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第4章 秋の戦い
閑話 レオンとの出会い3
しおりを挟む「才能って残酷よね」
「なんも言えねぇ」
父さんが来てからバッティング練習を開始し、初めてという事で、父さんはレオンを中心に面倒を見てたんだ。
「おじさん、完全に火付いちゃってるよ」
「育成厨だからなぁ」
順番待ちしてるマリンと喋りながらレオンと父さんを見る。
父さんは、もう目を輝かせて嬉々として教えてるし、レオンも最初はガチガチだった癖に、今では真剣に話を聞いて練習している。
最初は普通だったんだ。
右利きだし、右打席に入って軽く素振りをして父さんがアドバイスをしてってやってたんだけど、試しに左打席に入って素振りしてみると、スイングの鋭さが全然違った。
中学生になってから、俺って打撃センスないのでは? と思い始めた俺でも分かる綺麗なスイング。
そんなもの見せてしまっては、我が家の育成三大巨頭の一角、三波勝弥は黙っていない。
そこから、機械やらなんやらを持って来て、重心移動とか腰の動き、目線までも指導してレオンに叩き込んだ。
レオンも初心者だったのが良かったのか、スポンジの様に吸収。
あれよあれよとマシンの120キロまでは打ち返せる様になっていた。
初心者の中学1年生でこれは十分すぎる。
それから、全員一通りの練習が終わり、よしレオンをシニアに誘おうと思っていた頃。
父さんが不意に提案をした。
「豹馬、最後にレオンに投げてやれ」
「う? 別にいいけど」
「レオン君も良い経験になると思うから打席に入って打ってみるといい。豹馬は親の贔屓目を抜いて見ても才能がある。まだまだ荒削りな所はあるが、一種の一流のボールを体験してみよう。マシンばかりというのもよくないしな」
「わかりました」
ふむ? ふむふむふむふむ。
そこまで言われちゃあ、やるしかありませんな!
ええ、ええ。
一流の。一流の! ボールというものを見せてやりましょうぞ!
「うわぁ。馬鹿みたいに天狗になってるよ」
「ちっ。仕方ねぇだろ。あんな奴だが才能はありやがるからなぁ」
ふはははは!
外野が何か言ってるが聞こえないなぁ!
それから大体五打席分ぐらい勝負したかな?
これでも、管理者さんにチート紛いの物を貰ってる身である。
流石に初心者に負ける訳にはいかんと気合いを入れて抑えました。
最後はかなり鋭い当たり打たれたけど、ファールっぽかったからノーカンである。
かなりひやっとしたな。
「凄いな、豹馬は。機械で打つのと、人に投げてもらうのとではこんなに違うとは。良い経験になった。ありがとう」
「ふはははは! どう致しまして! 最後はかなり良い当たり打たれたから危なかったけど。……まぁ、未だに父さんにはボコボコに打たれるんだけどね」
「まだまだ息子には負けーん!!」
負けろってんだ。
もう30後半だろうよ。
動体視力も衰えてる筈なんだよ。
現役からも退いてる訳だしさ。
「それで…野球やってみる気にはなったか? もしやる気があるんなら中学の部活じゃなくて、シニアはどうかなと思って」
「ああ…。その事なんだがな。その…野球ってどれくらいお金がかかるんだ? それに当番とかもあるだろう? 俺の家は、つい最近母子家庭になってな。金銭面でも、時間的な面でも余裕がないんだ」
あーっと。なるほど。
そういう家庭の事情があるのか。
困ったな。
恥ずかしながら、俺の家は恵まれているのでどれだけお金が掛かるかあまり詳しくない。
「良かったら俺から説明しようか?」
と、いう事でここは父さんに丸投げ。
お世話になっています。
「と、言いたい所だけど、時間もかなり遅いんだよな。ご飯もまだだし。それにこういったお金が絡む話は親を交えて話した方が良いと思うんだ。レオン君のお母さんは今何をしてるの?」
「本当に最近離婚して、小学校卒業と同時に引っ越してきたので、今はパートアルバイトをしてる筈です。慰謝料があるから大丈夫なんて言ってますけど、傍目から見ても結構無理してるようで…」
「うーん。じゃあ今日の所はこれで解散にしようか。それでお母さんの都合が良い日を教えてくれるかな? 俺と豹馬で挨拶と説明も兼ねてお家に伺わせてもらうよ」
「何から何までありがとうございます」
「良いの良いの。レオン君が野球をやってくれると嬉しいしね。それに我が家はお金だけはあるから。道具類はお古になるけどあげる事も出来るしね」
おお。父さんが大人をやってるぞ。
なんか新鮮な気分だ。
「さて、話はまとまった事だし、ご飯はどうする? レオン君の妹は既にうちの神奈と一緒に食べてると思うけど」
「「「「「いただきます!!」」」」」
「じゃあ、どうぞ。と言っても、お食事処で注文してもらうだけだけどね」
俺達はみんなでスーパー銭湯内にあるお食事処に向かった。
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