レーヴァンの連中もおかしく思うかもしれない。
 情報部がその辺のカバーストーリーを用意してくれてるので、後はあっちに任せよう。

 「とりあえずレーヴァンはこれで良しと」

 「ヘマしなければいいんですが」

 あいつはなんだかんだやる男だぞ。知らんけど。
 焦らずにゆっくり馴染んでくれたら良いよ。

 「さてさて次の資料はと」

 これは報告書か。
 ローザが勉強から逃げ出す。その際窓ガラスを破壊。
 これはカタリーナに回す。存分に叱られて下さい。

 エリザベスがポーション工房にこもって、中々睡眠を取らない。後、臭いが酷いのにお風呂に入ってくれない。
 これは俺が後で引き摺りに行く。あの子は研究に熱中するとご飯も食べないし睡眠も取らなくなるからな。まだ6歳なんだから規則正しい生活をしてもらわないと。研究禁止を言ってやろうか。

 ホルトが新たな献策。
 自分達と全く関係のない商会を一つ用意しておくべき。
 傘下の商会はクトゥルフの下っ端が出入りしてるので、うちと関係がある事がバレて情報収集がしにくくなっている。
 その通りなので、後で都合の良さそうな商会を探そう。夜中に襲撃して契約。そのまま何も無かったように情報収集だけをしてもらう。
 詐欺男もこの商会を使わせるか。

 「まともなのはホルトだけじゃん」

 「ローザとエリザベスには手を焼かされますね」

 ローザの報告書を読んで顔を顰めるカタリーナ。
 いつの間にかローザの指導役はカタリーナになってるからな。
 何故かカタリーナの言う事だけは聞くんだ。
 それも三日ぐらいで忘れるみたいだけど。

 「本当にやばいラインを超えてこない所が小賢しいよな」

 「馬鹿なのに変な所で知恵が回るようです」

 いつも軽く説教される範囲の事しかしないのがいやらしい。天然でやってるんだろうけど、この子は本当に成長するんだろうか。

 「まぁ、いいや。ローザは任せたぞ。俺はエリザベスを捕まえてくる」

 「かしこまりました」

 やれやれ。英才教育組は前途多難だな。
 全員ホルトみたいに真面目な子なら楽だったのにさ。

 
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