サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第四章 迷宮都市ラビリントス

第55話 知識の共有

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 迷宮都市ラビリントスに向かい始めてから、約半年が経過した。
 道中はなるべく飛ばずに人気の無い道や森を歩いて移動し、グレースに体術の基礎を教えてもらいながら自力アップに努めた。
 その甲斐あって、俺とアシュラは歩き方が綺麗になったし、体の効率的な動かし方も分かってきた。
 朝から夕方まで歩き、夜は軽く模擬戦をする。
 そんな生活を半年近くも続けると、多少なりともレベルアップするってもんよ。

 「後1週間もしないうちに、ラビリントスに到着しそうです」

 「最初は長いと思ってたけど、やる事やってたらあっという間だったな」

 「ギャギャ!」

 アシュラは結局痩せなかった。
 やっぱり種族的にお腹が出てるのがデフォルトなんだよ。
 グレースも仕方ないと諦めた様で時折お腹をぷにぷに触って楽しんでいる。

 「キュン!」

 妲己は体術の練習が出来ない代わりに、【雷魔法】の習熟に気合いを入れてたからか、魔法の腕はかなりのものになってる。
 俺も体術だけでなく、魔法の練習もしていたけど下手したら妲己に負けてるかもしれない。
 これからは魔法ももっと練習しないとな。

 「はい、ではレト様からどうぞ」

 「あー風呂入りてーな」

 道中は街や村に寄ることがなかったので、清潔感を保つには、グレースの【水魔法】に頼るしかなかった。
 水球を大きく作ってもらい、その中に入るとグレースが魔法を操作してぐるぐると体を綺麗にしてくれる。
 洗濯機の中に入ってる感じ。
 でもやはり、日本人の記憶がある身としてはお風呂に入りたい。
 湯船にゆっくり浸かりたいんだよね。
 まあ旅してるのに、わがままは言えないけどいつか解決したい問題である。

 「さあ、妲己も。しっかりと洗いますよ」

 「キュン…」

 どうやら妲己は体を洗われるのが苦手の様である。
 でも綺麗なもふもふを維持する為にも、これは受け入れてもらいたい。
 今日も渋々といった感じで水球の中に入ると、ギュッと目を瞑ってされるがままになっている。
 いや、水球から顔は出てるんだけどな。
 海は平気だったくせに、何故これはダメなのか。
 まあ、ビビってる妲己はプリティなので良いんだけど。

 「ぷはー。じゃあ今日もいつも通り今からは自由時間ね」

 俺は煙草を吸いつつ、影の中の机に向かう。
 夜は模擬戦が終わった後は自由時間にしてて、各々やりたい事をやっている。

 俺は紙に覚えてる限りの役に立ちそうな地球で培った知識を書いている。
 いつか使う事があるかもしれないし、科学知識なんかは絶対これから役に立つからね。
 でも、流石にずっと覚えていられるか自信がないので、時間がある時に書き記している。

 グレースはそんな俺が書いてる知識を勉強している。
 脈絡もなく、俺が分かりやすいように書き殴ってるだけだが面白いらしい。
 何故か読んでるだけで【火魔法】のスキルレベルが上がったしな。
 成長に繋がるならいいかとそのまま放置している。
 商売に繋がりそうな知識も書いてあるからか、そっち方面にも興味を持ってるらしいけど、今の所日の目を見る事はなさそう。
 異世界転生者の義務であるリバーシとかな。
 作ってお金儲けしても良いけど、奪った方が早いし。
 商売に手を出すぐらいなら、その時間を強くなる為の事に費やしたい。
 商売向けの眷属とか手に入らないかな。
 今の所グレースはまだまともだけど、戦う事しか出来ない奴しかいないし。
 グレースもちょっと脳筋気味だしさ。指導は分かりやすいんだけど。

 「科学とはやはり凄いですね。こんな考え方があったとは。レト様の居た地球とこの世界では技術レベルが違いすぎます」

 「その代わり魔法とかスキルなんて無かったけどな。魔物もいないし。常に魔物の危険に晒されながら、文明レベルを上げるのは中々きついだろ」

 グレースや眷属達には、一応俺が異世界転生者って事は伝えてある。
 妲己やアシュラに理解出来てるかはわからんが。
 別に俺が異世界転生者を隠す気もないし。

 「科学にも良し悪しがあるしな。今グレースが見てる火薬とか特に。使い方を覚えれば、子供でも簡単に人を殺せる。使う人間次第だな」

 「この世界ではすぐに軍事利用されそうですね」

 「向こうの世界ではボタン一つで国を消せるレベルの兵器とかもあったからな。この世界でも科学が発展したらそうなるだろうよ」

 人間だもの。
 発展したら絶対にそうなる。

 「あはっ。良い事思いついた。発展してきたら、その度に国を滅ぼせば良いじゃんね。文明レベルを上げないように調整すれば、危険な兵器なんて生まれない平和な世界になるんじゃない?」

 「それは本末転倒ではないですか? 危険な兵器が生まれないかもしれませんが、結局レト様が国を滅ぼすのには変わりありませんし」

 それはそう。
 ただ国を滅ぼす理由が欲しかっただけ。

 「俺は良いんだよ。自分が面白おかしく生きていければいいだけだし」

 「まあレト様の好きにされればよろしいかと。私もこの命が尽きるまではお供します」

 有り難い事言ってくれるのは嬉しいんだけどね。
 こういう雰囲気になると目がドロっとしてくるんだよね。
 もう慣れてきたから良いんだけど。

 「キュンキュン!」

 「ギャ!」

 妲己とアシュラは適当に木で作ったボードゲームをやっている。
 今回はリバーシかな。
 ルールを理解してからは、自由時間にずっとやってるんだよね。
 そして意外にも戦績は互角。
 アシュラなんて馬鹿そうな顔してるのに。
 アシュラが強いのか妲己が弱いのか。
 見た感じハイレベルだから俺は混ざらない。
 負けそうな雰囲気がプンプンしてやがる。

 「さてと。今日はこの辺にしてそろそろ寝るかな」

 「かしこまりました」

 「妲己とアシュラもほどほどにしとけよー」

 「キュン」   「ギャギャ」

 うーん。ふかふかのベッドたまらんな。
 あの家具屋には感謝しかないね。
 こんな良質のベッドを無料で提供してくれたんだから。
 
 「失礼します」

 当たり前の様に俺のベッドに入ってくるグレース。
 仕方ないよね。男だもの。
 こんな美人と一緒に居て手を出さない方がおかしいと思うんだ。
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