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第6章 春到来
第129話 VS神町2
しおりを挟むゆっくりと、今の気持ちを噛み締める様にマウンドに向かう。
ルンルン気分なのは間違いないが、とうとう来たなって気持ちもある。
「ふははは! これが甲子園! たまらんな!」
マウンドに立ってぐるりと周りを見渡す。
これが高校球児の夢の舞台ですか。
うむうむ。気分爽快である。
「出来れば、真っさらなマウンドに立ちたい所だったけどな。こればっかりは仕方ない」
投球練習をして、いざ勝負。
一番バッターからゴリラみたいな選手が出てきやがって。目もギラギラさせて早く打たせろとばかりに、俺を睨んでいる。
いつまでそんな顔が出来るのか見物ですな。
記念すべき、甲子園での初球。
読まれてようがストレートを投げると決めてる。
流石にど真ん中には投げないが。
いつもの様に、ノーワインドアップから足を上げて、体を少し捻る。
左腕を体に巻き付けるように、出来るだけ出所が見えない様にギリギリまで腕の振りを遅らせて、最後に鞭の様にしならせて、タイガが構えてるミットを目掛けて、思いっきり投げ込む。
相手のバッターも、ストレートにヤマを張ってたのか、しっかりと振ってきたが、ボールの下を振り空振り。
チラッと球速掲示板を見ると、153キロと表示されていた。
あれだけ騒がしかった甲子園が、一瞬静まり返る。そして一拍置いてから、割れんばかりの大歓声。
「あー気持ちいい。これこれ。これと三振奪う為に野球をやってんだよな」
まだ三振を取ってないのに、既に脳内麻薬がドバドバと出て来る。
初球だから全力で投げたけど、ここからはペース配分もしっかり考えて投げないとな。
これでインパクトは残せただろう。
その後、もう一球ストレートを投げてファールでカウントを稼ぎ、最後はチェンジアップで三振。
相手はストレート勝負を望んでいたんだろうけど、それに付き合う気は毛頭ない。
タイミングを崩しすぎて、片膝をついたバッターをマウンドから見下ろす。
「んふふふ。良い顔してるねぇ。今日は何回そんな顔を見せてくれるのかな」
ストレート真っ向勝負が正義とか思ってるなら、ごめんなさいね。
誰になんと言われようが、三振を取った奴が偉いのだ。
文句は俺から打った奴から聞きます。
続く2番相手には、敢えてチェンジアップ2球で空振りを取ってあっさりと追い込む。
先頭バッターの初球に投げたストレートが余程印象に残ってるんだろう。
全くタイミングが合っていない。
そして、真ん中高めに大きく外したストレートに手を出して三振。
気持ち良いぐらいに引っ掛かってくれるね。
3番は一際体が大きい左打者。
情報では、地方大会でも3本ホームランを打っている強打者である。
「左打者なんてカモでしか無いんだよなぁ」
勿論、油断なんてする気はないが、俺は左打者は大好物である。
レオンやら、白馬君に打たれてるからちょびっと自信を無くしそうな時もあったが。
長い腕で背中から投げられてる様な感覚になってる筈なんだけどね。
あいつらは、俺がぶつける訳ないと思ってるのか、がっつり踏み込んでくるからな。
信用を逆手に取られてる感覚です。
で、この3番打者はどうかと言うと、しっかり腰が引けている。
インコースへのストレート2球で、若干及び腰になってる事を確認し、最後はアウトコースへストライクからボールになるナックルカーブで空振り三振。そんな腕だけで、バットを振っても届く訳なかろうに。
三者連続三球三振で最高のスタート。
大きな拍手に迎えられながら、マウンドから立ち去る。
チラッと相手ベンチを見てみるけど、まだまだやる気はあるみたいだ。
まぁ、そんな簡単に心を折るなんて出来ないよね。
この試合を通じて、どちらが上かしっかり教えてやろう。
俺がキングだ。
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