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第3章 勢力増強

第47話 ローザの初戦闘

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 「レイモンドー!!」

 「ごはぁ!」

 いつもの様に中庭で拳闘士の訓練。
 これを始めてから早くも一ヶ月が経過している。
 クトゥルフの状況は良好と言ってもいいだろう。
 薬草畑は早速稼働してるし、鍛治工場もこの前ようやく完成した。
 今は薬草畑の横にポーション生産所を造ってる真っ最中だ。屋敷の異臭とももう少しでおさらばである。

 戦闘部門も外に進出して素材を持ち帰って来れるようになった。
 今は安全を重視して、魔物が大量に居る場所には行かせてないが、それでも着実にレベルアップしている。
 なにより、魔法を教えた面々の強さが段違いだ。
 まだ身体強化しかやらせてないが、それでも見違える程強くなっている。上位の冒険者の中には無意識で身体強化を使ってるらしいが、意識させてやらせると効果が全然違うみたいだ。

 「ローザ。俺の腹に突っ込んでくるなと何回も言ってるだろう」

 「えへへ~」

 身体強化してなかったら吹っ飛んでたんじゃなかろうか。それぐらいローザの突進は恐ろしい。
 契約さん。お仕事出来てないんじゃないかな? 契約主が危ないですよ?

 「ローザも魔物と戦いたい!!」

 ローザの頭を撫で回してると、急にそんな事を言われた。どうやら、指導係が外に出てレベルアップをしてる話を聞いたらしい。

 「むぅ。まだ早いと思うけど…」

 「ボス。良いのではないですか? 子供と言うならボスもそうですし、ローザは英才教育すると決めたのでしょう? 早めに魔物との戦いを経験させておくのは悪い事ではないと思います」

 「わっ! カタリーナが味方してくれたよ!!」

 ローザはかなり驚いている。
 いつもカタリーナに怒られてるからね。
 まさか自分に味方してくれるとは思ってなかったんだろう。

 ☆★☆★☆★

 『名 前』 ローザ
 『年 齢』 10
 『種 族』 獣人
 『レベル』 4/456

 『体 力』 F/A
 『魔 力』 F/D
 『攻撃力』 E/EX
 『防御力』 F/S
 『素早さ』 E/EX
 『知 力』 G/D
 『器 用』 F/C

 『恩 恵』 戦闘学習
 『職 業』 剣士
 『属 性』 無 風

 ☆★☆★☆★

 日々の鍛錬でレベルは上がっている。
 戦闘職は魔物や人を殺した方がレベルの上がりは早い。実戦に勝るモノはないってやつかな。
 生産職はその職に合ったモノを作るとか作業をするだけでぐんぐん上がっていくんだけど。
 だから、エリザベスやホルトはもうレベルが10を超えてるんだよね。
 本人は気にしてないかもだけど、ローザだけ置いていかれてるのはよろしくないか。

 「能力値的に外は無理だけど、地下水道のスライムとかネズミならいけるか? ネズミは強さの割に速いし良い練習になるかもな」

 「行っていいの!?」

 「勿論付き添いありきだぞ?」

 「やったー!! レイモンドありがとー!!」

 「甘ーい!」

 「むむむっ!」

 そう何度も突進を喰らう俺ではないわ!
 拳闘士の足捌きでひらりと躱してやったぜ。
 ローザは悔しそうにしてるけど。だからそれはやめなさいって言ってるのにさ。
 ほら。カタリーナさんがおかんむりだぞ?

 「ローザ。勉強の時間ですよ」

 「いやーっ!」

 カタリーナに引き摺られて屋敷に戻って行った。
 南無南無。ローザには勉強という罰が一番効くからな。これで一週間は突進してこないだろう。
 今のうちに予定を調整してローザの地下水道に付き添えるようにしておくか。


 翌日。
 俺とカタリーナとローザ、それに騎士男が地下水道に降り立っていた。

 「臭い臭い臭い!!」

 ローザは狼の獣人という事でかなり鼻が良い。
 地下水道は地獄だろう。クトゥルフには他にも獣人が居るが、大なり小なり苦労してると報告が上がっている。
 外に出るほどの強さを持っていない下っ端達は訓練内容に地下水道でネズミの速さに慣れるというのがある。
 下っ端獣人達は早くこの地下水道から抜け出す為にかなり真剣に訓練してるらしい。

 「うぅぅ。鼻がもげちゃうよー」

 「我慢してとしか言えないんだよなぁ」

 俺も久々に来たけど中々にきつい。
 ヒューマンの俺ですらきついんだもんな。
 ローザは更に苦しい事だろう。

 「諦めて帰るか?」

 「いや! 魔物と戦う!!」

 半泣きになりながらも魔物と戦う事を選んだ。
 中々立派じゃないか。その心意気や良し。
 ほら、早速スライムがやってきたぞ。

 「てーい!!」

 可愛らしい声とは裏腹にその剣筋はかなり鋭い。
 ローザは既に大人サイズの剣を使ってるんだけど、全くブレがない。
 身長は年齢相応だから普通の剣が大剣みたいになってるんだけどな。
 将来は身の丈以上の大剣を振り回してるんじゃなかろうか。

 「ふむ。やっぱりスライムは問題ないわな」

 「偶に飛ばしてくる酸弾さえ気を付けてればスライムは子供でもなんとかなりますからね。その酸弾も軽い火傷程度ですし」

 流石最弱の魔物。
 ローザの初戦闘があっさり終わっちゃったよ。

 「どうだった?」

 「面白くない!!」

 ローザに初戦闘の感想を聞いてみたけど、その顔は不満たっぷりだ。
 そりゃ一刀両断で終わっちゃったもんな。

 「スライムだもんな。ネズミは中々難しいかもしれないぞ。速いからな」

 「頑張るよ!!」

 スライムは余裕だったけどネズミはどうかな?
 俺は光魔法のお陰でなんとかなったけど。
 その体ぐらい大きな剣で素早いネズミを捉えられるのか。
 楽しみにさせてもらいましょう。
 
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