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第6章 春到来
第143話 VS凍見1
しおりを挟む一回表。
大浦はしっかりと2点取られて帰ってきた。
最初に二者連続で四球を出したのがいけなかったね。ガチガチに緊張しすぎだよ。
「んはー。緊張したっすー」
「打席では緊張しないのに、なんで投手になると緊張するんだ?」
「自信の問題っすよー。俺、バッティングには最近ちょっと自信があるんす」
なるほど。自信か。分かりやすい解答だな。
それなら仕方ないか。……ちょっと? あれだけ打ってて、自信はちょっとなの?
俺は全く打ててないけど自信満々だよ?
「さーて。大浦が点を取られる事は分かって事だろー? さっさと取り返すぞー」
そして一回裏。
ウルから清水先輩まで、ひたすら連続ツーベース。これ、なんか記録ないの? 1番から6番まで全部ツーベースよ? 珍記録すぎない?
一気に5点を取り返し、尚もノーアウト二塁。
7番は進塁打でようやくアウトになったものの、8番がタイムリー。9番は三振で、なんと打者が一巡してしまった。
そして早くも二打席目のウル。12球粘り四球と確信して一塁に歩こうとしたが、判定はストライク。
明らかにボール気味だったけど。まぁ、ヘボ審判ならストライクとコールしてもおかしくないかもしれない。
「流石に秋大の時みたいに露骨に贔屓みたいな事はしないと思いたいけど」
「タイガにはコースを気を付ける様に言っておかないとな」
大差がついたりすると、審判はコースが広くなったりする事があるからね。
とはいえ、まだ一回なんだけど。マジで秋大の時みたいなのは勘弁だぞ。
ただでさえ、投げてるのは投手に慣れていない大浦なんだ。
下手したら乱打戦になる事もあり得るな。
「ちょっと早めに肩を完成させておくか。こういう時は何が起こるか分かったもんじゃない」
そして、俺の予想は的中する。
もしかしてこれもフラグになっちゃったりするんだろうか。
……もう俺、何も喋れなくなりそう。
大浦は二回は無失点で終えて、龍宮高校は更に3点を加える。
しかし、コース判定はやはり微妙。
臭いところは全部ストライク判定だった。
そして三回。
ようやく大浦は落ち着いて投げ始められたと思ったんだが、こっちの臭いところは全部ボール。
露骨すぎず、どっちとも取れるボールだから文句は言えないんだけどさ。
さっき、うちの攻撃の時はストライクだったよねって思うのは仕方ない事だろう。
大浦は四球でリズムを崩して三回にまた2失点。
ちょっと嫌な流れになってきたな。
9-4とまだ5点のリードがあるものの、こうも微妙な判定が続くと投手に慣れていない大浦はストレスが溜まるだろう。
「豹馬。次、得点圏にランナー進んだら交代や。厳しい場面での登板になるけど頼むぞ。大浦はそのまま外野に入って、取られた分をしっかり取り返してこい」
「かしこまり」
「了解っす」
監督も嫌な流れを感じ取ったのか、点を取られたらではなく、得点圏に進んでからの交代を言ってきた。
これ以上点はやらないという事だろう。その期待にしっかり応えてみせますぜ。
「せっかくの甲子園ピッチャーデビューなのに、ヘボ審判のせいでケチがついたな」
「龍宮は敵が多いっすねー」
高校生にこんな仕打ちして恥ずかしくないのかね、高野連の老害共は。
そんなに俺達が活躍するのが気に食わないのか。
よろしい。俺様が叩き潰してやる。
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