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第3章 秋までの道程
第51話 合宿
しおりを挟む「という事で合宿しようかと」
キャプテンが部員を集めて、先程話し合った事を説明する。
「まぁ、通いの人間が寮に泊まるだけって感じだけどね」
「GWと一緒か。まぁ仕方ないよな」
あちこちで声が上がるが、仕方ないのである。
今から合宿所の予約なんて取れないですし。
甲子園に行く気満々だったから、このタイミングで合宿するなんて思ってなかったのだ。
「期間は?」
「10日」
「結構長いな」
ほんとはもっとしたかったんだよ?
でも、お盆前に終わらせておかないと帰省する人もいるしね。
練習が長く続き過ぎるとダレるし、お盆を休日にしようという事になった。
「あ、合宿期間中は俺の家の銭湯を関係者は無料で入れるようにしたんで! 存分に練習で疲れ果てて下さい」
「「「おおおー!」」」
まぁ、今の俺はこれぐらいでしか貢献できないからね。
学校から徒歩で10分かからないぐらいだし、普段から来てくれてる人もいるし、これを機にスーパー銭湯の沼にハマらせてやろう。
「それでいつからやるんですか?」
「明後日から。持ち物はGWの時と一緒。あ、プールも入るから水着もいるね」
「プール!!」
マリンが急に大声を上げる。
「う、うん。柳も入るんだったら持ってきてね?」
キャプテンがちょっと気圧されつつも話す。
多分なんでマリンがテンション上がってるか分かってないんだろうな。
キャプテン。そいつは半裸の男達の妄想を繰り広げてるだけだと思いますよ。
「明日はみんなで早実×三高の試合を見るからね」
そう。明日は西東京大会の決勝戦。
俺たちに勝った事だし、三高に甲子園行ってほしい。
でもまた霊山がドヤ顔するって考えると嫌なんだよねー。
あいつ、なんであんなに腹立つ顔してるんだろ。
翌日。
朝からみんなで視聴覚室に集まり、大画面で試合を見る。
試合は五回まで終わり1ー1。
「やっぱ菊池すげーな。あの早実打線を1点に抑えてる」
「でも俺達も3点取ったよ?」
「あれは雨で失投が多かったし」
まぁ、そうね。
あの時の菊池は本調子じゃないでしょう。
それはこっちも同じだったけどな!!
「三高は長引いても後2人良いピッチャーいるしな。早実は焦ってるんじゃない?」
「いやー霊山にあの打線を抑えられるとは思わないけど」
抑えれるよ。初見なら。
あいつの初見殺しは凄いからな。
初対戦でホームラン打ったレオンがおかしいんだ。
そんな話をしてると試合は八回へ。
「勝ち越したー!」
「狙ってたかな? あのフォークはヤマ張ってないと打てないでしょ」
三高の7番バッターが勝ち越し打。
この人は俺と交錯した人だ。
未だに色々言われてるけど、それを跳ね除けての値千金のヒット。凄いね。
そして試合はそのまま終了し、三高が勝利。
西東京代表として甲子園進出である。
「三高かー」
「まぁ複雑な気持ちはあるよな」
まぁ、どうしても怪我が無かったらとは考えちゃうよね。
そんなたらればを言っても仕方ないけど人間だもの。そんな簡単に割り切れない。
「このまま三高に優勝してもらって、俺達が1番苦しめたと言わせたいね」
「ま、三高は三高。俺達は俺達。あっちが甲子園で楽しんでる間に、こっちは地獄のレベルアップ合宿と洒落込もうじゃないの」
そうだね。
俺はほとんど練習参加出来ないけど応援はするよ。
練習ってやってる時は、もう二度とやりたくない! って思うのに、出来ないってなるとやりたくなるのはなんでだろうね。
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