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第2章 抗争

第14話 初陣

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 「よし。じゃあ行ってくる」

 「お気をつけて」

 今日は俺的には決戦の日だ。
 抗争が日に日に激化して、疲弊した小さな組織を潰す。そこで物資を根こそぎ頂いて、あわよくば有望な人間の勧誘。
 言い方が悪いけど捨て駒に出来る下っ端も欲しい。それなりに頭数がいないとな。

 「俺みたいなちんちくりんには従ってくれないだろうなぁ。契約で縛るしかないね」

 覚えたての暗殺者の技能を使って、気配を消しつつコソコソと目的地に向かう。
 今日狙う組織は、今では15人ぐらいしか残っていない。俺が調べた中では一番人数が少ない組織だ。
 縄張りも酒場一つとその周辺しかなく、俺の組織潰しの初陣には持ってこい。

 「三つぐらい戦線を掛け持ちしてるせいで、組織の人間が半分以下になっちゃったみたい」

 俺の裏工作が身を結んだ形だよね。まぁ、大きい組織は未だに様子見してるっぽいけど。
 小さくて馬鹿なところしか引っかかってくれていない。俺があんまり手を出していない事もあるんだろうけど。

 「ついた。見張りは二人か」

 目的地の酒場に到着。店の前に立ってるのは二人で、中にも何人か気配がある。

 「能力を見た感じ、殺しても支障はなさそうだな。生き残ったら契約で縛る感じで」

 ここからはスピードが重要になってくる。
 店の前の二人を倒した後は、素早く店に侵入して制圧せねば。

 「ビーム×2」

 俺は両手の指を銃みたいなにする。
 別にこういう事する必要はないんだけど、イメージがあった方がやりやすいんだよね。カッコいいと思ってやってるのもあるけど。男なら誰でも銃に憧れると思うんだ。種類とか全然知らないけど。

 「ムーブムーブ!」

 見張り二人が倒れたのを確認すると、ダッシュで店の中へ。
 素早さの能力値がDになったお陰で、前よりは断然早く動ける。
 しかし、いかんせんレイモンド君は小さいもので。歩幅がね…。早く大きくなりたいものです。

 「フラッシュ」

 店に入ると、走りながら準備していた光魔法で目眩しをする。
 ここは次の俺の拠点になる予定だし、暴れて破損させたくない。
 まぁ、複数を倒せる魔法を練習していないってのもあるんだけど。

 「おやすみなさい」

 フラッシュで目がやられてる間に、闇魔法のスリープをかけていく。
 外部からの刺激で簡単に起きてしまうが、俺がここを制圧する間ぐらいは持つだろう。

 「ひーふーみーっと」

 8人。外の見張りと合わせて10人か。

 「後5人ぐらい居るはずなんだけど」

 とりあえず2階に向かおうか。上にも気配があるし。ボスも居れば話は早いんだけど。
 その前に軽く鑑定して職業やら能力値を確認。

 「料理人やら農夫やら。即戦力はいなさそうか」

 これといって目立った職業や能力値の奴はいないな。剣聖とか勇者とか。こういう所に落ちてるのがご都合主義なんじゃないのかね。

 「カタリーナに会えた時点で充分か」

 あれこそまさにご都合主義。味方に出来て良かったぜ。

 そんな事を思ってると、2階が騒がしくなった。
 階下の異変に気付いたか。ゆっくりし過ぎたな。
 俺は机の物陰に隠れて、階段に照準を定める。

 「狙うは足。出来れば生け捕りにしたい。ミスって死んだらドンマイという事で」

 欲を出してこちらが死んだら意味がない。俺も中々異世界に染まってきたな。殺す事に抵抗がなくなってきている。
 前世からこんな割り切った人間だったのかね。大体の人間は追い詰められたらなんでもすると思うけどさ。日本にいて普通に暮らしてたら、殺しなんて選択肢は出てこないからなぁ。

 「ショット」

 階段からゆっくり降りてきた、大男の足を狙い撃つ。

 「うぎゃ!」

 転がり落ちてきた。当たりどころが悪かったら死んだかもね。うめき声はあげてるから生きてるでしょう。運の良い奴め。

 「誰だ! 出て来い! ここがレッドキャップの縄張りと分かってるのか!!」

 階段の上から叫び声を上げている誰か。
 しまったな。警戒して降りて来ないかも。

 「ばーか。あーほ。ドジ。まぬけ」

 とりあえず煽ってみる。語彙力が小学生でごめんなさいね。
 こういう経験がなかったもので。
 俺は一瞬だけ、階段前に姿を見せる。

 「子供一人にいいようにやられちゃってさ。今もびくびく怯えて降りて来られないんだ? 落ち目の闇組織のボスだから仕方ないかぁ」

 「ぶっ殺してやる!」

 馬鹿だろ。馬鹿だな。煽り耐性が低すぎる。
 俺の幼稚な煽りにも簡単に引っかかるとは。

 ドタドタと階段から降りてくる、髭面の中年おっさん。これがボスか。

 「流石にここまでの馬鹿はいらないや」

 鑑定でみても、攻撃力の能力値が高いだけの馬鹿だった。
 腕っ節で部下をまとめあげていたんだろう。鉄砲玉にはなりそうだけど、ここまで煽り耐性が低いといずれ馬鹿をやらかすに決まっている。

 何も考えずに降りて来た髭面を魔法で仕留める。
 今までお疲れ様でした。今日からは俺が組織を引き継ぎますからね。

 俺は仕留めたのを確認したあと、天井に向けてレーザーを2.3発放つ。

 「まだ居るんでしょー? 危害は加えないから出て来てくださーい」

 ボスは馬鹿正直に降りて来たけど、まだ気配が残っている。
 さっさと拘束させて欲しいもんだ。

 少し怯え気味に降りてきたのは三人の男達。
 俺ら油断せずに魔法を撃てる準備をしながら、少しずつ近付く。

 「これでこの組織の人間は全員?」

 俺が本当にクソガキで驚いたんだろう。唖然とした表情をしながらも、一人の男がうなずく。
 後の二人は、俺が子供だと知って露骨に馬鹿にした顔をしている。
 この二人は学習能力ないのかよ。せめて今ぐらいは取り繕ってほしかったね。

 「レーザー×2」

 脳天を貫く。早速危害を加えない約束を反故にしたけど仕方ないよね。

 「さて、お話しましょう」

 俺は生き残った一人に向き直り、笑顔でそう言った。何故か男から小さな悲鳴が聞こえた。
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