56 / 172
第四章 迷宮都市ラビリントス
第53話 超越者
しおりを挟む「ギャ、ギャ、ギャフシュ!」
「キュンキュン!」
アシュラはお腹いっぱいになって満足したのか、影の中に入るとすぐに眠りについた。
妲己に詰められながら寝るとは中々図太い奴である。
しかし、相手にされないのが気に入らないのか、妲己は寝てるアシュラの鼻に自分の尻尾でこしょこしょやり、くしゃみをさせていた。
それでもまだ寝続けているが、くしゃみが面白かったのか、それで満足したようだ。
「よし。じゃあ、頼むよ、グレース」
「お任せ下さい。まずは基礎からいきましょう」
俺は、本格的に武術を習う事にした。
武器を持つ事は今の所考えてないので、体術を習いつつステゴロを極めようと思っている。
カッコいいロマン武器でも手に入れたらまた考えるけど。
「人型だし、アシュラにも習わせたかったな。寝てる所を起こす程でもないけど」
「魔物が武術を習うなんて考えたくないですね。ただでさえ、肉体性能は魔物の方が断然良いのですから。超越者達はまた別ですが」
「超越者? 初めて聞くな」
「人類の枠組みを超越してる人間種の事ですね。レト様にステータスについて教えてもらったので、今なら分かりますが、多分ある一定のレベルを超えると肉体性能がかなり上がるんですよ。今までとは比にならないレベルで」
ほほー。
そんな人間が居るのか。
グレースが大分上澄みの人間だと思ってたけど、更に上はいるもんなんだな。
「グレースは違うのか? 大国の騎士団長だろ?」
「私も超越者になる事を期待されてはいましたが違いますね。一度手合わせをしてもらった事はありますが、相手にならなかったです」
「うへぇ。どんだけ強いんだよ。グレースでも魔法使わないときつかったのに」
「聞いた所によると、種族そのものが進化するみたいですね。寿命も大幅に伸びるとか」
あー、ヒューマンがハイ・ヒューマンになる的な?
勘弁しておくれよ。
俺は強者を求める戦鬪狂じゃないんだよ。
出来るだけ楽して勝ちたいんだから。
「グレースは眷属になって、種族が変わったけど変化はないの?」
「肉体性能が若干上がったくらいですかね? あ、後、偶に血が飲みたくなります」
「やっぱりレベルか。とりあえず100を目安に上げてみようか。ダンジョンに篭ってたら上がるだろ」
「そうですね。レト様の眷属に恥じないように精進します」
一瞬、グレースの目がドロッとしたのを見ないフリをして血を渡す。
偶にヤンデレの波動を感じるんだよね。
俺絡みになると圧を感じる事がある。
「それで、その超越者は何人ぐらい居るのかな?」
「私が知る限りでは、シュルペニアには5人はいましたね。1人は第一騎士団の団長で、残りは教皇直属の人でした。大国であれば何人か囲ってると思われます。後、S級冒険者ですね。多分S級になるのは超越者じゃないといけないのかと。数では、冒険者に超越者が一番多いと思いますよ。せっかく強くなったのに、国に縛られるのは嫌なんでしょうね。冒険者は自己責任ですが、自由ですから」
それって、結構数が居るって事じゃないですかね。
人類は弱いと思ってたけど、上澄みはやっぱり別格か。
「それで魔王に勝てないって、やばくない? 本で読んだけど、昔、フェニックスに挑んで惨敗した国があるんだよね?」
「はい。かなり昔ですが。シュルペニアにあった文献では、50人以上の超越者が戦いに参加したそうですが、生き残りは皆無だったそうです」
化け物じゃん。
俺がその立場なら瞬殺される自信があるぞ?
グレースよりも倍以上強い人間が50人以上だぞ?
ちょっと考えたくないね。
「ちょっと人間に対する考えを改めないといけないかな。もっと強くならないと、調子に乗れないじゃんね」
「そうですね。今のレト様なら、超越者以外に負けるとは思えませんが、油断はするべきではないかと。今向かってるラビリントスにもS級冒険者が何人か居た筈ですので」
ちょっと。
そういうのはもっと早めに言ってくれる?
途端に行きたくなくなってきちゃったよ。
どっかに隠れてこそこそ強くならない?
人間相手に消極的になるのは業腹だけど、負けるのはもっと嫌だし。
「迷宮都市には、もう少しゆっくり向かおうか。ちょっとでも自力を上げていきたい。それか、もっと小さい街にダンジョンはないのかね?」
図書館で見た限り、ダンジョンがあるのは大国ばっかりだったけど。
地図は無かったんだよね。
周辺国ぐらいの知識しかないんだよ。
やっぱりこの時代ぐらいだと地図は戦略物資になるのかね。
「ないですね。もし小国にダンジョンが発生したりすると、すぐに大国が戦争を吹っかけます。ダンジョンは資源の宝庫なので。どれだけ国にダンジョンがあるかも重要なのですよ」
野蛮な世界だな、くそったれ。
小国はたまったもんじゃないだろうな。
自国にいつ爆弾が生えてくるかわからないんだし。
大国は嬉しいだろうけど小国はダンジョン発生イコール死だもんね。
さすが人間欲深い。
欲深さなら俺も負けてないけど。
例によって、ダンジョンは何故発生するのかはわかっていないらしい。
神の試練とか言われてるらしい。
ラノベあるあるじゃんね。
世界の魔力の循環装置とかさ。
あながち間違ってないんじゃないかと思うけど。
「ギャギャ」
「キュン」
おお。
アシュラが妲己の腹を枕にして寝てる。
こいつ図太すぎるだろ。
今日が初日だぜ?
妲己も仕方ないなぁみたいな感じで尻尾を布団代わりにしてあげてる。
優しすぎるだろ。可愛すぎるだろ。ママかよ。
聖母妲己。
ちょっと付ける名前間違いましたかね。
名前のせいで脳が解釈違いになる。
0
お気に入りに追加
254
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【R-18】吸血鬼の家庭教師~年下貴族に溺愛求婚されています【挿絵付】
臣桜
恋愛
魔族や様々な種族が入り乱れるエイダ王国で、人間のクレハは浮いた存在だった。一般母子家庭に育ち、沢山勉強をしていい職に就き母を楽させるのが夢だ。ある日クレハは喧嘩の現場を見てしまい、背後から襲われ昏倒した赤髪の青年を助ける。青年は高位魔族――吸血鬼の貴族だった。ノアと名乗る青年と一時は別れたものの、再び出会ったクレハは彼にどうしようもなく惹かれてゆく。
※表紙はニジジャーニーで生成しました。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~
すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。
若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。
魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。
人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で
出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。
その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。
三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河
墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。
三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。
全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。
本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。
おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。
本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。
戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。
歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。
※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。
※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる