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第2章 抗争

第33話 領主動きます

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 「ボス。領主が動きそうです」

 「え? マジ?」

 これからどう動くか考えていたら、領主が騎士と衛兵を集めているとの情報が入った。
 いつかはもっとまともな情報機関も作りたいんだけど、今は商会からの情報頼りな状況。

 「なんで? 執事は疑ってたんでしょ?」

 「正確な所は分かりませんが…。どうやら領主自ら陣頭指揮を執ってるみたいですね」

 ふむん。領主は馬鹿なのか。
 俺ですらお粗末な作戦だなと思ってたし、成功するとは思ってなかった。

 「執事が落ち着かせてるんじゃなかった? 暴走したのか?」

 「物資搬入を頼まれてる商会にうちの傘下も含まれています。そこで詳しい情報を聞いてくるように指示を出しておきますね」

 「うん。よろしくね」

 状況が大きく動きそうだねぇ。
 俺がやった事とはいえ、ちょっと予想外だ。
 ここからは持久戦になるかと思ってたし。





 「では、纏めた情報をお伝えしますね」

 領主軍がスラム鎮圧に動きそうだという情報を得てから数日。
 色々な商会からの情報をカタリーナはすぐに纏めてくれた。

 「スラムの情報が断片的に伝わってるみたいですね。ここ最近、抗争続きで疲弊してるのを知ったみたいです。そこを上手く掻っ攫おうとしてるみたいですね」

 「俺達がやりたい事じゃん」

 疲弊してるか? レーヴァンは依然勢力を保ったままだし。
 ラブジーが弱ってるぐらいだろ。後の抗争はほとんど俺が傘下に収めて安定してるし。

 「二大巨頭の一角が弱ってるというのが大きいのではないでしょうか。私達の事は知られてないみたいですしね」

 「俺達は情報絞ってるしなぁ」

 嘘っぽい本当の話とか、どうでも良い情報を垂れ流してるんだけど。
 全ての情報を遮断するより、こっちからどうでもいい情報を流すほうが有効って何かで見たんだよね。それを実行してみました。

 「領主軍の狙いは?」

 「レーヴァンです」

 なんでだよ。いや、ありがたいけども。
 そこは弱ってるラブジーを狙うんじゃないの?
 なんで健在のそっちを狙うかな。

 「私じゃないでしょうか?」

 「まさか、本当にレーヴァンがラブジーから攫ったと思ってるの?」

 少し考えれば嘘って分かりそうなものだけど。
 実際に抗争してるから真実味があるのかな。

 「前回スラム鎮圧に失敗してるので、今回はかなり戦力も物資も集めてるみたいです。レーヴァンを鎮圧したらそのままラブジーに流れ込む可能性がありますね」

 「領主軍は勝てるの?」

 「領主側の戦力がはっきりしません。ここ、ペテスの防衛を任されるぐらいですから、精強な筈なのですが…。ここ最近は魔物狩りも冒険者が出張るばかりで、領主軍が対応したという話は聞けませんでした。噂では、前回のスラム鎮圧で主力部隊がほとんど殉職したとか…」

 「レーヴァンと良い感じに引き分けてくれないかな」

 それがベストなんだけど。
 レーヴァンが弱ってるとなると、ラブジーが突っかかるだろ。
 それを後ろから急襲してやりたい。

 「うーん。賢い奴は何考えてるか分からんけど、馬鹿も何考えてるか分からんな」

 まぁ、情報は得た。
 この情報をどう上手く使うか。

 「とりあえず領主軍は素通りさせろ。絶対喧嘩売るなって言っとけ。あっちもこっちを無視するだろ」

 表向きは領民だし? こっちから手を出さなきゃ大丈夫な筈。貴族は平民を人として見てないらしいからちょっと怪しいけど。
 一大決戦前に余計な事はしないと思いたい。

 「遠目から領主軍対レーヴァンを観察したいな。あわよくば戦況をコントロールしたい」

 「危険では?」

 「ラブジーの格好して行くよ。最悪はあっちにマトを擦りつける」

 魔法で良い感じに互角になるように演じたい。
 痛み分けになるようにコントロールしたいです。

 「ふむ。そんな感じで行くか。後は神のみぞ知るって事で」

 馬鹿なりに精一杯考えました。
 上手くいってくれるようにお祈りでもしようかな。

 「スラムの抗争もいよいよフィナーレが近付いてきたな」

 「思ったよりも早く決着がつきそうですね」

 それな。適当な作戦が上手くいってるお陰なんだけど。
 もっと長期戦を覚悟してたから助かる。

 「わははは! 俺の覇道の第一歩だぜ!」

 「街一つでこれだけ苦労するとなると、世界を支配するというのは果たしないですね」

 「人材が増えればなぁ」

 色々な事を同時進行出来るぐらい人材が増えればなぁ。
 今は俺とカタリーナがほとんど差配してるし。
 いずれは、俺はぼーっとしてるだけで勢力が増えていくシステムを構築したいところ。

 「俺は座ってるだけで敬われる存在になりたい」

 「目標が大きいですね」

 無理かな?
 俺の一声で国が出来たり、潰れたり。
 フィクサーって感じのマフィアのボスになりたい。

 「では、今を頑張らないといけませんね」

 「その通り。今苦労をしておけば、後に楽が出来るはず」

 でも主人公ってのは、解決したと思ったらすぐに次の問題を引き寄せる散々だからなぁ。
 なんか滅茶苦茶主人公っぽいレイモンド君の運命力はいかがなものか。
 出来れば、暇しない程度の程々が嬉しいんだけど。

 「職業勇者は今の所ないからな。大丈夫だろ」

 俺が主人公な訳ない。そう思っておこう。
 どこかにきっと居るだろう勇者君が、波瀾万丈な人生を送ってくれるはずさ。
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