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第5章 甲子園へ
第104話 キャプテン復活
しおりを挟むまもなく、対外試合禁止期間に入る冬目前。
ギリギリまで練習試合を入れていた、龍宮高校ではキャプテンが復帰登板していた。
「球速は140キロ出るか出ないかぐらいか。全盛期には程遠いな」
落ちた筋肉はまだ完璧に戻ってないから仕方ない事だと思うけど。
残念そうなキャプテンだけど、顔はすごい輝いてるんだよな。
投げられる喜びを味わってる感じ。
分かるぞぉ。俺もそうだった。
「違和感とかはないですか? 久々過ぎて感覚が分からないかもですけど」
「うーん…。変化球が抜けまくるのが気になるぐらいかなぁ。ブルペンでも分かってた事なんだけど」
本当は、対外試合禁止期間が終わるまでキャプテンは練習試合で投げる予定は無かったんだけどね。
監督が、冬が始まる前に不安要素は曝け出した方が練習に身が入るだろって事でギリギリになって登板した。
あんなビール腹なのにしっかり監督してんだよな。
「指先の感覚的なやつですかね。約3ヶ月も実戦から離れてたら仕方ないです」
「練習出来ない間もボールにはずっと触ってたんだけどな。まぁ、これは覚悟していた事だし冬でしっかり戻すよ。練習試合で分かって良かった」
監督のお陰ですな。
やっぱり実際試合で投げてみないと分からない事もあるって事だ。
「キャプテンの冬は地獄だろうなぁ。成長期もほぼ終わってるから体苛めたい放題だし」
「はははっ。望む所だよ。せっかく後輩に甲子園に連れてって貰えるんだ。なんだかんだで投げれないのは悔しかったし、この気持ちで冬の練習を頑張って春にぶつけるよ」
「母さんがルンルンで練習メニュー組んでましたからね。覚悟しておいて下さい」
「はははっ…」
気合いを入れていたキャプテンだが、目からハイライトが無くなっていた。
想像しちゃったんだろう。
母さんのメニューは死のギリギリをついてくる様な感じだからな。
「ま、俺も人の事言えないんだが」
「共に地獄を乗り切ろう」
ガシッと握手を交わす俺とキャプテン。
俺も骨端線が閉じて本格的に体を作れる様になったからなぁ。
今までは成長を阻害しない様に体に配慮したメニューをこなしてたけど…。
ああ。想像しただけで寒気がしてきた。
「乗り越えられれば、パワーアップは約束されてるんだ。約4ヶ月の地獄の始まりだね」
「4ヶ月。4ヶ月かぁ。長いなぁ。何回か泣くかもなぁ」
まぁ、前キャプテンのゴリラ先輩みたいにゴリマッチョになる訳でもないし、そこは気が楽かな。
俺はマッチョさより、しなやかさを損なわない体作りをするので。
「流石にこの針金ボディからは卒業するけどな。この冬で針金から小枝ぐらいにはランクアップしたい」
「そんな大差ないように思うけど?」
「急に体を大きくしすぎると、制御出来ませんから。ゆっくりと焦らずって感じです」
豹馬君は学びましたからね。
急に身長が伸びて制御出来なくなった事は忘れない。
「まっ、それはともかく。復帰おめでとうございます、キャプテン」
「ああ。ありがとう」
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