未冠の大器のやり直し

Jaja

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第2章 夏の始まり

第18話 圧勝

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 「お兄ちゃん、今日の試合どうだったの?」

 愛しのプリティエンジェルマイシスターが今日の初戦の試合結果を聞いてくる。

 「五回コールド勝ち。俺は出てないけど」

 「お兄ちゃんはどうでもいいよ。ウル君はどうだったの?」

 「ウル? なんで?」

 「いや、べつに」

 はぁー。神奈が冷たい。
 俺はツンデレだと信じてるけど。心にクるものがある。

 「ウルは普通に出てたよ。全打席出塁の大活躍」

 「そうなんだ。次から渚ちゃんと見に行こうかな」

 渚ちゃんとはレオンの妹で神奈の親友である。
 中学2年生なのにファッションモデルをしている美人さんである。

 「それより! なんでウル!? なんかあった?」

 「私、お風呂入ってくるねー」

 ははーん? まさかウルの事好きなのかな?
 ほほーん。
 あいつは馬鹿だが良い奴だからな。
 仲を取り持ってやるのもやぶさかではない。
 俺はよくあるシスコン拗らせ系主人公ではないのだ。
 妹が好きな人は尊重したいと思っている。
 よくわからんクソみたいな奴を連れて来たらその限りではないが。
 勿論反撃させてもらう。拳で。




 今日の試合は特に何もない。
 普通にやって普通に勝った。
 3年の吉見先輩が先発してヒット2本で五回無失点。
 打線も先発全員安打でレオンと北條先輩はホームランを2本打っていた。
 途中でどんどん選手を交代していき、ピッチャー陣と控えキャッチャー以外は全員試合にでた。
 俺はベンチで猥談してるだけだった。

 相手選手が気の毒なんて思ったりしてたが、これが高校野球なんだと改めて実感した。
 一発勝負のトーナメントは何があるかわからない。気を引き締めないとな。



 次の日の月曜日は練習自体は休みだがミーティングである。
 因みに、現在期末テストの真っ最中である。
 赤点で補習は勘弁なので勉強出来る組は出来ない組にスパルタで教えてたりする。
 マリンが部室にあるテレビにビデオカメラを繋げて映像を映す。

 「これが1ヶ月ぐらい前の八王学園の練習試合ね。これより最近のは手に入らなかったわ」

 「なんかストレートに癖があるなぁ。これはわざとかぁ?」

 「意図して動かしてる訳じゃないみたい。でもこれにチェンジアップを混ぜてくるとなかなか的を絞れないよね」

 「うーん。やっぱり速いなー。でも打てない事なくね?」

 俺がぼそっと独り言を言うと。

 「バッティングが悪いお前にそんな事簡単に言われたくねぇ」

 隼人にグサっとくる事を言われたが俺はバッティング悪くない。
 ないったらない。
 お前らが良いから相対的に悪く見えるだけなのだ。
 まぁ、俺が外野で出場してない事からもお察しだが龍宮高校の打撃は悪くない。
 父さんの指導もあるしね。
 なぜ、父さんに指導されて俺は成長しないのか。
 これがわからない。

 「いや、普段から三井先輩とか俺より球を打ってるんだぜ? 映像みても三井先輩より上とは思えないし普通に打てるって。3点取ってくれたら三井先輩が九回2失点で抑えてくれるよ」

 俺は次の試合も投げる予定はない。
 一応明日からピッチング練習を再開するが、ここまで長い間投げなかった事がないので感覚が戻るか心配なのである。
 八王学園に勝ったら、恐らく次の相手になるであろう創英に投げる予定である。
 俺の出番の為にも勝って欲しいものである。

 「豹馬にそう言って貰えると自信が出てくるな。なんだか抑えれそうな気がしてきた。完封目指して頑張るよ!」

 「その意気です! この大会で活躍しまくってスカウトを釘付けにしましょう!」

 俺と三井先輩は拳を合わせて握手してハグまでする。

 「むむ。タイガにライバルが。いや、これはこれでありか? 次の本は寝取られ展開にしようか」


 マリンが腐のオーラを全開にしてぼそぼそと言ってるが俺は聞こえないフリをした。
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