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第1章 転生と出会い

第9話 確保

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 「ラノベかよ」

 「? らのべ?」

 カタリーナにあそこで倒れてた訳を聞いたんだけど、その内容はラノベでよくある展開そっくりだった。まぁ、想像してた厄介事よりはマシな雰囲気で良かったな。

 「そいつらは今どうしてるの?」

 「分かりません。こちらも必死だったので、もしかしたら勢いあまって殺してしまった可能性もあります」

 カタリーナはエルフの国を追放されてからとにかく遠くへ行こうと、約一年かけてスパンダ帝国にやってきたらしい。
 因みにここはスパンダ帝国のペテス辺境伯領らしい。初めて知りましたね、はい。辺境伯って結構上の爵位じゃなかったっけ? しみったれた街だと思ってたけど、もしかして結構広いのかね?

 で、この辺境伯領は魔物が多いという事で、皇帝から辺境伯に防衛を任されてる街らしく、魔物が豊富に存在して、冒険者の仕事が多いらしい。
 その割には全然見かけないなと思ったけど、俺はほとんどスラムから出てませんでしたね。

 「って、あの時夜に外に出なくて良かったな。死ぬ所だったかもしれん」

 「外に出ようとされてたんですか? 出なくて正解ですよ。ましてや夜なんて。ここは魔力溜まりが多いので魔物の質は高く、量も多いみたいです」

 ふぇー。門が閉まってて助かったー。なんならここ最近は少し遠回りして外壁に穴がないか探してたからね。スライムとネズミばかりの生活に飽きてきてたからさ。空いてなくて良かったぜ。

 カタリーナはこの辺境伯領にやって来てから、すぐに冒険者になってソロで活動してたらしい。
 エルフで美人という事で一悶着あったそうだけど、この領には他にも少数だけどエルフがいる。
 わざわざ国を出る変わり者エルフは、カタリーナに興味を向けるでもなく、挨拶程度の関わりしかない模様。追放されたとか言わなきゃ分からんだろうしね。

 しかし、思った以上に魔物が強くてソロでの活動に限界を感じていた頃に、一組のパーティーからお誘いを受ける。
 カタリーナは丁度良かったので、このパーティーに臨時加入。昨日が初日だったらしい。

 「で、冒険から帰ってきた夕食の席でクスリを盛られてあわや奴隷行きの危機だったと」

 「危ないところでした」

 カタリーナは強力な睡眠薬を、自分の足に短剣を刺す事で対抗して、食堂で戦闘になったらしい。修羅かよ。
 意識が朦朧としてあんまり覚えてないらしいけど、魔法を撃てるだけ撃って逃げたっぽい。その間に剣で斬られたり、短剣で刺されたりもしたけど人目から隠れる為にスラムに逃げ込んだ。
 そしてたまたま見つけた地下水道に飛び込み、奥に奥にと進んだ所で力尽きそうになってた訳だ。

 「ふーむ。殺してたら面倒な事になりそうだなぁ」

 「食堂には他の一般人の方もいました。その方達に危害が加わった時点で衛兵が動いているのは間違いありません」

 カタリーナさん指名手配犯じゃん。スラムにも捜査の手が伸びてきたりするんだろうか。

 「およ? 一緒にいたら巻き込まれるね?」

 「はい。私もすぐに去ろうと思ってます。本当は何かお礼をしたい所なのですが…。荷物等は全て宿に置きっぱなしで今頃は回収されてるかと…」

 まぁ、お礼なんてもらってもな。お金なんて貰っても現状使い道がないし。
 俺みたいなガキが持ってたら、大人に取られる。
 見るからにスラムっ子がおつかいなんかもしないだろうし。食料ぐらいかな。欲しいのは。
 あ、いや、待てよ。

 「スラムも捜査されるのかは分からないけど、行く宛がないならここに居てもいいよ」

 「よろしいのですか? 巻き込んでしまうかもしれませんが」

 「うん。その代わりお願いもあるけど」

 正直、カタリーナを庇う事は賭けだ。もし共犯者としてバレたら、俺も一緒に捕まるだろう。
 でもだよ。もし、この窮地を抜け出せたら俺の将来展望が明るくなる。
 こんな優秀なチートキャラを逃したくないという理由が大半だけど。

 「お願いですか? 夜伽をするには少々歳が足りてないかと思われますが…」

 「なんでだよ。違う違う。とりあえず文字の読み書きを教えて欲しい。出来るよね?」

 「それぐらいなら全然構いませんが…」

 夜伽…。心踊る展開だけど、こんな不衛生な場所でハッスルなんてしたくない。
 それにレイモンド君が精通してるのかもしらない。前世と体の仕組みが変わらないなら、そろそろしててもおかしくないけど。

 「じゃあお願いね。これからよろしく」

 「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します」

 ふははは。優秀な人材を確保したぜ。俺の異世界人生の第一歩って感じだな。
 具体的にこれからどうするかは決めてないけど。

 「15歳になったら商会でも作ろうかと思ってたけど、とりあえず方針転換する必要があるかもな」

 「私のせいですね」

 いや、この街から抜け出せれば捜査の手も伸びないか? 抜け出す方法が分からないんだけど。

 「当初考えてた裏社会を牛耳る妄想が現実化してきたな。とにかく力を持てば良いんだ。簡単に手出し出来ないぐらいの力があれば」

 せっかく異世界に来たんだし、王道じゃなくて現代じゃ出来ない事をしたいなと思ってたのも事実。
 海外ドラマでマフィアやギャングなんかがかっこいいなとも思ってた。

 「まっ、それはあくまで自分が殺される訳じゃないからだろうけど」

 実際現代でそんな事してたら、俺の才覚ではあっけなく殺されるか捕まるのがオチだ。
 でも異世界なら。大抵の事が暴力で罷り通りそうな世界なら。
 俺のこんな妄想も叶えられるんじゃないだろうか。幸い、レイモンド君は優秀なキャラっぽいし、カタリーナというチートキャラも味方に出来た。
 どこまでやれるか分からないけど…。

 「裏社会王に俺はなるっ!」

 ドン! って効果音がつきそうな感じのセリフを吐き、握り拳を突き上げながら所信表明する。
 それをカタリーナは生暖かい目で見ていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 これにて第1章は終了です。
 ちょっと無理矢理気味ですが、主人公は裏社会の道に進む事を決心しましたw
 もうちょっと上手に話を膨らませたかったんですけどね…。
 作者の文章力では中々難しかったです。

 閑話を一話挟んでから次章に向かいますが、次章は早速抗争編に突入です。
 主人公が小賢しく立ち回っていきますよ!


 作者は他にも作品を更新してますので良ければそちらもご覧下さーい。

 ではではまた次章で~。
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