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第四章 迷宮都市ラビリントス
第79話 壊滅
しおりを挟む「さーて、兄妹達の集大成な訳だが」
俺は目の前で転がされてる黒蝶のボス、名前は…なんて言ったっけ?
まぁ良いか。死ぬし。
影で口も拘束してる為、声を上げる事も出来ないボスさんは俺達を見て明らかに怯えている。
「さて、いつも通り娯楽の時間だ。ウェインにはとびきりの薬を用意してもらったし楽しみだな」
ウェインが目を爛々とさせて薬を持って来る。
こいつ、実験を繰り返す内に、マッドな気質が出てきた。
元からなのか、俺がそうしたのか。
天国か地獄にいる親御さんに申し訳ないね。
思ってないけど。
「じゃあ、ボスはウェインとテレサにやろう。妲己もつけといてやるから、死にそうになったら【再生魔法】で治してもらえ。好きなだけ復讐するが良い」
「分かったぞ!!」
「…ありがとうなの」
「キュン!」
ウェインとテレサはそれはもう嬉しそうに。
妲己は先輩風を吹かして任せなさいって感じで、黒蝶のボスと向かい合う。
「俺は残りの人員を使って、【感覚狂乱】の実験だな。どこまで狂わせる事が出来るのか人間相手に試してみたかったんだ。出力の調整も出来る様になりたいし」
あ、アシュラはこっちに呼ぼう。
抵抗する練習させないとな。
こいつ、未だに気を抜いてたら引っ掛かるから。
あれから2時間程。
俺は中々有意義な時間を過ごして構成員達を殺した。
きっかけは、やっぱり停止の【魔眼】。
停止だけであれだけの事が出来るなら、【感覚狂乱】ももっと色々出来るんじゃないかなと思ったんだ。
結果は大成功。
感覚をおかしくするって能力はやっぱりイカれてるよ。
これが異能じゃないのが信じられない。
1番楽しかったのは、感覚過敏を更にひどくさせた状態にした事かな。
嗅覚を過剰に発達させると、急に痙攣しだして滅茶苦茶嘔吐してたし。
触覚を過敏にして息を軽く吹きかけるだけで、激痛を与えるようにしてみたり。
痛風かよってな。
息だけで激痛なら叩いてみるとどうなるんだろうと、軽くツッコミを入れるぐらいの強さで叩いたら死んだ。
ショック死だろう。
痛みで人って本当に死ぬんだなと思いました。
「殺して下さい…殺して下さい…殺して下さい」
兄妹達の方はどうなったやろかと見に来たらひどい匂いだった。
薬品の匂いやら、ボスが漏らした匂いやら。
「調子はどう?」
「良い感じだぞ! この薬は中々良いぞ! 魔物相手にも普通に使えそうだぞ!」
「あー、それか」
ウェインが持ってる薬をみて、嫌な記憶が蘇る。
現時点での最高傑作が出来たって言うから、見てみたら、まだ触ったらダメだったらしく、容器に付着していた薬で俺の指が溶けた。
いやー、あの時はみっともなく叫んだね。
一瞬で溶けるんじゃなくて、ゆっくりと溶けていくんだ。
どんな風に調合したらあんな薬が出来るのか。
妲己が居なかったらと思うとゾッとするな。
まぁ、魔石があれば生えてくるんだけど。
「魔物に使うならもっと即効性が欲しいな。今は縛ってるから時間はいくらでもあるけど、魔物の中には痛覚がないのもいるからな」
ムカデとかな。
ってか虫系全般か。
あいつらお構い無しに突っ込んでくるから。
「なるほどなんだぞ! 次はその辺を改良して作ってみるんだぞ!」
「うん、頑張れ。それでテレサは?」
「…ビクンビクンして面白いの」
「それは痙攣って言うんだが」
「…【雷魔法】すっごく楽しいの。燃やすのも良いけど、ビクビクさせるのがたまらないの」
テレサを文字を少しずつ覚えて【雷魔法】も習得した。
それから妲己と色々練習してたみたいだが…。
どうやらいけない扉を開いてしまったらしい。
とっても恍惚とした表情をしてらっしゃる。
……いや、俺の眷属らしくなったと思おう。
これは悪い結果ではない。うむ。
妲己の英才教育のお陰だな。
妲己を育てたのは俺だから、実質俺の手柄。
グッジョブ俺。
「それで、まだ続けるのか? 時間はまだまだあるから良いけど」
「……私は魔力が無くなりそうなの。残念だけど、そろそろ私は終わりなの」
心底悔しそうなテレサ。
魔力回復ポーションを飲めば良いんじゃないのかね。
あれ、くそまずいけど。効果は確かだぞ。
「俺は最後にこれを使ってみたいぞ!」
「んあ? 何それ?」
「んー、薬というより、色々な魔物の血を混ぜてみただけなんだぞ!」
ほう。血のミックスか。
そういえば俺も試した事ないな。
カクテルみたいで楽しめるかもしれん。
今度時間がある時にやってみよう。
「人間に魔物の血を飲ますとどうなるのか気になるから試してみたかったんだぞ!」
「それなら混ぜずに試してみるべきだったんじゃないの?」
「混ぜた方が面白いぞ!」
うーんマッド。
まぁ好きにしてくれ。
ってか、絶対人間の研究者は試してみた事あるぞ。
欲深い人間がこんな事試さずにいられる訳ないからな。
それがどうなったかは知らんが。
「も、もう、本当にこ、殺して下さい」
「これで運が良かったら死ねるさ」
口を無理矢理開けさせて血を流し込む。
「ぐぎゃあぁぁぁああ!」
おお。体の穴という穴から血が吹き出して来た。
すげー。バイオなハザードのゲームみたい。
CMでしか見た事ないから分からんけど。
その後も経過観察していると、体が急に大きくなり始めた。
完全にバーサーカーみたいになっており、身長も3m程になった。
「ほむほむ。やっぱりありきたりな結果だな。魔物血を飲むと魔物みたいになると。理性も完全に飛んでそう」
「うーん、やっぱり血は混ぜない方がしっかりしたデータは取れたんだぞ。どの血のせいでこうなったのか分からないんだぞ」
「お前が混ぜたんでしょうが」
「グギー! グギー! グガー!」
「もう魔物ってかクリーチャーじゃん」
「レト様。どうさないますか?」
どうしようね。
このまま、殺すのも芸が無いし。
「あ、このまま街に放り出そうぜ! こいつの戦闘力も計れるし、人間様が慌てふためくのも見れる。一石二鳥の作戦じゃん!」
「では、そのように。出来れば早く捨てて来て下さい。影の中の掃除もしなければなりません。ひどい匂いです」
「あ、はい。すみません。すぐに捨てて来ます」
どこに捨てよう? 街のど真ん中でいいか。
今にも暴れ出しそうだし、さっさと放り出そう。
こうして、クリーチャーに変身するという予想外の形で黒蝶は壊滅した。
いや、まだボスが生きてるから壊滅ではないか?
あれを生きてるカウントして良いのか知らんけど。
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