上 下
69 / 172
第四章 迷宮都市ラビリントス

第66話 進化5

しおりを挟む

 
 妲己が進化して、1ヶ月。
 流石に犬畜生の顔も見飽きてきた頃。
 俺にとって、待望の瞬間が訪れようとしていた。

 「多分、この群れを仕留めたら器がMAXまで貯まる。もしかしたら、急に意識失ったりするかもしれないから、そうなったらグレースが指揮をとって俺が目覚めるまで待機で」

 「かしこまりました」

 さーて、やるぞやるぞー!!



 《進化が完了しました。二つの魂を確認。片方の魂には既に異能がある為、もう一つの魂に異能を付与します》

 《上位存在※※※※の介入を確認。異能が取り消されました》

 《上位存在※※※※の介入を確認。進化特典の魔物能力が取り消されました》

 《上位存在※※※※の介入を確認。魔物能力が選択式になります》



 案の定気を失ってたな。
 光に包まれた感は無かったから、特殊進化じゃないと思うんだけど。
 あくびをしながら頭の下にある柔らかい感触を堪能する。

 「お目覚めですか?」

 「お目覚めだけど、もう少しこのままで。まだこの感触を堪能したい」

 「夜になればいつでもお楽しみ頂けますが?」

 「それはそれ。これはこれ」

 寝てる間に膝枕されてるってのは、世の男性からすると中々のイベントだと思うんだよね。
 こう、なんて言うか良いものなんだよ。

 「私は構いませんが、せめて影の中に入りませんか? 戦い終わってすぐに気を失ってしまわれたので、森の中の地面です」

 「それもそうだな」

 俺はそう言いながら、影の中に全員を取り込む。
 妲己とアシュラは寝ていたので、起こさない様に気を付けながら。
 君達、お互いの時は心配してたのに俺の時は寝てるのかね。
 妲己は俺が進化するのを見た事あるけど、アシュラはないだろう。
 なんだか悲しい。

 「アシュラも心配してましたよ。妲己が宥めて寝かしつけたんです」

 「おかんかよ。妲己のママ味化が加速していってるな」



 『ヴァンパイア・オリジン (子爵)
  名前  レト・ノックス
  【異能】
  魔眼Lv4   (解析)
      (魔力視)
      (遠見)
      (停止)
  【魔物能力】
  血液魔法
  音魔法
  影支配
  眷属化 (3/10)
  未選択              』

 《上位存在※※※※からメッセージが届いています》

 「ん? は? え?」

 「どうかなさいましたか?」

 「いや…ちょっと待ってくれ」

 【魔眼】で進化後の自分を確認しようとしたけど、訳の分からん事が多過ぎる。
 上位存在※※※※? 名前分かりませんけど?
 自分の事よりメッセージが気になって仕方ない。
 とりあえず見てみるか。


 《やほやほー! 初めましてだね、レト君!僕の名前は※※※※だよー! 分かるかな? まだその段階じゃ分かんないかも? どっちでもいいや! もっと強くなったら分かるかもね! まぁ、僕の名前なんてどうだって良いんだ! 異世界から異物が流れ込んで来たから、君の事はずっと見てたんだよ! 欲望に忠実で実に面白いよね! 僕達の世界に良い影響があるかなと思ってちょこっと介入しちゃった! 君がそのまま好き放題やってくれるともっと面白い事になるかも? ならないかも? まぁ、とにかく君はそのまま僕達の世界を楽しんでくれると良いよ! この調子で頑張ってね! いつか僕達に会える事を楽しみに待ってるよ! じゃあね! ps  レト君は眷属の子が進化する度に、能力を羨ましがってるからね! 今回からは選べる様にしちゃいました! 最初は逐一それっぽい能力を介入して付与してあげようかと思ってたんだけどね! 余りにもあれが欲しい、これが欲しいと要望が多いので! 僕も面倒臭くなっちゃったのさ! まぁ、僕からの応援だと思って有り難く受け取ってくれたまえよ! わははははは!》


 「いや、テンション高いな」

 メッセージを見ても全く訳がわからん。
 上位存在は神って事でいいの?
 僕達の世界とか仰ってますし?
 で、俺はこの世界に蝙蝠として転生してから見られていたと。
 異世界からの異物って言われたし、イレギュラーな事だったのかな?
 目的があって呼び出されたとかじゃなさそう。

 そんで、俺の生き様が面白いと。
 失礼かもしれないけど言わせてほしい。
 正気か? 好き放題殺し回ってるぞ?
 それがどんな良い影響を与えると?
 確かに、殺したのは盗賊が圧倒的に多いけど、多分それは今だけだぞ?
 力を手に入れたら、もっと一般人にも手を出すと思う。
 とにかく一回は大きい戦争してみたいし。
 
 この上位存在とやらはそれを推奨してるのか?
 もしや、邪神的な存在だったり?

 「グレース。この世界に、テムテン様とアイシュ様以外に神様って居るのか? それか敵対してる邪教徒とか」

 「いえ、聞いた事はないですね。辺境に行くと土着信仰もありますが、あくまでも御二方を尊重した上での事ですので」

 本家本元の所に所属してたグレースでも知らないなら本当に二柱だけなのか。
 それかかなり隠蔽されてるか。
 うーん、分からん。
 まぁ、殺すなって言われてないし良いか。
 この調子で頑張れって言われてるしな。

 んで、最後におまけの様に書かれてた能力についてだな。
 この未選択ってのがそうだと思うんだが。
 妲己の能力を羨ましがったり、心の中でこんなのが欲しいななんて思ったりしたからだろうか。
 なんか駄々こねたみたいで恥ずかしいんだが。
 選ばせてくれるなら喜んで選ぶけどね!!

 進化自体はまぁ予想通りって感じだな。
 順調に男爵から子爵になってる。
 【魔眼】は停止ってのが増えてるな。
 後で使い心地を確かめてみよう。

 後は【影魔法】が支配になってる。
 強化された感じなのかな。
 これも後で要チェック。

 今回1番安心したのは、眷属枠が増えた事だな。
 5人のままだったら、これから眷属にする相手を相当厳選しなければならなかった。
 この後も進化して枠が増えていくなら、偶にフィーリングで選んだりしても面白そうだ。

 未選択はちょっと後回しだ。
 チラッと見たけど、能力がズラーっと書いてあり、とてもじゃないけど直ぐには決められない。

 今考えたいのは、上位存在についてだ。
 グレースも気になってるのか、チラチラとこっちを見てるし、話を共有しよう。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

未冠の大器のやり直し

Jaja
青春
 中学2年の時に受けた死球のせいで、左手の繊細な感覚がなくなってしまった、主人公。  三振を奪った時のゾクゾクする様な征服感が好きで野球をやっていただけに、未練を残しつつも野球を辞めてダラダラと過ごし30代も後半になった頃に交通事故で死んでしまう。  そして死後の世界で出会ったのは…  これは将来を期待されながらも、怪我で選手生命を絶たれてしまった男のやり直し野球道。  ※この作品はカクヨム様にも更新しています。

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

処理中です...