35 / 116
第2章 抗争
第33話 領主動きます
しおりを挟む「ボス。領主が動きそうです」
「え? マジ?」
これからどう動くか考えていたら、領主が騎士と衛兵を集めているとの情報が入った。
いつかはもっとまともな情報機関も作りたいんだけど、今は商会からの情報頼りな状況。
「なんで? 執事は疑ってたんでしょ?」
「正確な所は分かりませんが…。どうやら領主自ら陣頭指揮を執ってるみたいですね」
ふむん。領主は馬鹿なのか。
俺ですらお粗末な作戦だなと思ってたし、成功するとは思ってなかった。
「執事が落ち着かせてるんじゃなかった? 暴走したのか?」
「物資搬入を頼まれてる商会にうちの傘下も含まれています。そこで詳しい情報を聞いてくるように指示を出しておきますね」
「うん。よろしくね」
状況が大きく動きそうだねぇ。
俺がやった事とはいえ、ちょっと予想外だ。
ここからは持久戦になるかと思ってたし。
「では、纏めた情報をお伝えしますね」
領主軍がスラム鎮圧に動きそうだという情報を得てから数日。
色々な商会からの情報をカタリーナはすぐに纏めてくれた。
「スラムの情報が断片的に伝わってるみたいですね。ここ最近、抗争続きで疲弊してるのを知ったみたいです。そこを上手く掻っ攫おうとしてるみたいですね」
「俺達がやりたい事じゃん」
疲弊してるか? レーヴァンは依然勢力を保ったままだし。
ラブジーが弱ってるぐらいだろ。後の抗争はほとんど俺が傘下に収めて安定してるし。
「二大巨頭の一角が弱ってるというのが大きいのではないでしょうか。私達の事は知られてないみたいですしね」
「俺達は情報絞ってるしなぁ」
嘘っぽい本当の話とか、どうでも良い情報を垂れ流してるんだけど。
全ての情報を遮断するより、こっちからどうでもいい情報を流すほうが有効って何かで見たんだよね。それを実行してみました。
「領主軍の狙いは?」
「レーヴァンです」
なんでだよ。いや、ありがたいけども。
そこは弱ってるラブジーを狙うんじゃないの?
なんで健在のそっちを狙うかな。
「私じゃないでしょうか?」
「まさか、本当にレーヴァンがラブジーから攫ったと思ってるの?」
少し考えれば嘘って分かりそうなものだけど。
実際に抗争してるから真実味があるのかな。
「前回スラム鎮圧に失敗してるので、今回はかなり戦力も物資も集めてるみたいです。レーヴァンを鎮圧したらそのままラブジーに流れ込む可能性がありますね」
「領主軍は勝てるの?」
「領主側の戦力がはっきりしません。ここ、ペテスの防衛を任されるぐらいですから、精強な筈なのですが…。ここ最近は魔物狩りも冒険者が出張るばかりで、領主軍が対応したという話は聞けませんでした。噂では、前回のスラム鎮圧で主力部隊がほとんど殉職したとか…」
「レーヴァンと良い感じに引き分けてくれないかな」
それがベストなんだけど。
レーヴァンが弱ってるとなると、ラブジーが突っかかるだろ。
それを後ろから急襲してやりたい。
「うーん。賢い奴は何考えてるか分からんけど、馬鹿も何考えてるか分からんな」
まぁ、情報は得た。
この情報をどう上手く使うか。
「とりあえず領主軍は素通りさせろ。絶対喧嘩売るなって言っとけ。あっちもこっちを無視するだろ」
表向きは領民だし? こっちから手を出さなきゃ大丈夫な筈。貴族は平民を人として見てないらしいからちょっと怪しいけど。
一大決戦前に余計な事はしないと思いたい。
「遠目から領主軍対レーヴァンを観察したいな。あわよくば戦況をコントロールしたい」
「危険では?」
「ラブジーの格好して行くよ。最悪はあっちにマトを擦りつける」
魔法で良い感じに互角になるように演じたい。
痛み分けになるようにコントロールしたいです。
「ふむ。そんな感じで行くか。後は神のみぞ知るって事で」
馬鹿なりに精一杯考えました。
上手くいってくれるようにお祈りでもしようかな。
「スラムの抗争もいよいよフィナーレが近付いてきたな」
「思ったよりも早く決着がつきそうですね」
それな。適当な作戦が上手くいってるお陰なんだけど。
もっと長期戦を覚悟してたから助かる。
「わははは! 俺の覇道の第一歩だぜ!」
「街一つでこれだけ苦労するとなると、世界を支配するというのは果たしないですね」
「人材が増えればなぁ」
色々な事を同時進行出来るぐらい人材が増えればなぁ。
今は俺とカタリーナがほとんど差配してるし。
いずれは、俺はぼーっとしてるだけで勢力が増えていくシステムを構築したいところ。
「俺は座ってるだけで敬われる存在になりたい」
「目標が大きいですね」
無理かな?
俺の一声で国が出来たり、潰れたり。
フィクサーって感じのマフィアのボスになりたい。
「では、今を頑張らないといけませんね」
「その通り。今苦労をしておけば、後に楽が出来るはず」
でも主人公ってのは、解決したと思ったらすぐに次の問題を引き寄せる散々だからなぁ。
なんか滅茶苦茶主人公っぽいレイモンド君の運命力はいかがなものか。
出来れば、暇しない程度の程々が嬉しいんだけど。
「職業勇者は今の所ないからな。大丈夫だろ」
俺が主人公な訳ない。そう思っておこう。
どこかにきっと居るだろう勇者君が、波瀾万丈な人生を送ってくれるはずさ。
10
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
戦犯勇者の弟妹~追放された弟妹の方が才能あるけど、人類がいらないなら魔王軍がもらいます~
アニッキーブラッザー
ファンタジー
「お前たちの兄の所為で魔王軍に負けた」、「償え」、「王国の恥さらしは追放だ」。人類と魔王軍の争い続く戦乱の世で、人類の希望といわれた勇者の一人が戦死し、人類の連合軍は多大な被害を受けた。勇者の弟である『エルセ』は故郷の民やそれまで共に過ごしてきた友たちから激しい罵詈雑言を浴びせられ、妹と共に故郷を追放された。
財を失い、身寄りもなく、野垂れ死ぬかと思った自分たちを保護したのは、兄の仇である魔王軍の将だった。
「貴様等の兄は強く勇敢な素晴らしき武人であった。貴様らの兄と戦えたことを吾輩は誇りに思う。生きたくば、吾輩たちと共に来い」
そして、人類は知らなかった。偉大な兄にばかり注目が集まっていたが、エルセと妹は、兄以上の才能と力を秘めた天賦の超人であることを。本来であれば、亡き兄以上の人類の希望となるはずの者たちを自分たちの手で追放したどころか、敵にしてしまったことを。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
天職が『盗賊』という理由で追放されました。盗みを極めし男はやがて魔王と呼ばれる
こたろう文庫
ファンタジー
王国の勇者召喚により異世界に連れてこられた中学生30人。
その中の1人である石川真央の天職は『盗賊』だった。
盗賊は処刑だという理不尽な王国の法により、真央は追放という名目で凶悪な魔物が棲まう樹海へと転移させられてしまう。
そこで出会った真っ黒なスライム。
真央が使える唯一のスキルである『盗む』を使って盗んだのはまさかの・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる