上 下
108 / 172
第四章 迷宮都市ラビリントス

第104話 予想外の

しおりを挟む

 
 「あの扉を開けたらゴールでありますように」

 「流石の私もそろそろ一旦地上に戻りたいですね。戻ったからといって、特に何もないんですが」

 気持ちはわかる。なんか一旦地上に戻りたいよね。なんだろうな、この気持ちは。

 そういえば、あのクリーチャー騒動はどう終結したんだろうか。
 一年以上経ってるし、流石にもう忘れてる頃かな? 大騒動とかになってたら、それはそれで見物なんだけど。


 
 扉を開けて先に進むと、階段があった。
 嫌な予感をひしひしと感じる。勘弁してくれ。

 「マジで言ってんの? なんか攻略報酬もそれっぽかったし、終わりでいいじゃんかよ」

 グレースだけは影から出て来てて、俺と一緒に着いてきてるんだが、無言である。
 顰めっ面をしてるので、同じ気持ちなんだろう。

 そして、嫌々ながら階段を登る。
 着いた先にあったのは小さな部屋だった。
 部屋の真ん中に大きな球体が浮いている。

 「んんんん? どういう事だこれ? いや、そういう事なのか?」

 「? どういう事か知ってるんですか?」

 いや、ラノベ知識と照らし合わせてるだけなんだけどさ。
 いくつかのパターンがあるよね。

 「あの球体は多分ダンジョンコアとかそういうのだろ。で、俺が見てたラノベ…物語では、あれに触るとダンジョンマスターになれたり、崩壊したり、意味のわからんスキルを覚えたりと。もっとあるけど一番ありがちなのはダンジョンマスターになる事かなぁ」

 「ダンジョンマスターとは?」

 「うーん。これにも色々種類があってなんとも言えないんだけど。まぁ、迷宮を好き勝手に出来るようになるんだよね。階層を増やしたり、いじったり。多分何かしらの制限はあるんだろうけど」

 「それは…。かなり良い事なのでは?」

 良い事なんだろうけど。制限が気になるよね。
 ダンジョンから出られないパターンとかもあるしさ。ちょっとぐらいならダンジョンマスターをやっても面白いだろうけど、ずっとは飽きる。

 「まっ、とりあえず触らないと話にならんか。グレースは影に入っといて。万が一崩壊するとかなら、ダッシュで逃げないとだし」

 「かしこまりました。お気をつけて」

 さーて、どのパターンなんだ? これが実は地上への転送装置とかなら笑えるんだけど。
 俺はビビりながらゆっくりと球体に触る。

 すると目の前にホログラムの様なものが出て来て、思わず後ずさる。

 「んお!? こうきたか」

 てっきりアナウンスがあったり、頭の中にダイレクトに情報を叩き込んでくるタイプだと思ってたけど、こっちのほうが分かりやすくて助かるな。


 『ダンジョン・コア
  所有者  無し
  階層数  101
  出現魔物 自動排出
  DE  202.352.896
 
  ダンジョン・コアを取得しますか?
  ダンジョンを消滅させますか?
  ダンジョン・コアを移動しますか?』

 ふむん。これだけじゃわからんな。
 いや、大体は分かるけど、もう少し詳細が欲しい。とりあえずグレース呼ぶか。

 「これ見える?」

 「はい。…なるほど。こんな風になるのですね」

 影から出てきたグレースに見てもらって、どうするか相談する。
 興味深そうにぐるぐると球体の周りを歩いてみたり、ホログラムに触ってみようとしてみたりと、今の所役に立ちそうにないけど。

 「どうする? まぁ、消滅は無しだろ。取得と移動の違いを知りたいな」

 「取得した後に移動は出来ないんですか?」

 「分からん。だから迷ってる」

 このまま、ダンジョン・コアを持って行って好きな所に設置出来るなら当たり前の様に持っていく。
 この街のダンジョンが無くなるだろうが、正直知ったこっちゃない。
 いつか国を作ろうと思った時に役立つだろう。
 当然、残り二つも攻略したら持っていく。
 迷宮都市崩壊のお知らせ。

 「取得してここで何かしないといけないとかになったら嫌なんだよな。早く地上に戻りたい」

 「では、移動で良いのでは?」

 「ダンジョン・コアを移動させたら、恐らくこの迷宮は無くなるだろ? で、騒ぎになる。後二つ迷宮攻略しないといけないのに、面倒事はごめんだ。攻略が終わってからにしてほしい」

 「じゃあどうするんですか?」

 「それを相談したいからお前を呼んだんだ」

 なんか急にポンコツっぽくなってない?
 なんか余程、ホログラムが刺さったみたいで浮かれてるんだよね。
 ウェインになんか作ってもらえよ。
 きっと良い感じにしてくれるさ、知らんけど。

 「うーん、放置は勿体無い。貧乏性の俺がこんなの見過ごせる訳がない。迷う。迷うぞー」

 「取得した後に放棄とかも出来ないんですかね?」

 「出来るかもだけどなぁ。取り返しがつかない事はしたくないなぁ」

 久々に優柔不断なレト君が顔を出しやがったな。
 うむむむむ。困ったぞぅ。

 「転移の双釘刺しておいて、一旦別の迷宮攻略しに行くか? いや、向こう攻略し終わった後もおんなじ様に悩むんなら今決めておきたいな」

 「もう取得してしまいましょう。取得したら詳しい事も分かるかもしれませんよ。なにせ所有者になるんですから」

 いや、取扱説明書があるタイプと自分で試行錯誤してやっていくタイプがありましてね?
 ………迷っても仕方ないか。
 俺はやるぞー!

 「迷宮を取得する」

 何かあるかと身構えたが、特に何もなく。
 所有者の欄には俺の名前が書かれていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【R-18】吸血鬼の家庭教師~年下貴族に溺愛求婚されています【挿絵付】

臣桜
恋愛
魔族や様々な種族が入り乱れるエイダ王国で、人間のクレハは浮いた存在だった。一般母子家庭に育ち、沢山勉強をしていい職に就き母を楽させるのが夢だ。ある日クレハは喧嘩の現場を見てしまい、背後から襲われ昏倒した赤髪の青年を助ける。青年は高位魔族――吸血鬼の貴族だった。ノアと名乗る青年と一時は別れたものの、再び出会ったクレハは彼にどうしようもなく惹かれてゆく。 ※表紙はニジジャーニーで生成しました。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~

すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。 若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。 魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。 人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で 出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。 その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。

三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河

墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。 三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。 全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。 本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。 おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。 本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。 戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。 歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。 ※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。 ※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。

処理中です...