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第四章 迷宮都市ラビリントス
第80話 ラビリントスの超越者
しおりを挟む「おーおー。阿鼻叫喚とはこの事か」
クリーチャー化した黒蝶のボスを街中に放り出してみた。
夜明け前とあって初動が遅れたのか、街の中心を破壊してるのに、衛兵や領主直属の騎士等の対応がよろしくない。
ボスは手当たり次第破壊してるので、酔っ払って寝ていた奴らは既にお亡くなりになっている。
一般人にも被害が出始め、街中は騒然としてきた。
俺はその騒ぎをかなり高い空から遠見の【魔眼】でみている。
「俺って良く考えたら、この世界に来て善人みたいな事しかしてなかったよな。たまにはこういうのも良いだろう」
積極的に盗賊を狩り、不正をしている商会を潰したり、闇組織の人間を始末したり。
おいおい、俺ってもしかして勇者だったのでは?
吐き気がするな。
尚、スタンピードや勢いで冒険者を殺してしまった事は無かった事とする。
「うーん。甘美。【音魔法】で悲鳴も拾ってるけど、中々の混沌具合だ」
出来れば空からじゃなくて、カウチに座ってじっくり鑑賞したいぐらい。
とびきりの血を用意してな。
映像機器が無いこの世界では難しいか。
「ウェインはそういった魔道具作れないのかな。もうちょっと職人として成長したら、俺が書き記してる資料を見せるのも良いな。なんか良い感じにしてくれるだろ」
今は基礎の本を読んでまだまだ学んでる最中だからな。
時間はいくらでもあるんだし、ゆっくりとだな。
「おお? 冒険者も出てきたな。ってか意外に頑張るな。すぐに討伐されるもんだと思ってたが」
なんかダメージ食らっても再生してるっぽい。
魔物の血を飲むだけでこんなに強くなるんだな。
あれはウェインが滅茶苦茶に混ぜたせいもあるんだろうけどさ。
「戦況は膠着しちゃったな。被害も少なくなってきたけど、トドメを刺す決定打がないか。なーんか飽きてきちゃった」
もっと騒ぎになれば面白いのに。
なんとか抑え込めてる。
これじゃあジリ貧だし、いつか討伐されそう。
ダラダラと千日手を見てても飽きてくるんだよねぇ。
「【感覚狂乱】使っちゃおう」
面白くないなら面白くすれば良いじゃない。
流石アントワネットさん、良く分かってらっしゃる。
とりあえず戦ってる辺り一帯に使う。
「くははははは! 急に同士討ちを始めたぞ。やっぱりこの能力はつえーよ」
効果は覿面だった。
訳も分からず、あっち行ったりこっち行ったり。
何故自分が味方に斬りかかってるのかも分からず、悲壮な顔をしながら攻撃する、騎士や冒険者。
「んふふっ。醜いなぁ。面白いなぁ。ボスにも効果あったのか意味の分からん攻撃をしてるが」
何人かは効果を弾いてるのも居るが、問題ないだろう。
まぁ、ボスはただ暴れてるだけでいいから。
さーて、人間サイドはこっからどうするのかね。
放置すれば被害が広がるだけだぞ。
「これ、収拾つくのかな? …おや? おやおやおや?」
どうするのかなと思ってると、1人の獣人が登場して、人間サイドが湧いている。
こいつはもしやと早速【魔眼】で確認する。
『名前 デスター
人種 獣人(狼)
Lv 113
【スキル】
総合武術Lv6
身体剛化Lv6
気功術Lv2
嗅覚Lv8
性技Lv8
気配察知Lv8
水魔法Lv2 』
おお。超越者だ。
ユニークスキル覚えてないからあんまり興味ないけど。
なくても超越者になれるんだな。
一つ勉強になりました。
それにしても、ゴリゴリ脳筋の獣人か。
獣人の超越者って、人間と違ってハイ~って感じじゃなくて進化前の上位の獣になるんだよね。
犬なら狼とか。
猫なら獅子とか。
犬の上位互換に狐がいるのはびっくりしたけど。
イヌ科なんだね。知らなかったよ。
「それにしても、獣人が更に肉体スペック上がると手が付けられないな。見た感じグレースなら勝てそうだけど」
シックスセンスは伊達じゃない。
どれだけ速かろうが勘で対抗してくるからな。
「【感覚狂乱】も弾いてるっぽいし、こいつに仕留められて終わりかな? 出力上げても良いけど、収拾つかなくなりそうだし」
俺が戦えば多分楽勝で勝てるぞ、これ。
自分の肉体に自信があるのか、多少の傷はお構いなしに突っ込んでるからな。
傷を付けて【血液魔法】で終了よ。
「超越者もピンキリかなぁ。いや、油断はよくないな。ボロクソに見下せるまで強くてなってから喧嘩売ろう」
どうせ、ラビリントスから出て行く前に殺そうと思ってたんだ。
運良く威力偵察出来たと思おう。
「確か、あいつ以外に後3人S級冒険者が居るはずなんだよな。俺、グレース、妲己、アシュラで丁度ぴったし。楽しみになってきた」
あの脳筋はアシュラにあてようかな。
脳筋同士丁度良いだろ。
今は勝てないだろうけど。
ウェインとテレサはどうだろうな。
ウェインは生産職だし、テレサはこれからの成長次第か。
魔法書も狙わないとな。
「あ、死んだな」
デスターにボスがやられた。
まぁ、良く頑張ったよ。
暇潰しにはなったな。
「この混乱に乗じて、迷宮に戻ろうか」
黒蝶の商会で色々パクれたし、日用品も問題ない。
煙草もいっぱいストック出来たしな。
「おかえりなさいませ。楽しめましたか?」
「うん。影から見てただろ? 超越者も見れたし大満足よ」
「スネイルが予想以上に頑張ったお陰ですね」
スネイル? …ああ、ボスの名前か。
確かにそんな名前だったな。
「グレースなら勝てそうだったぞ? はい、レベルとスキルはこんな感じね」
「………レベルもスキルもあちらの方が上ですが?」
「多分、肉体スペックは同じぐらいか少しグレースの方が上だと思うぞ。半分魔物の影響かな」
レベルやスキルが全てじゃないって奴だな。
獣人は元々肉体スペックは高い方で超越者になって更に上がってるだろうけど。
それでもグレースの方が上だと思う。
「まぁ、獣人ならやり易いですね。魔法で近付けさせてもらえない方がきつそうです」
グレースは妲己の方をチラッと見ながら言う。
そうね。近付けなかったらどうしようもないよね。
妲己は近付いても、【幻影魔法】で対処してくるから更にきついんだけど。
未だに、妲己と戦っても勝ち筋が見えないんだよなぁ。
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