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第五章 魔王討伐
第146話 岐路
しおりを挟む「どうだった?」
「まぁ、こちらはいつも通りですかね? ヴェガは苦戦してましたが」
チラッと見てみると、槍もどきを持ってへにょんとしてるのを妲己とウェインが慰めている。
未だに進化してないしなぁ。なんでこんな遅いのやら。まぁ、捕食で低確率で能力をラーニング出来るから強くはなっていくんだろうけど。
「まさか進化しないとか?」
仮初の命だから駄目とかあるんだろうか。魔石で動いてるし、魔物と変わらないと思うんだけど。
「しかもアンデッドが美味しくないみたいですね。倒した魔物を食べて吐き出してましたよ」
ほほう。ヴェガにも好き嫌いがあるのか。まぁ、アンデッドなんて基本腐ってるからな。美味しくはないだろう。
「俺が戦った奴は名持ちの新参者らしい。あれで一番下って苦労するよな」
確実に勝てるのは妲己ぐらいではなかろうか。グレースでもちょっと怪しい。
【剣聖術】ってグレースの【剣豪術】より上っぽいし、【魔纏鎧】も上位能力になっていた。
「これが魔王の部下か」
「魔王本人はそれ以上に強いって事ですよね。いくら『個』の魔王ではないといえ、部下より弱いって事はないでしょうし」
「幹部が何体いるかも不明。なんか俺が戦った奴、頭弱そうだったしもっと聞いておけばよかった」
失敗したな。もう得るものはないと思ったのと、テレサの魔法の余波で災害になりそうだったから、早く終わらせる事にしか気が回ってなかった。
「テレサの晦冥球は戦いの締めに使うべきだな。余波が酷すぎてその後も戦闘が続くと俺達も苦労する」
「あの魔法を使ってすぐに向こうから襲ってくるとは思ってませんでしたからね」
「まぁ、何かしらのアクションはあるだろうなって思ってたけど、あれを突っ切ってくるとはなぁ。俺もやろうと思えば普通にやれるけど」
服が一時的に汚れるからやりたくない。
身嗜みに気を使う系の魔王なんですよ、俺は。
「それで、これからどうしようか」
幹部的なのが襲ってきたんだ。こちらの事はバレてると思っていい。すぐにでも次の幹部やら、魔王直々にやってきても不思議ではない。
「レト様や妲己はともかく、私達の強さが足りてるかどうか」
「アシュラもやれそうだけどな。【戦闘学習】があるし。時間さえ許せば対抗は可能だと思うんだけど」
魔王さん。俺達が今からここでレベリングするのを許してくれませんかねぇ。
もう少し実力が拮抗してると思ってたけど、数も質も完敗してるっぽい。
「ゲームでは俺達が強くなるまでいつまでも待ってくれるんだけどなぁ」
残念。ここは異世界で現実である。
魔王なんだから、城かなんかで堂々と構えててくれよな。魔王が聞いて呆れるぜ。
俺が一番小賢しく動いてるって反論は無しでお願いしますよ。
「撤退して何処かの迷宮にカチコミをかける、更にレベリングしてから再挑戦するか、現状維持でこのまま端から魔物を倒して経験値にしていくか」
「私やアシュラに範囲魔法が使えたら、少しは時間を短縮出来たんですけどね」
「グレースはテレサとか妲己ほど、魔法が得意じゃないもんなぁ」
まとめて焼き払ったりできればな。
一応、グレースは魔法を使えるけど、テレサ達ほど大規模にはならない。
せいぜい村を焼き尽くせるくらいだ。
マジでどうしようか。なんかこれは重要な選択な気がするぞ。
☆★☆★☆★
「ハイバック ガ ヤラレタカ」
森の最深部。骨で出来た玉座に腰掛ける魔王・エンペラー・リッチが呟く。
魔力反応が消えた事を探知して、ほんの少しだけ驚いたようにも見える。
魔王の呟きに、側に控える事を許された幹部達も僅かにどよめく。
幹部の中で最弱とはいえ、魔王に名を貰い側にいる事を許された魔物なのだ。
向かってすぐにやられたのは予想していなかった。
「クカカカカ。中々 楽シメソウ デハ ナイカ」
骨で出来た顔を震わせ心底愉快そうに笑う魔王。
幹部が死んだ事に悲しみもせずに、次の指示を出す。
「次ヲ 送レ。異物共ヲ 休マセルナ」
魔王は慌てない。いくら幹部を倒したとはいえ、いくらでも替えが効く駒でしかないのだ。
指示を受けた幹部達が数人飛び出し、森の端に向かう。魔王の指示は絶対。
逆らう等ありえないし、逆らったところで勝てる訳がないのだ。
「フム。ドコマデ ヤレルノカ 楽シミヨノ」
そう言いながら魔王は能力を行使する。
地面に魔法陣が展開されて、そこから魔物が出て来る。
出て来た魔物。それは先程死んだ魔物と同種。
レブナント・ディザスターであった。
「コンナモノ イクラデモ 作レルノダ」
魔王は出て来た魔物に見向きもせずに、手を振って森へ追いやる。
それなりに役に立つだろうと思っていたが、それは間違いだったみたいだ。
戯れに名までやって、幹部にしてやったというのに。
「役ニ立タヌノナラ イラヌ。オ前達モ 忘レルナヨ」
少し威圧も込めた言葉で幹部達を脅す。
それらは一斉に震えながら跪き、顔を上げる事なく許しを乞う。
「面白ソウナ 存在達ダ。生キ残レタラ 永遠ニ 仕エル事ヲ 許シテヤロウ」
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