サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

文字の大きさ
上 下
53 / 172
第三章 人間の街

第50話 リブラの様子

しおりを挟む

 
 「くあーっ」

 擬似スタンピードをリブラの街にけしかけた翌日。
 やはり、かなり疲れていたのか半日も眠ってしまった。

 「おはようございます」

 「キュンキュン!」

 「ああ、おはよう。寝てないのか?」

 「眷属にして頂いてから、眠らなくても良くなったみたいで」

 「いや、寝た方がいいぞ? 俺も寝る必要ないけど、睡眠取ったらかなりスッキリするし」

 今現在、思考はかなりクリアである。
 ただ寝る時の服が欲しいなと思った。
 仕立ててもらったスーツはかなり良い物だけど、寝るには不向きだった。
 当たり前か。

 「では、私も少し仮眠を取らせて頂きます」

 「うん。俺は妲己と遊んどく」

 グレースは恐縮そうに、ベッドへ向かう。
 それ、さっき俺が使ってたベッドなんだけど?
 ほんとに恐縮してる?
 家具屋からパクって来たから、他にもベッドはいっぱいあるじゃん。

 「まあ、いいか」

 下手に突っ込んで、またドロドロの目になったら困る。
 君子危うきに近寄らず。これ大事よ。

 グレースがベッドに入ったのを見て、影から飛び出す。
 グラスに血を注ぎ、煙草を吸う。
 優雅なモーニングタイムである。

 「うーん、ハードボイルド」

 ハードボイルドのなんたるかは良く分かってないけどな。
 雰囲気で良いんだよ。

 「キュンキュン!」

 妲己はさっきから【雷魔法】の練習をしてる。
 昨日簡単に雷の仕組みを教えてあげたけど、果たして理解出来ているのか。
 見た感じ扱いはかなり難しそうだ。

 「どう? 難しい?」

 「キュン…キュンキュン!」

 妲己は成果を見せる様に雷を身に纏う。
 毛が逆立ちになり、体がバチバチになってる。
 ……痛くないんだろうか?
 ビジュアルはかなりカッコいいんだけど。
 これでもかってぐらい強キャラ感は出てる。

 「んんん? いやいや脳筋すぎるだろ」

 【魔眼】で魔力を良く見てみると、【雷魔法】と【回復魔法】を併用して使ってる。
 体を傷付けては回復を繰り返してるみたい。
 まだ体に被害を出さずに身に纏うのは難しいのかな。

 「キュンキュン!」

 「体で無理矢理覚える? だめだめ! いつからそんな脳筋思考になったんだ」

 少しずつ慣れていきなさい。
 纏うのは確かにとてもカッコいいけども。
 雷を放電したり、なんかもっと、こう、あるだろう?

 「キュン…」

 「ほら、おいで。逆立った毛をブラッシングしてあげる」

 しょんぼりしてる妲己をブラッシングする。
 うーん、もふ具合がアップしたからか気持ち良いね。

 よく考えたら、海の魔物相手に無双出来そうだよな。
 どこ行くにしても、海に寄って血の補給してから行こうか。




 「おはようございます」

 「うい」

 5時間ぐらいかな?
 グレースが起きてきた。
 俺はその間に妲己の御機嫌取りをしたり、今回のスタンピードで大量に増えたオークの処理をしていた。
 血抜きして、妲己が食べられる様にしただけだけど。
 商会から色んな調味料をパクってきたから、是非妲己には新たな食を開拓してほしい。

 「レト様。結局どうなさいますか?」

 「とりあえず服だな」

 俺の寝る時の服とグレースの服。
 街の混乱具合も気になるし、一度行ってみようとと思う。
 グレースと妲己は影にいてもらうが。

 「服ですか? 私はこれでも構いませんが」

 「いや、ぼろぼろじゃん」

 俺と戦った後の姿そのままだから、至る所に穴が開いたりしてる。
 控えめに言ってえっちである。
 俺の聖剣がエクスカリバーしてしまう前に新たな服を用意せねば。

 「もう、どんな服にするか決めてるんだ」

 メイド服と迷ったけどね。
 まだ俺には、メイドを侍らせる勇気が無かった。
 ここが異世界って分かってるし、俺のスーツの方が浮いてるのは承知なんだけどね。
 なんか恥ずかしい。
 メイド服はもう少しこの世界に馴染むまで待って欲しい。

 「そうですか。では、楽しみにさせていただきますね」

 「じゃあ、早速向かうかな」

 俺は妲己とグレースに影に入ってもらい、空を飛んだ。




 上から見た限り、リブラの街はてんやわんやしていた。
 そういえば赤髪の男捜索網が敷かれてたけど、大丈夫かな?
 グレース以外の騎士団は殺したし、なんとかなるか。
 俺は何食わぬ顔で、詰所にいる衛兵に話しかける。


 「騎士団の人が探してるって聞いて来たんだけど」

 「ん? ああ、君か。見つけたら丁重にお連れする様にと言われてたんだけどね。ちょっとそれどころじゃなくなって…」

 「昨日の魔物騒動で何かあったの?」

 「いや、うーん…。ここだけの話にして欲しいんだけどね。騎士団と冒険者が全滅してしまって…。こちらもシュルペニア神聖王国に連絡したりと色々あるんだよ」

 「なんと!? あの神聖騎士団が? じゃあ俺なんかに構ってる暇はないね。もう少しこの街に居るから何かあったら声をかけてよ」

 「ああ。すまないな」


 ふむ。俺の事は大丈夫そうだな。
 かなり忙しそうにしてるし、スタンピードのせいで神聖騎士団が全滅なんてシュルペニアがなんて言うかね。
 領主とか胃が何個あっても足らなそう。
 ま、俺には関係ないし服屋に向かうかね。



 「また来てしまったよ、店主」

 「いらっしゃいませ」

 相変わらずイケおじの店主とスタンピードの世間話をしながら新しく欲しい服の注文をする。

 「この服が想像以上に良くてな。妻にもプレゼントしようかと思って、また来させてもらったんだ」

 「それはそれは。有り難い限りですな」

 「うむ。それで、こんな服を作って欲しいんだが。勿論金に糸目はつけない」

 「ふむ。お客様にお作りした物に似てますな。お売り頂いたフォレスト・スパイダーの糸はまだ残っておりますし、すぐ製作に掛からせてもらいます」

 「ああ。頼む。1週間ぐらいか?」

 「いえ、今回は3日ぐらいで出来るかと。前回は初めてだったので、多めに時間を頂いただけですので」

 「わかった。3日後にまた来よう」

 俺は、寝巻きになりそうな服を自分の分とグレースの分を2.3着購入し、オーダーメイドの服の分の料金も前払いし、店を後にした。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河

墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。 三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。 全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。 本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。 おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。 本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。 戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。 歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。 ※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。 ※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

処理中です...