146 / 172
第五章 魔王討伐
第142話 一心同体
しおりを挟む『リビング・ウェポン (眷属)
名前 ブラッド・チェーン
【魔物能力】
血液魔法
不壊
一心同体 』
「もう訳が分かりませんな」
俺ちゃんの武器が眷属になってるんだけど。
確かに血をあげたけども。
「【一心同体】? なんだこれは」
盗賊達を文字通り血祭りにあげたブラッド・チェーンが機嫌良さそうに戻ってきた。
グレースとテレサは盗賊から身ぐるみを剥いだり、アジトにあった物資の検分をしている。
中々大所帯で盗賊にしては強かったから、溜め込んでるんではないかと期待してます。
「ぬぉぉおお!?」
【一心同体】とはなんじゃろなと思ってたら、ブラッド・チェーンが俺目掛けて突進してきた。
とりあえず避けたんだけど、それはお気に召さなかったらしい。なんかジャラジャラと鎖を動かして抗議している。
「なんとなく喜怒哀楽が分かるのは眷属だからか? 武器の気持ちが分かるなんて、痛い系の主人公だけだろ」
今度はゆっくりと俺に近付いてくる。そしてそのまま俺の体に吸い込まれていった。
「はいぃ?」
俺の体に吸収されたんだけど? もう全然意味分からん。急にファンタジーのゴリ押しし過ぎだぜ。
どうしようかと右往左往してると、手からひょこっと鎖が出てきた。
「びっくりした。なるほど? 【一心同体】ってそういう事か」
これは良い。腰に巻きつけるのはちょっと邪魔だと思ってたんだよね。でも影に収納してると、そのまま使わなそうだったしで、仕方なしに巻いてたんだ。
「なんか一気に強くなったな、お前。優秀な武器になってくれて嬉しいぞ」
くねくねと照れたように動くブラッド・チェーン。なんか可愛く思えてきちゃったよ。
これからはもう少し鎖鎌の練習に力を入れるかね。
その日の夜。
いつもの様に馬車ホテルにて一戦交える為に服を脱ぐと、右腕全体にタトゥーの様なのが入っていた。腕に巻き付く感じの鎖模様だ。
「レト様、それは?」
「ブラッド・チェーン。さっき【一心同体】で体に収納されてるって言っただろ? まぁ、俺もこんな形とは思わなかったけど」
なんかイカすじゃんね。全身に刺青やタトゥーはちょっときついけど、こういうワンポイントならありじゃなかろうか。
「動いてますよ?」
「ほんとだ。体のどこにでも行ける感じなのか?」
なんか鎖が体で泳いでいる感じだ。すげーな。
特に気持ち悪くもないし、好きにしたらって感じだけど。
「あ、こらこら。俺のエクスカリバーに巻き付こうとするのは辞めなさい。なんか恥ずかしいから」
「ふむふむ。ライバル出現ですかね」
え? グレースさん武器に嫉妬とかしないですよね? あのドロっとした目になるのはやめてよ?
「いよっ! ほっ! とう!」
ガキンガキンと金属音を鳴り響かせ、俺の武器とアシュラの武器がぶつかり合う。
「いよし! そこで巻き付け!」
「ゴギャギャ!?」
一瞬の隙をつき、アシュラの金棒に鎖を巻き付け、体を武器と一緒に一気に引き寄せる。
「くらえ! 魔王パーンチ!」
「ゴギャギャー」
引き寄せた勢いでそのままアシュラのお腹当たりを殴る。顔を殴りたいけど、身長差がね…。
でかいってのはそれだけで有利だぜ。
「はい。俺の勝利。アシュラは金棒を手離すべきだったな」
「ギャ」
いつもの模擬戦を終えて少し休憩。
しょんぼりしてるアシュラを慰めつつ、ブラッド・チェーンの使い心地を確かめる。
「使いやすさは段違いになってるな。これも【一心同体】のお陰か? どういう風に動かして欲しいとかが伝わってくるんだよね」
アシュラの血を飲んでみたいよと催促されたので、少しだけ貰う。
俺も偶に飲ませてもらってるからね。これがまたべらぼうに美味いんだ。グリフォンなんかよりよっぽど美味しい。妲己も勿論美味しい。ヴェガはイマイチだったな。強さのせいか、人間が混ざってるからなのか。ヴェガが強くなってくれたら分かるだろう。
「さて、もう少しで魔王の領域だな」
「ここからでも禍々しい空気が分かりますね」
盗賊の討伐から早くも半年程が経過している。
その道中何度も街を滅ぼそうと思ったけど、鋼の心で我慢した。
寄り道をするといつまで経っても目的地に到着しないからな。ヴェガの好物の人間は盗賊で調達出来たし。どこにでも居るんだよね、盗賊。まるでゴキブリみたいな奴だ。
人間様の治安維持に積極的に協力してしまっているな。その代金は街を滅ぼす事で払ってもらおう。
魔王討伐が終わってからな。それまでは束の間の平和を楽しんでおくといい。
「エンペラー・リッチかー。配下が山ほどいるんだよね?」
「正確な数は分かりませんが、そうらしいですね」
グレースもエンペラー・リッチがいつから存在してるかは知らないらしい。
なんでも昔、この辺には小国群があったらしいけどエンペラー・リッチにまとめてアンデッドにされて、それがウヨウヨと彷徨ってるらしい。
「見渡す限り森だけど? ここに国があったの?」
「伝承ではそうなってますね」
ほへー。こんな立派な森になってるって事は、相当昔から存在してるんだろうなぁ。こりゃ、強そうだ。
「気を抜かずにいかないとな。超越者みたいなお遊びでは済まないだろうし」
とにかくまずは姿を確認したいね。
解析でどんな能力を持ってるか調べてから、対策を考えたい。どこか分かりやすい所に居てくれたら良いんだけど。
0
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


みうちゃんは今日も元気に配信中!〜ダンジョンで配信者ごっこをしてたら伝説になってた〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
過保護すぎる最強お兄ちゃんが、余命いくばくかの妹の夢を全力で応援!
妹に配信が『やらせ』だとバレないようにお兄ちゃんの暗躍が始まる!
【大丈夫、ただの幼女だよ!(APP20)】

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河
墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。
三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。
全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。
本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。
おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。
本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。
戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。
歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。
※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。
※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる