サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第三章 人間の街

第48話 初眷属

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 門前のオーク以外の魔物や人間をそのまま放置して、俺と妖狐はさっさとその場を後にした。
 俺達が向かったのは、街から徒歩で三日ぐらいの森の中。
 俺が飛んだら、1時間もかからない。

 適当に気を伐採して切り株にして腰掛け、影から女騎士を出す。
 まだ目を覚ましてなかったので、影で木に縛り付け一息つく。

 「うーん、途中で飽きたけど最初は楽しめたな。良い経験にもなったし」

 煙草を吸いつつ、血を飲む。
 仕事終わりの一服一杯、最高です。

 「こいつ生きてるよな? いつまで寝てんだよ」

 息はしてるから生きてるはずなんだけど。
 【音魔法】の調整ミスったかな。

 「キュン!」

 「ん? おお? おおおお!」

 妖狐が進化した。
 結構魔物殺したもんな。
 俺は主に人間相手だったから、そんなに経験値は増えてない。

 「またちょっと大きくなったな。尻尾も増えてるし」

 「キュンキュン!」

 全長は3mぐらいか?
 尻尾のもふもふ具合が素晴らしいな。


 『四尾妖狐
  名前  無し
  【魔物能力】
  超念力
  火炎魔法
  回復魔法
  雷魔法     』


 え、ずるい。
 【火魔法】が【火炎魔法】に進化して、新しく【雷魔法】を覚えてる。

 「いいないいな! 【雷魔法】ってかっこいいじゃんね! 羨ましい!」

 「キュンキュンキュン」

 妖狐は新しい体を確かめる様に走ってみたり、跳ねてみたりと、かなりテンションが上がってる。

 「ふふっ。地球人たる俺に任せておけ! 雷の現象からラノベ知識で得たかっこいい【雷魔法】の使い方をレクチャーしてやる!」

 「キュンキューン!」

 む? そういえば今回も名前は無しだったな。
 俺が付けても良いのかな。

 「妖狐、今回も名付けがなかったみたいだから、名前を付けようと思うんだけど…よろしいか?」

 なんか言葉遣いがおかしくなったな。
 名付けなんてした事ないから緊張してるのかもしれん。

 「キュンキュン!」

 妖狐はそれはもう目を輝かせて、名前を待ってる。
 そこまで期待されると更に緊張するといいますか。

 「えーっと、じゃあ、今日からお前の名前は妲己だっきだ!」

 「キュン!」

 『四尾妖狐 (眷属)
  名前  妲己
  【魔物能力】
  超念力
  火炎魔法
  回復魔法
  雷魔法    』


 我ながら妖狐に相応しい名前を付けたんじゃないかと思う。
 妲己が狐だったとかそんな話があった気がするんだよね。

 「で、見逃せない事があったんだが」

 おかしいな。
 なぜか、妲己に名前を付けた瞬間、眷属になったんだが。
 話が違うじゃないか。
 俺の血を飲ませたらって話じゃなかったっけ?
 名付けもなの?
 安易に名前付けられなくなっちゃったじゃん。

 「妲己、眷属になっちゃったけど良かった?」

 「キュンキュン!」

 喜んでるっぽいし良いか。
 眷属になったからといって、特に何も変わらん。
 なんかパスみたいなのが繋がってる気がするけどそれだけ。
 それをどうこうするやり方が今の所分からない。

 「うん。俺のステータスにも眷属の所が(1/5)になってるな」

 おや? もう女騎士用済みでは?
 眷属にする為に、生け捕りにしたけど確認出来ちゃったしな。

 「うーん、眷属にした後に殺して、眷属枠がどうなるかの確認をしてもいいけど…。これで枠が変わらなかったりしたら損だしなぁ」

 まぁ、眷属にするか。美人だし。
 美人を侍らしてると良い気分になるしね。

 「って、あっつ!」

 俺が、煙草を咥えるといつもの様に火を付けようとした妖狐が誤爆した。
 【火炎魔法】になって出力がアップしてるからね。
 調整には気を付けてほしいな。
 俺のリアクションが面白かったのか、妖狐が笑ってる様な気がするけど。
 進化して小悪魔ちゃんになったのかな?
 可愛いから良いんだけど。


 「ん…ぅん?」

 あ、女騎士が目を覚ました。
 お寝坊さんなんだから。

 「こ、これは…!?」

 「おはよう」

 「キュン」

 「き、貴様は! くっ! これを離せ!」

 離す訳ないじゃんね。
 何の為の拘束だよ。

 「気分はどう?」

 「最悪だ! 一体なんのつもりだ!」

 眷属にするつもりです。
 まあ、馬鹿正直に言う必要もないだろう。

 「まあまあ。とりあえずこれ飲んで落ち着けよ」

 俺は至って自然なムーブでグラスに入れた俺の血を渡す。

 「なんだ、この禍々しい液体は! 飲む訳ないだろう!」

 えっ…。
 そんな禍々しい?
 普通の血なんだけど。ショックなんだけど?
 トマトジュースと勘違いしてくれよ。

 「もう! 聞き分けのない子ですね! はい、あーん」

 「くっ、殺せ!!」

 「あはっ! ありがとうございます!!」

 「は?」

 お前完璧かよ!!
 完璧な女騎士だよ!
 もう名誉女騎士の称号をあげたいね!
 変なものを見る目で見られてるけど気にしない。
 異世界のお約束を回収出来たからね!

 「とりあえず飲んでみろって。話はそれからだ」

 「や、やめ! ぐっ!」

 俺はテンションMAXになりながらも無理矢理血を飲ませる。
 前世でこんな事してたらお縄間違い無しだね。
 まあ、殺人を犯してるから今更だけど。

 「がっ…がぁぁああああーーっ!」

 お、おおう?
 無理矢理血を飲ませたら、急に体が痙攣し出して叫び始めた。
 かなり暴れてるみたいだけど、大丈夫ですかねぇ。

 ブチブチブチ。バキッバキッ。

 だ、大丈夫じゃないかもね。
 体が作り替えられる様に、筋肉が千切れる音や骨が折れる音が聞こえる。
 すっごいホラーな現象を見せられている。
 ごめんね、名誉女騎士。
 君の犠牲は忘れない。
 手を合わせてごめんなさいをし、成り行きを見守る。
 妲己で試さなくて良かったと心の底から安堵しました。

 10分程同じ現象が続き、ようやくグロテスクな音も鳴り止む。

 「これは…」

 叫び声を上げていた女騎士は、自分の体に驚きつつ俺の顔を見る。
 え? 何その顔?
 滅茶苦茶うっとりしてるんだけど?

 「レト様…」

 「あ、はい」

 やめて、なんか怖い。
 血を飲むまでのキリッとした女騎士っぷりはどうしたよ。

 「レト様。グレース・ミュラーで御座います」

 「えっと、レト・ノックスです、はい。き、気分は如何ですかな?」

 ちょっとやめて!
 本当に怖い!
 喋り方がおかしくなっても仕方ないと思うんだ。
 目が、もう、なんかドロドロしてる。
 極まったヤンデレみたいになってんだよ。

 「レト様のお力のお陰で生まれ変わった気分で御座います。今までの私の人生はなんだったのか。本当に感謝しております」

 「あ、そ、そう。ちょっと普通にしてもらえる? 特にその目。ダメなやつだよ」

 「かしこまりました」

 女騎士改め、グレースはスッと目を閉じると次の瞬間には、さっきまでと同じキリッとした感じになっていた。

 「俺はその状態のグレースを眷属にしたんだからな! これからもその調子で頼むぞ! 口調も! 女騎士っぽい感じで頼む」

 あんな、狂信者みたいな感じで接してこられたら俺の気が持たない。
 よし! なんとかなったな!
 じゃあ、これからどうするか考えようか。


 
  
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