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第四章 迷宮都市ラビリントス

第117話 温羅

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 「え、待って待って? 早くない?」

 「早いですか? 結構時間は経ってると思いますけど」

 そう? もう時間感覚が馬鹿になってるから分からんけど。俺的にはつい最近進化したばっかりだと思ってました。

 「ゴギャギャ!」

 アシュラが進化した。なんかどんどんと先を越されてる。俺への要求量が多いのか? まだやっと半分超えたぐらいなんだけど。

 『温羅 (眷属)
  名前  アシュラ
  【魔物能力】
  弱肉強食
  金剛神躰
  戦闘学習
  阿修羅化
  魔纏鎧
  気功術        』

 
 「温羅ってなに? 俺、鬼専門家じゃないから知らないんだけど」

 「私も知りませんよ」

 なんだろうね。夜叉の方がかっこよくない?
 強くなったけど、ダサくなったと言ったら失礼なんだろうか。

 「金剛城塞が金剛神躰に。修羅化が阿修羅化に進化して新しく覚えたのは気功術か」

 「気功術ですか。私も練習してみたんですが、いまいち理解が出来ないんですよね」

 俺も分からん。魔力との違いが分からんし。
 説明には、生命力の強化やら怪我の回復促進、身体強化とか色々あるけど。

 「そこんとこどうなの?」

 「ギャギャ?」

 そう言えば今回の進化でも喋らないな。
 もう見た目も大きさと角以外は人間っぽいから、違和感がありまくりなんだけど。
 大きさも3m近いんじゃないかな。

 「まっ、その辺は後で存分に試してもらうとして。後は上位進化した能力ばっかりだから、慣らすだけでいけそうだな」

 「阿修羅化は勿体無いですね。理性がなくなるデメリットがなくなりましたが、元からアシュラは制御出来てましたし」

 それな。魔力消費も抑えてくれたら、文句無しだったんだけど、そこまで甘くないらしい。
 せっかく自分の名前が入ったスキルなのにな。

 「これで後は俺とテレサとウェインの進化だけか」

 「ウェインはどうすれば良いんでしょうね」

 「99になってから結構経つもんなぁ」

 俺はまだ半分ぐらいだからまだまだだけど、ウェインには何かきっかけを与えてあげないといけないんだろうか。
 とりあえずひたすら何かを作ってるんだけど。

 世界の役に立ちそうな物から、国を破壊出来る物まで、幅広く製作している。
 お陰で影の中は快適である。お風呂に入れた時は感激しましたね。
 影の中と馬車の中にあるんだけど、馬車のほうはグレースが細かく指示を出してました。
 
 「この世界に特許とかないからなぁ。あったらウェインのレシピ集でボロ儲けなんだけど」

 「作り方が分からなければ、独占出来るじゃないですか」

 まぁ、そうだけど。根幹部分をブラックボックス化しとけば、当分は独占出来るだろう。
 俺のなんちゃって科学と魔法で、ウェインの製作物はこの世界の人間の道具より断然優れてるからな。
 文明を進める事も出来るだろう。

 「国でも作って、自国だけで使うのが良いのかな。文明を進めすぎてもロクな事にならんし」

 ダンジョンもパクれる事が分かったからな。
 いつか、良い感じの場所を見つけて腰を落ち着けてレト王国でも作りたい。
 俺が運営したら滅茶苦茶になるから、賢い人を眷属にしないといけないけど。

 「それはまだまだ先の話かな。どうせ国作りも途中で飽きるんだし。とりあえずはこの世界を見て回って強くならないと。竜王をボコれるぐらい」

 「果てしないですね、それは」

 「竜王ってほんとに強いのかね。実はまだ弱いとかない?」

 「下位竜でも超越者が出張るぐらいですよ? その中の王なんですから、強いと思いますよ」

 で、ですよね。そこらの量産ラノベみたいに、モブの如くやられる程、竜ってのは弱くないよね。
 いつかはモブ扱いしてやるけど。

 「キュキュキュ!」

 「ゴギギギ! ゴギャー!」

 グレースと先の話をしてると、妲己とアシュラが模擬戦をしていた。
 アシュラはダメージなんて関係ねぇと、【魔纏鎧】を使って魔法の弾幕に突っ込む。
 早速【気功術】でダメージを回復してるな。

 「それでも、あの【超念力】さんなんだよなぁ」

 「でもアシュラは対抗してますよ? あ、【阿修羅化】まで使って漸くですか」

 そう。アシュラは短期決戦でケリをつけようとしたらしく、開幕から【阿修羅化】を使って、超速接近していた。
 妲己もこのスピードには驚いたらしく、【虚影魔法】を使う暇がなかった。

 「【阿修羅化】状態だと、身体スペックは俺より上っぽいな」

 「あれで時間制限がなければ」

 それでも10分はもつだろう。
 破格な能力だと思いますけどね。

 「キュンキューン!」

 「うわぁ」

 「容赦ないですね」

 アシュラがパントマイムみたいに【超念力】に対抗していたんだけど、妲己は全方向から雷の槍を撃ち込む。

 「【空間把握】を手にしてから、あいつの魔法の正確性が半端なくなってるんだよな。お陰で最近の模擬戦は苦労する」

 「私もそろそろ妲己に土をつけたいですね」

 「毎回良い所まではいくのにな」

 「【虚影魔法】を発動させたら負けです」

 「言ってるそばから」

 【超念力】に対抗しつつ、雷を避けていたアシュラだが、その隙に妲己の分身が出て来ていた。
 そして、容赦ない波状攻撃。
 妲己は10分耐えたら、アシュラが魔力切れで自滅するのに、真っ向から勝つつもりらしい。

 【金剛神躰】や【魔纏鎧】、【気功術】で耐久力や身体能力がかなり上がってるけど、止まらない魔法ラッシュに徐々に被弾していく。
 そして、ダメージが深刻になってきた所で、アシュラが魔力切れでダウンした。

 「うーん。魔力切れまでに押し切れはしなかったけど、アシュラの完敗か」

 「でも、アシュラは【戦闘学習】がありますからね。ここから成長していくでしょう」

 そうだな。模擬戦だから何回でも挑戦出来るんだし、切磋琢磨してくれ。
 それに、アシュラと近接戦したら俺にも良い影響がありそうだ。
 最近は近接に力を入れてるからな。脳筋対脳筋の戦いをするのも良いだろう。
  
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