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第2章 抗争
第11話 スニークミッション
しおりを挟むコソコソとスラムを這い回るちんちくりんが一人。人目につかないようにキョロキョロとしながら、一人の男のを尾行している。
「こちらコックローチ。応答せよ」
ちんちくりんの名前はレイモンド。
何故か異世界に転生して、毎日が厳しいながらも成り上がる為に懸命に生きている。
「あかん。無理。ゲームみたいに思いながら気を紛らわせようとしたけど、吐き気が半端ない」
カタリーナと会議をして抗争を巻き起こしてやろうと画策してから1週間が経過した。
予想通り追っ手は出されてるみたいで、地下水道はどこぞの組織で溢れている。
俺はここ最近、ずっと情報を集めていた。
まぁ、コソコソと隠れて盗み聞きしてるだけだけど。職業の盗人のお陰で、コソコソするには向いている。ついでにパクれそうな食料はパクっているので、当面の食料問題は大丈夫そうだ。
カタリーナはあれから一度も外出していない。窮屈な思いをさせて申し訳ないけど、バレたら作戦が台無しになっちゃうから。
今は我慢して頂きたい。
そして今日。
俺は人を殺す。既に人殺し童貞は卒業してるものの、やはり気分が悪い。さっきから吐き気が止まらないぐらいだ。
「よーし。やるぞ。今日の目標はこいつともう一人。あまり時間はかけられない」
大丈夫大丈夫。何回も脳内シミュレートしたし、遠目から光魔法のビームで頭を貫くだけの簡単なお仕事だ。
それにこいつは悪人。殺しても罪悪感はない。
「こちらコックローチ。作戦を開始する」
ところで、コックローチってなんだろ。
スネークじゃありきたりすぎるから、それっぽいコードネームにしてみたんだけど。
辺りは既に暗くなっている。
他に人通りがない事を確認。スラムは夜こそが本番な所があるからな。
そろそろ活動が活発になってくる。
「ビーム」
指先から極細の光魔法で光線を出す。なぜこれに攻撃力があるのかは謎。正直、今の俺に魔法を考察してる余裕はない。使えるものは使う。今を生き残る為には仕方ないのだ。
「ヒット!」
思わず小声で叫びガッツポーズしてしまう。
この1週間はカタリーナに手伝ってもらって、この魔法ばっかり練習してきた。
光がちょっと目立つけど、発射から着弾までが速いから暗殺向きなんだよね。
「さっさと回収しないと」
どさりと倒れた男に近付き、お金と武器を回収。
食料は残念ながら持っていなそうだ。
「失礼します」
回収が終わると、短剣で適当にグサグサと刺していく。なるべく残虐に見えるように。これを見た同じ組織の人間が報復を考えるように。
「後はこれをさり気なく置いてと」
スラムの闇組織はそれぞれどこの所属か分かるように目印がある。
腕に巻き付けたバンダナだったり、タトゥーだったり。お揃いの服を着てるとこもあるな。
今回は別組織のバンダナを既に拝借してきている。
「これで上手い事騙されてくれれば良いけど」
流石にそんな単純馬鹿じゃないかな? まぁ、何度も繰り返してやれば動かざるえないだろう。
「あー気持ち悪い。さっさと次にいこ」
俺は3分程で作業を終わらせて、次の標的がいるであろう場所に向かう。
スラムの下っ端は行動がほぼルーティン化されてるから動きが分かりやすい。
俺も気を付けないとな。ルーティンのように地下水道に行ってた訳だし。
「こちらコックローチ。第一作戦は完了した。速やかに次の作戦行動を開始する」
あー吐きそう。気を紛らわせないとやってられん。早く慣れないと。いや、これは慣れていいのか? なんか分からなくなってきたな。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ。ご無事でなによりです」
その後もう一人下っ端を殺して同じ様な処置をした後、尾行に気を付けて隠れ家に戻ってきた。
「今日はなんとか成功したな。多分誰にも見られてないと思う」
「顔色が悪いですよ。今日はもうお休み下さい」
俺は回収したお金や武器、トレードマークをカタリーナに渡してすぐに寝転ぶ。
布団とかも早く欲しいな。いつまでも地べたにそのままじゃ体にも悪い。
そんな事を思いながら、俺はすぐに眠りについた。
「レベルが一つ上がってる」
翌朝。いつもより少し遅めに目を覚ます。
カタリーナも既に起きていたようで、膝枕されていた。頭の感触が幸せです。
で、昨日はちょっと疲れてて確認するのを忘れていたが、自分のステータスをチェックしてみた。
能力値は上がってないけど、レベルが6になっている。
「人間の経験値が美味しいのか、俺が倒してる魔物が弱過ぎるのか」
それとも経験値なんてないのかね。弱い魔物を倒しまくっても上がらなかったレベルが、人間二人殺しただけで上がる。
なんか、それまでの苦労とかが反映されてたり?
「今日も行かれるのですか?」
「うん。なるべく火を絶やさないようにしないとね。今はボヤ騒ぎにもなってないかもだけど、いずれ大火事になるぐらいにはしないと。初動が大事だよ、こういうのは」
知らんけど。でも単発じゃ効果は薄いと思うんだよね。小競り合いで終わらせないようにしないと。
出来れば長引いて全ての組織が疲弊してくれたら文句ないな。
流石にそこまで上手くはいかないだろうけど。
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