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第6章 春到来
第146話 初失点
しおりを挟むピンチを華麗に捌いた俺はそれからもすいすいと投げていった。
相変わらず審判の判定は渋くて、四球を一つを出してしまったり、ポテンヒットも一本打たれたが無失点で九回の表までやってきていた。
「ガッデム!! マジかよ!!」
そしてワンアウトを取り、迎えるは4番。
その初球だった。
審判が渋いという事で、少し真ん中寄りになったのもあるだろう。
アウトコースへのストレートがバットと正面衝突。打球はセンターバックスクリーンに飛んで行った。相手ベンチは大盛り上がりだ。
「えぇ。確かに若干甘めにはなったけど。あそこまで持っていかれるのかよ」
マウンド上でがっくりと項垂れる俺。
油断は一切していない。球速だって149キロ出てるんだ。途中登板という事で、疲れてもいない。
ヤマ張ってたのかなぁ。完璧にもってかれちゃったよ。
一応タイガがマウンドに来てくれる。
項垂れてるから慰めに来てくれたんだろう。
「いよっ! 祝! 甲子園初失点!」
「うるさいやい!」
全然違った。タイガがそんなに優しい訳なかったか。お前は女房役だろうよ! ニヤニヤするんじゃありません! リードが読まれてたせいじゃないのかね?
「あーあ。これでファン100人は減ったね。間違いない」
「それでも俺の人気力は53万だぞ。まだまだ沢山いるわい!」
一通り煽って満足したのか、タイガはニコニコしながら帰っていく。
まぁ、お陰で少しは落ち着いたけど。ってか、これで別にパフォーマンスが落ちる事はない。
これから長く野球を続けていくんだ。一点取られたぐらいで一々落ち込んでられない。
「でも甲子園では無失点継続したかったなー」
そんな事を思いながら、気持ちをリセットする為に後ろを振り返る。
ショートでは隼人が鼻で笑ってるし、サードはレオンが嘲笑している。
ふむ。いつも通りで落ち着きますわぁ。これで逆に心配そうな顔をされると俺が焦る。
こいつらはこうでないとな。
そして、その後は二者連続で三振を奪い試合終了。最後のストレートは153キロ出てたし、しっかり鬱憤は晴らせたと思って良いだろう。
「しかし、相手は清々しい顔してたな」
「そのムカつくにやけ面からホームランを打てて満足したんじゃない?」
挨拶した後の相手はすっきりした顔をしていた。
そんなににやけてたかな? 今日はそんなにだと思うんだけど。
「今日はエゴサするのちょっと嫌だなぁ。絶対アンチが騒いでるぜ」
「たかが一点取られたぐらいで大袈裟な。前回の完全試合が神がかってたんだよ?」
一旦上げてしまったハードルってのは、中々下げれないもんなんです。
期待外れな結果に終わると、無責任に叩くのがアンチってもんですよ。
「まっ、そんなの気にしてたらキリがないからな。今日は程々にしておこう」
「しないって選択肢はないんだね」
それはない。チヤホヤされたい。アンチの書き込みは見ないようにします。
見なけりゃ居ないのと一緒だからさ。
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