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第6章 春到来
第125話 VS龍山4
しおりを挟む「ほんと、笑い事じゃないんだよなぁ」
「あいつら、レオン以外でも手抜いてやってたんちゃうか?」
「いや、流石にそれは無いと思いますけど。レオンも手を抜いてやって訳じゃないですし」
作戦ですよ。作戦。
手を抜くのは流石に失礼ですからね。
先を見据えるってのは悪い事じゃないし。
俺の縛りプレイも、課題の為にやってた訳で。
現在、六回裏に入った。
ブルペンに行く前に、監督の近くでぼそっと呟くと、監督もため息を吐きながら同意する。
原因は表の攻撃。
クリーンナップから始まる好打順で、先頭のレオンがこの日二本目となるホームラン。
そして、続く大浦もバックスクリーンへのホームラン。
隼人はセカンドゴロに倒れたものの、清水先輩がレフトのポール際にホームラン。
バットの根っこ付近だったのに、パワーで持っていった。流石二代目ゴリラである。
隼人を間に挟んだので、三者連続ホームランとはならかったが、それでも三本のホームランである。
珍しく隼人が申し訳なさそうな顔をしてたのが、笑いを誘ったな。
あの子はほんとにランナーが居ないとねぇ。
金子は甲子園の圧にびっくりしながら、マウンドに上がったが、点差がそれなりにある事からリラックスして投げれてるみたいだ。
七色のカーブを見せてやれ。カーブマスターの称号はお前のものだ。
俺はブルペンでダラダラとキャッチボールをしてるだけなのに、試合がスルスルと進んでいく。
両校ヒットは出るものの、点は入らず膠着状態。
「お? 親の七光りやんけ。こんなリードしてんのに出して貰われへんのか? 可哀想になぁ。実力に見合わん事してるからやで。まずは坊主にして誠意見せんかい」
甲子園の高校野球の時のブルペンって、観客席から近いんだよね。
だから、こんな野次とかが普通に聞こえる。
別に叩くのは良いんだけどさぁ。
せめて、それまでの試合とかを見てからにしてほしいよね。
正直東京の秋季大会とか見てたら分かると思うんだけど。
ここで俺が真剣に投げ始めたらどうするんだろうなとか思いながらも、キャッチボール以上の事はしない。
なんかムキになって投げ始めたみたいでかっこ悪いし。フェンスに向かってボールを投げてやろうかとは思ったけど。
でも、無抵抗もまたなんか負けた気がするから、野次ってきた男の方に向かって両手で耳を塞ぐポーズをしてやった。
中指立てるか迷ったけど。流石にそれはまずいからね。
そんなポーズをしたら、滅茶苦茶写真撮られたけど。ネットで炎上したりするのかね。
「まっ、そうなれば次の試合で実力で黙らせてやれば良いだろう」
ぐうの音も出ない程、完璧なピッチングを見せてやる。パーフェクトとかノーノーは運も絡むから、難しいけど、完封はしたいな。後、三振一杯。
そんな事を考えながら、ベンチに戻る。
試合は既に九回表で、裏もそのまま金子で終わりそうなんだよね。
正直、一点ぐらいは取られると思ってたけど、なんとか無失点で終わりそうだ。
「なんか盛り上がってたけど、ブルペンで何かしたの?」
「野次馬とバトル」
「ふーん? 珍しいね。いつも気にしてないのに」
「甲子園の野次は一味違うんだぜ。勉強になった」
タイガとブルペンであった事を話ながら、試合を眺める。
親の七光りはネットで言われてるから知ってたけど、実際言われたらピキッとくるね。
確かに、かなりの援助をしてもらってるけど、それに見合う努力はしてきたんつもりなんだよなぁ。
関東方面だと、俺はそれなりに有名だったし、新鮮な感じの野次だった。
「所詮、中学レベルの人気者だったって事だな。より一層、次の試合のやる気になった」
そして試合は終了。
そのまま無失点で終わると思われた金子が、代打の最終打者にホームランを打たれたのはご愛嬌。
本人は落ち込んでたけど、最後の最後で油断したね。これもまた経験よ。俺も稀にやらかすからな。
出会い頭とか。コツンといかれる時がある。
とにかく龍宮対龍山のドラゴン対決は、6ー1で勝利。龍宮高校の甲子園初勝利で幸先良くスタートを切った。
応援ありがとうございます!
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