22 / 116
第2章 抗争
第20話 縄張り
しおりを挟む「大混乱っすよ。特にボスのキレ具合が半端ないっす」
「そりゃそうだよな」
ラブジーの屋敷を荒らした翌日。
ぎゅうぎゅう詰めの隠れ家で、動向を探ってると潜入させていた詐欺師の男が帰ってきた。
空間魔法なんて知られてないからな。何もかも無くなってる屋敷なんて想像してなかっただろう。
これで結構な人数が盗みに来たんだと勘違いしてくれると助かる。
「縄張りに帰るなら今っすよ。レーヴァンの縄張りを荒らし回って来て、死傷者も何人か出たらしいっすけど、半日ぐらい休んでから次は屋敷に盗みに入ったと偽装した組織を襲いに行くらしいっす」
「ふむん。なら急いで戻ろう。眠たいし。何ルートかに別れて尾行に気をつけながら帰るぞ」
「俺はどうしますか? 潜入を続けた方がいいっすかね?」
「いや、一緒に戻るぞ。もうラブジーに用は無いし。これから襲撃に行くんだろ? お前も連れて行かれて死なれたら困る」
ラブジーはこれから滅茶苦茶大変な事になるだろう。物資も金も武器もない。
それなのに、レーヴァンと中堅組織との戦線を抱え込まないといけない。
大きい組織だからすぐに壊滅とはいかないだろうけど、最早衰退していくのは時間の問題だ。
その隙を上手く突いて、あの屋敷を手に入れたい。それまでに俺達の組織をもう少し大きくしておかないとな。
詐欺師の男…サギ男も一緒に連れ帰る。
こいつは今回一番活躍してくれたと言っても過言ではない。優秀って事が良くわかった。潜入させる時とかにかなり役に立つ。
こいつはアジト内でなるべく目立たないように隠しておいて、色んな所に潜入してもらうのが良さそうだ。とりあえず帰ったら、しっかりと褒美を用意しておこう。
サギ男だけじゃなくて、今回襲撃に参加した奴にもあげるけど。信賞必罰は大事です。
こうして俺達は縄張りに帰還した。
一応、隠れ家に何人か置いておくけど。ラブジーの動向を遠目からでも確認はしておいてほしいし。
「ふぃー。今回も疲れたなぁ」
「お疲れ様です」
縄張りの酒場に帰って来てからも忙しかった。
空き巣の成功を報告して、襲撃組には褒美としてお金やらお酒を進呈。
待機組は羨ましそうにしてたけど、君達にも活躍の機会はまだまだあるから頑張って欲しい。
「連れ帰って来た女性達はどう?」
「怯えはありましたけどね。ラブジーで働いてたという事もあって順応するのが早いです。明日から早速働いてもらいます。後で名前と職業と能力値を記載した資料を用意しておいて下さい。私が割り振っておきます」
カタリーナは現在、俺が持ち帰ってきた資料をまとめてくれている。
いつもなら文字の読み書き練習ついでに俺も手伝うんだけど、今日はお休みだ。
「縄張りに異変はなかった?」
「いつも通りですね。ピリピリしてるのは変わりありませんが」
とうとう二大巨頭が動いたからなぁ。無理矢理動かしたんだけど。レーヴァンもやられっぱなしじゃいられないだろうし。
ここからどれだけどさくさに紛れて縄張りを増やしていけるかが重要になりそう。
「縄張りも増やしたいけど、もう俺達の周りは中堅組織しか残ってないんだよな」
「小さい組織は今襲いに行っても縄張りが飛び地になってしまいますからね」
それな。今の俺達に飛び地を管理出来るほどの余裕はない。人数と優秀な人材が足りてなさすぎる。
カタリーナがなんとか上手く差配してくれてるけど、中堅組織に狙われたらまぁまぁやばい状況なんだよね。
「なんとか注意を俺達から逸らさないと。近くの組織には手を出さないようにしてるけど、それも時間の問題なんだよな」
「私達が居る所だけ静か過ぎるのも怪しいですからね。塩梅が難しいところです」
俺達の縄張りは現在、食堂が一つ、酒場が二つ、宿屋が二つある。後はその施設周辺の空き地を支配してる感じだ。これだけ見ると結構広そうに思えるけど、この領地はスラムが広過ぎる。
小さい組織と中堅組織の間ぐらいの規模なんだよね。
比較的表通りと近い事もあって、金のない低ランク冒険者達が利用するから実入りは悪くない。
宿屋なんて安めに設定してるから、結構満室な時があるくらいだ。
俺が拠点にしている酒場はほとんど誰も来ないけど。常に俺の組織の人間が屯してるからね。
「賭場とか作りたいけどまだ早いよな」
「情報ではこれだけ広いスラムに一つしかありませんからね。レーヴァンが仕切ってるみたいですし、利権を奪ってしまうと抗争の火種になるかと。それに問題を起こした時に対応する用心棒の役割が出来る人間がいません」
俺達の組織、戦闘員弱いもんね。今回の襲撃でレベルが上がった奴もいるけど。
それでも元が弱いからなぁ。俺が動かなくても、指示だけで組織を潰せるぐらい強くなるには、かなりの時間がかかりそう。
早く楽をしたいんだけど。まぁ、今の俺は弱いからね。戦いに参加すればその分強くなるから良いんだけど。
「いつまでもこんなちんちくりん頼りのワンマンチームは良くないよな」
「私達の縄張りに空き地が増えてきましたし、スラムの孤児を回収しに行きますか? 教育するなら早い方がいいですし、優秀な人材が居るかもしれませんよ」
「それはそうだけど。守りきれるかね? 最初は俺達の保護が必要だろ? 今の俺達にそこまで余裕は無いんだけど」
いつかは回収するから早い方が良いのは確かなんだけど。一回保護したら守りきらないと、俺のメンタル的にきつい事になっちゃうからなぁ。
でも先延ばしし過ぎるのも良くないし、俺も覚悟を決めるべきですかね。
10
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く
miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。
ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。
断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。
ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。
更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。
平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。
しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。
それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね?
だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう?
※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。
※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……)
※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。
聖女なので公爵子息と結婚しました。でも彼には好きな人がいるそうです。
MIRICO
恋愛
癒しの力を持つ聖女、エヴリーヌ。彼女は聖女の嫁ぎ制度により、公爵子息であるカリス・ヴォルテールに嫁ぐことになった。しかしカリスは、ブラシェーロ公爵子息に嫁ぐ聖女、アティを愛していたのだ。
カリスはエヴリーヌに二年後の離婚を願う。王の命令で結婚することになったが、愛する人がいるためエヴリーヌを幸せにできないからだ。
勝手に決められた結婚なのに、二年で離婚!?
アティを愛していても、他の公爵子息の妻となったアティと結婚するわけにもいかない。離婚した後は独身のまま、後継者も親戚の子に渡すことを辞さない。そんなカリスの切実な純情の前に、エヴリーヌは二年後の離婚を承諾した。
なんてやつ。そうは思ったけれど、カリスは心優しく、二年後の離婚が決まってもエヴリーヌを蔑ろにしない、誠実な男だった。
やめて、優しくしないで。私が好きになっちゃうから!!
ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。誤字もお知らせくださりありがとうございます。修正します。ご感想お返事ネタバレになりそうなので控えさせていただきます。
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
もう二度と、愛さない
蜜迦
恋愛
エルベ侯爵家のリリティスは、婚約者であるレティエ皇太子に長年想いを寄せていた。
しかし、彼の側にはいつも伯爵令嬢クロエの姿があった。
クロエを疎ましく思いながらも必死に耐え続ける日々。
そんなある日、クロエから「謝罪がしたい」と記された手紙が届いて──
2度目の人生は愛されて幸せになります。
たろ
恋愛
【愛されない王妃】
ジュリエットとして生き不治の病で亡くなった。
生まれ変わったのはシェリーナという少女。
両親を事故で亡くし、引き取られた親族に虐められ疎まれた。
そんな時シェリーナを引き取ってくれたのは母の友人だった。
しかし息子のケインはシェリーナが気に入らない。ケインが嫌うことで屋敷の使用人達もやはり蔑んでいい者としてシェリーナを見るようになり、ここでもシェリーナは辛い日々を過ごすことになった。
ケインがシェリーナと仲良くなるにつれシェリーナの屋敷での生活が令嬢らしくないことに気がついたケイン。
そして自分の態度がシェリーナを苦しめていたことに気がつき、落ち込み後悔しながらもう一度関係を新たに築くために必死で信用を得ようと頑張る。
そしてシェリーナも心を開き始めた。
駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜
あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』
という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。
それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。
そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。
まず、夫が会いに来ない。
次に、使用人が仕事をしてくれない。
なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。
でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……?
そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。
すると、まさかの大激怒!?
あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。
────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。
と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……?
善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。
────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください!
◆小説家になろう様でも、公開中◆
THE NEW GATE
風波しのぎ
ファンタジー
ダンジョン【異界の門】。その最深部でシンは戦っていた。デスゲームと化したVRMMO【THE NEW GATE(ザ・ニューゲート)】の最後の敵と。激しい戦いに勝利し、囚われていたプレイヤー達を解放したシン。しかし、安心したのも束の間突如ダンジョンの最奥に設置されていた扉が開き、シンは意識を失う。目覚めたとき、シンの目の前に広がっていたのは本物の【THE NEW GATE】の世界だった。
婚約者に浮気されていたので彼の前から姿を消してみました。
ほったげな
恋愛
エイミは大学の時に伯爵令息のハルヒトと出会って、惹かれるようになる。ハルヒトに告白されて付き合うようになった。そして、働き始めてハルヒトにプロポーズされて婚約した。だが、ハルヒトはミハナという女性と浮気していた。それを知ったミハナはハルヒトの前から姿を消し、遠い土地で生活を始めた。その土地でコウと出会い・・・?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる