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第6章 春到来
第144話 VS凍見2
しおりを挟む三回裏の龍宮高校は無得点。
判定は相変わらず微妙。でもどっちとも取れるぐらいのボールだからなんとも言えない。
せめて相手と統一して欲しいもんだ。
四回表。出番があるかなと思ってたけど、大浦は守備に助けられながらも、この試合初の三者凡退で切り抜ける。
「ウルっちー! 流石っすー!」
「あはは」
ウルは足が速いだけあって、センターの守備範囲がかなり広い。打球判断も的確だし、俺も何度も助けられた。今回も左中間に飛んだ打球を華麗にスライディングキャッチでヒットを阻止している。
「でも観客のため息はベンチにいる俺まで聞こえてきたぞ。龍宮高校も一躍人気校にはなったけど、応援は相手の方が大きそうだな」
「向こうが負けてるってのも大きいな。どうしても負けてる方を応援したくなるのは、高校野球あるあるだ」
俺も前世では21世紀枠が勝ち残ってたりしたら、良く知らなくても応援したもんだ。
日本人はそういうとこあるよね。仕方ないさ。
「お前ら、相手に同情して手を抜いたりすんなよ。しっかり叩きのめしてこい」
監督が当たり前の事を言うが、これは大事な事だ。無意識ってのもあるからね。
観客の雰囲気にやられてしまわないように、注意しておかないとな。
そしてその指示に応えるかのように、この回先頭のレオンが四球で出塁して大浦がホームラン。
4番ピッチャーで甲子園でホームランですか。しっかり主人公してますねぇ。本来そのポジションは俺のはずなんだけど。
「ええっと? 大浦も今大会三本目? やばいじゃん。レオンの影に隠れてるけど、そろそろスカウトが本格的に注目し始めてもおかしくないぞ」
「身長で損してる所はあるけど、あそこまで結果を出せばねぇ」
後は木製バットへの対応か。練習では問題なさそうだけどな。これからが楽しみだ。まだ高校生活は2年近くあるんだしね。
隼人は三振に倒れ、清水先輩は特大のセンターフライ。あの人はいつも後一歩の所で届かないんだよな。俺が言えた事ではないんだけど。甲子園でもホームランは打ってるしね。
何かが噛み合ってないのかもね。アジャスト出来るようになれば、一気に化けるだろう。
続く7番の先輩も倒れて、この回は終了。
大浦のツーランで2点を追加して11-4。その差は7点に広がり、安全圏なのは間違いない。
そして大浦は五回のマウンドに上がる。
前の回で三者凡退に仕留めれたから、そのままの流れでいけるかなと思ったけど、残念ながらそこまで甘くないらしい。
先頭打者にヒットを打たれると、続く打者にもヒットエンドランでノーアウト1.3塁というピンチになってしまった。
「豹馬、頼むで」
「うぇいやー」
監督が審判に投手交代を告げて、俺の名前がアナウンスされる。
凍見高校寄りだった甲子園も一気に大盛り上がり。これだけで承認欲求が満たされるね。
「いやはや、人気者はつらいね」
「思ってもない事言わないでよ」
「豹馬っちー。後は頼むっすー」
大浦はそのままレフトに向かい、外野守備につく。あのバッティングにはまだまだ活躍してもらわないといけないからね。
「先発大好きだけど、リリーフ登板でピンチをビシッと抑えたりするのもカッコいいよなぁ」
カッコいい登場曲と共に登場する守護神とか、なんか良いよね。
トレバー・ホフマンの『Hells Bells』とかさ。
あの鐘の音は絶望感満載だろ。知らない人は是非動画サイトで見て欲しい。めちゃくちゃカッコいいから。
「さて、トレバー・タイムならぬ、豹馬・タイムといこうかね」
「初球の入り方には気をつけてよ」
お任せあれ。俺のリリーフ適性を見せてやるぜ。
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